第82話 悪い知らせと戦いの準備

急な知らせには、

あまり良い思い出がありません。

皆様いかがお過ごしでしょうか?

アルドです。


中央国のメインダンジョンの町、『メダリア』 (※メダルシステムの町だから)と、俺が命名した町の仮の領主屋敷と言う名前の公民館で寛いでいると、


急にミレディからの念話が届き、

「シーちゃんにリバー様から連絡が入って、急いでダーリン達と合流するように言われたデス。

丁度80階層だから転移して戻りマス。」


と連絡が入る、「何のこっちゃ?」

と思いながらも、


「了解気を付けてね。」


と返事をしておいた…


明日はここから馬車で1日ちょっとの場所にある、

今は滅ぼされた帝国との国境を守る砦なのだが、魔王軍に帝国の帝都が落とされたので、魔王軍との防衛ラインになっている俺の領地の砦、


この地方の前任者は帝国と凄く仲が良く、魔王が帝都に進行した際に全軍をあげて助っ人に出て、

当主は勿論、息子まで戦死してしまい、

御家断絶となり、

後任の貴族も決まらず長年王家の直轄領だったものを賜った。


そんな、面倒臭い砦の様子を見に行き、カイン国王陛下から「通称 アルド伯爵の砦」の守りに借り受けている騎士団に挨拶する予定なのだが…


どうしよう。


緊急事態みたいだから、合流を先にしょうか?


などと考えていたら屋敷の玄関をノックする音が聞こえる。


バトラーが玄関口に向かい


「どちら様でしょうか?」


とたずねると、


「お届け物に参りましたニャァ!」


と、アイツの声がした。


俺はバトラーに無言で頷くと、


「どうぞ、お入り下さい。」


と、扉を開けると、凄い勢いで飛び込んできたヤツは、ねじりハチマキに手紙箱と真っ赤な腹掛けに「緊急」と書かれた、

クロネコの飛脚便 (完全版)が俺の前まで来て、


「これを見てくださいニャ。」


と、例のガラス細工のオハジキの〈神託〉を渡してきた。


俺は言われるがまま〈神託〉に魔力を流す…


すると、


屋敷内の皆が注目するなか、掌のオハジキから光がこぼれだしやがて光の柱となる

明るい光が優しく室内を照らし、


「マイスだ。


アルド君、すまん!先に謝らせてくれ。

お前さんの〈主神が呪いにかかっているのでは?〉と言っておったこと、


もしかしたら、あり得るかもしれん…

正確な事が解れば何とか出来るかもしれないが…


いや、それどころではないのだ、


主神の奴は、ワシ等とアルド君が一緒に〈何か企んでいるのが気に入らないから、今回は警告だよ〉と言って、


ダザールに、


〈お前の野望を邪魔する使徒を、人間の国の 果ての村 に送ったぞ〉


と挑発する神託を送ったのだ…」


馬鹿、ばか、バカ!!

何してくれてるの?

果ての村 の皆が危ない!

今後の俺もヤバい!


クソ主神が、ダンジョン攻略が完了しそうだから嫌がらせを加速させたか?…


今度は女性の声で、


「学神 メリスです。

あなた達には苦労ばかりを掛けてしまい申し訳ございません。


魔王軍が、果ての村を目指して進軍したと私の眷属から知らせがありました。


使役されている大型魔物が200と小型魔物が2000


魔族の騎士団が300の総勢2500の部隊です。


進軍速度は遅いので直ぐ行けば、避難も可能です。


急いで下さい。」


と、焦った声で話していた。


最後にリバー様の声で


「援軍のシロちゃんも果ての村に向かっている。


本当に巻き込んでスマン!

頑張ってくれとしか言えない自分が恥ずかしい…

アルド君…武運を祈る。」


と…


〈有り難うございます。リバー様…


でも、武運どころか、運は無い側の人間なのよね…俺…〉


光が消えるオハジキを見つめる俺達をよそに、


「マイス様からのお手紙ニャ」


と、クロネコが手紙を渡してきた。


「マイス様から、指輪のレシピだから全部終わってからあけるニャとの伝言ですニャァ。


では、頑張るのニャよぉ」


と、言い残し ポン と消えた。


俺は、シルフィーちゃんに砦と、この街の事を任せ


後の皆で大地の女神号に乗り込むように指示をだした。


シルフィーちゃんが涙を流しながら


「アナタ、行ってらっしゃいまし。」


と抱きつきキスをされた。


戦地に向かう婚約者に送る愛のたっぷり詰まった悲しいキスを…


キスの後、見つめ合い少し照れたシルフィーちゃんが、


「皆に見られちゃったね。」


と舌を出した。


俺は、あまりの可愛さにもう一度抱き締めて、


「行ってきます。

留守は任せますが、

もしかしたら村の皆もこちらまで避難してもらうかもしれないから、その時はお願い。」


と言ってメダリアをグリフ君の空飛ぶ馬車に乗り、


念話で各所に事態を伝えながら


急いで、故郷の 果ての村 を目指した。



グリフ君がほぼ休み無しで飛び続けてくれたので、馬車でキャンプをしながら1ヶ月はかかる道のりを5日程で飛び切ってくれ、


果ての村の避難が開始された。


第一陣で村の子供とお母さんが大地の女神号に乗ってもらいステラちゃんが引率者でブライトネル辺境伯領の領都アサダに行って、受け入れをステラちゃんからトネルお兄さまにお願いしてもらう。


カラの馬車でグリフに帰ってきてもらい第二陣を運ぶのを繰り返してもらう。


避難を始めて三日目

シロちゃんとゴーレムチームが合流し、シルバーさんの愛妻号もブライトネル辺境伯領までの避難便を請け負ってくれたので数日で村人の避難がほぼ完了した。


シルフィー商会アサダ支部のジャックさんと、ブライトネル辺境伯様の依頼でキャラバン隊が空の馬車で到着して、ドドルじいちゃんが作ってくれた、魔鉱鉄の檻30個にランドコッコを入れてキャラバン隊に預けた。入りきらない分は山に返し、ターニャパパとターニャママがランドコッコと共に馬車に乗る。


ジェイムスさんとマリーさん夫婦が、「残って戦う」と言ったが、

「おじさんとおばさんのブルーベリージャムが食べられなくなるのは絶対いやだ!」とファルグランさんを呼んでブルーベリーの木を土ごと樽に植え替え馬車に乗せ、

マリーさんとジェイムスさんはグリフの馬車に乗ってもらう。


ジェイムスさんが、


「また、死に損ねたか…」


と言ってたので、訳を聞いたら、


ジェイムスさんは帝国の近衛騎士団長さんで、マリーさんは第6皇女だったそうだ。


知らなかった。


村の大人は知ってたらしいが…。


俺は、「ジェイムスさんには姫を守る仕事があるでしょ?


魔王軍を蹴散らすのは僕に任せて!」


と送り出した。


フリューゲル村長やロルフ先生もドドルじいちゃんまでが、最後まで、「一緒に戦う」と村を離れなかったが、「果ての村が大事ではなくて、果ての村の皆が大事なの!

皆を守ってメダリアまで避難して!!」


と説得して最終便でブライトネル辺境伯領まで避難してもらた。


一度アサダの町に避難し、

そこからは、キャラバン隊を編成し直し約一ヶ月の長旅をしてメダリアに向かってもらう手筈に成っている。


護衛と、引っ越し荷物輸送担当で、女性陣チームもキャラバン隊に同行してもらった。


女性陣皆のアイテムボックスが、こんなところで役に立つとは…


パパさんは、俺を心配して風呂桶一杯ぐらいの量のポーション類を作り、

ほぼ気絶状態で避難したし、


ママさんは、村の奥様方と、半年は籠城出来そうな量の料理を作ってくれた。


〈食事が必要なの俺だけだから軽く数年分程有りそうだな…〉


アイテムボックスのリストが、

「焼いたの」

「炊いたの」

「煮たの」

と正式名称の無い各家庭のお袋の味が並んでいる。


誰も居なくなり静かになった村の中をうろつき、


「魔王軍に目を付けられたから、こんなに立派な壁が有っても、もう、住めないのかぁ


勿体ないな…」


と壁の上から村を眺めていた俺は、


〈そうだ、勿体ないなから使っちゃおう!〉


と、閃き俺はアイテムボックスから、


『ジャイアントゴーレムハート』と「MP」カードを束で取り出し作業に取りかかる。


まずは、メダル1600枚の「ジャイアントゴーレムハート (スーパーレア) レベル 200」


に、魔力を籠める。

途中で気絶しそうになれば「MP」カードをカジって回復するのを三回繰り返して何とか満たせた物を村長邸と教会と公民館が入った村の砦と融合させた。


「ゴゴゴゴゴゴっ」と地鳴りがして村の砦が立ち上がる


鑑定すると、


『フォートゴーレム レベル 200』


固有スキル

「念話」「共有」「再生」「演算」「鷹の目」


空きスキルスロット 12


と結果が出た。


〈空きスロットが12もあるな…ありがたい…付与しがいがあるよ。〉


と、喜びながらも俺は、同じ手順であと4つの、


『ジャイアントゴーレムハート (アンコモン) レベル150』


も起動させていく。


入口の城門部分のゴーレムと、


バリスタが並ぶ森側の城壁のゴーレム…


あえて魔族領側の北東の壁はそのまま残し、


南西側の見張り台つきの城壁のゴーレム、


そして、最後に入口にミスリル製の格子門を取り付けた「ウォール何か」をゴーレムに変えた。


『ランパートゴーレム レベル120』

固有スキル

「鉄壁」「頑強」「再生」


空きスキルスロット 8


四体の巨人を従えた一体の大巨人が俺にひざまづき、


「我等一同、アルド様の壁となりお守りすることを誓います。」


と念話で語ってきた。


「よろしく。」


と挨拶をしたが、名前が無いのは不便だ…。



俺はスキル付与の前に名付けを行う事にした。


さて、何にしようかな?…



そんな事をしながら待つこと半月、


偵察のピピンちゃんの報告では、


実際あと数日で、15 対 2500 の戦争をやらなければならない計算らしい…


もしも村を放棄して逃げたとしても、子供の使いではない〈軍隊〉だ…世界の半分以上を手に入れて、主神を追い落とし、成り代わるための戦争を仕掛けているのだから、


ついでとばかりにブライトネル辺境伯領に攻めいるだろう。


面倒臭いが、この村できっちり負けて帰ってもらうしかない。


ぶっちゃけ、ダザール君を世界が主神と崇めれば戦争もなく、アホ小物クソ主神が代替わりしてザマァなのだが、


ダザール君も既に無茶苦茶してるから穏便には無理だよね。


〈はぁ~、準備頑張ろう。〉



さて、城ゴーレムチームにスキルを付与も完了したのだが、


有り難いことに、キッド君が頑張って妖精の里のメインダンジョンからスキルと「MP」カードを狩りまくってくれたから出来ることが増えた。


「熱光線」「冷凍光線」「範囲拡大」「拡散」などという良い感じのスキルなどを見つけた、それに「音魔法」が沢山

入っていた。

良いアイデアが閃いた俺は、

城ゴーレムチームのリーダーから付与をはじめた。


『フォートゴーレム レベル 150』


〈名前 カーン〉


とあるトレーディングカードゲーム好きなら、ゴーレムで〈カーン〉と言えば銀のゴーレムから名前をもらったかと思うだろうが、残念、〈公民館〉からもらいました。


固有スキル


「念話 レベルMAX」

「共有」

「再生」

「演算」

「鷹の目 レベルMAX」


スキル


「自然修復」

「魔力自然回復」

「魔力吸収」

「必中」

「追尾」

「拡散」

「熱光線」

「冷凍光線」

「魔法耐性」

「頑強」

「土魔法 レベルMAX」

「音魔法 レベル4」


カーンの内部の一部屋を魔石でパンパンにして、エネルギータンクとして使い魔力切れを防いだら、


〈指令 カーン 〉の完成である。



続いて、両手に強化魔鉱鉄の扉を装着した防御特化の


『ランパートゴーレム レベル120』


〈名前 ゲート〉


固有スキル


「鉄壁」

「頑強」

「再生」


スキル


「自然修復」

「魔力自然回復」

「魔力吸収」

「物理耐性」

「マジックバリア」

「盾 レベルMAX」

「音魔法 レベル2」

「水魔法 レベルMAX」



バリスタが両肩と両腕に装備された遠距離特化の


『ランパートゴーレム レベル120』


〈名前 バリス〉


固有スキル


「鉄壁」

「頑強」

「再生」


スキル


「自然修復」

「魔力自然回復」

「魔力吸収」

「必中」

「追尾」

「範囲拡大」

「熱光線」

「音魔法 レベル4」



見張りの塔が頭部、とんがり帽子の魔法特化の


『ランパートゴーレム』


〈名前 キャスター〉


固有スキル


「鉄壁」

「頑強」

「再生」


スキル


「自然修復」

「魔力自然回復」

「範囲拡大」

「土魔法 レベルMAX」

「火魔法 レベルMAX」

「水魔法 レベルMAX」

「風魔法 レベルMAX」

「音魔法 レベル4」


見張りの塔の内部に魔石を詰め込んだ部屋をエネルギータンクとして使用した。


〈時間が有ればデカい杖とか作ってやりたかったな…〉


そして最後は、

ウォール何か の化身、ウチの実家の防御の要のゴーレム


『ランパートゴーレム レベル120』


〈名前 ナニカ〉


固有スキル


「鉄壁」

「頑強」

「再生」


スキル


「自然修復」

「魔力自然回復」

「魔力吸収」

「体術 レベルMAX」

「跳躍 レベルMAX」

「スカイウォーク」

「土魔法 レベルMAX」

「音魔法 レベルMAX」


右手の甲にミスリル格子の落としとびらを装備した格闘も出来るゴーレム…しかも空中も走れる。


これらのスキル付与して完成とした。



封入のバリスタの矢と封入の矢も大量に作り、ゴーレム達と手分けして魔法を込めた、


最後に特大の誘爆印を刻んだ魔石を作り


準備が終了した。


翌日、何もなく過ぎる平和な1日かと思ったが、ピピンちゃんの念話が入った。


「ご主人、敵が目視出来る距離に現れたよ、


敵は今夜、村から半日の所でキャンプするみたいだよ。」


報告を受けた俺は気合いを入れ直し、


「有り難うピピンちゃん、一度戻ってきて、作戦会議するよ。」


と伝えた。


〈鍛治仕事する余裕が有れば、ピピンちゃん達に音魔法を付与したいが…時間が無かった…ごめんね…〉



そして、一時間後ピピンちゃんが戻り、作戦会議が始まった。


「えー、今から作戦会議を始めますが、作戦は簡単です。


既にナニカさんとキャスターさんには数日前から森に潜んでもらっています。


こちらは今からグッスリお休み中の敵キャンプを蹴散らしに行こうと思います。」


頷くゴーレム達に配置を指示していく



「まず武装シルバーさんにミレディが騎乗し空から魔法で〈敵の魔物集団〉と〈魔族騎士団〉の分断を狙って下さい。」


と指示すると、


「主よ任せてください」とシルバーが答え、「了解、敵の分断デスね。」とミレディが任せてくれとばかりに握りこぶしをみせた。



「グリフ君にキッド君が騎乗弓にて封入の矢で小型魔物を減らして下さい。」


とお願いすると、


コクリと頷くグリフ君と、「小型の殲滅ですね。頑張ります!」とキッド君が気合いをいれる。



「テディちゃんとバトラーはバリスさんのバリスタの矢の装填をお願いします。特にバトラーには封入のバリスタの矢の管理も頼みます。」


と伝えると、


テディちゃんがピッとてを挙げて答え、「お任せ下さい、御主人様。」と頭をさげるバトラー、



「ファルさんはドランと合体して、俺とキバさんを乗せて敵の後ろに回り込み陣取って欲しい」


というと、


「心得た!」とファルさんが答える、

キバさんは「後ろに回って何するの?」ときくので、


「ピピンちゃんに敵のエラそーな奴を探してもらって、俺がキバさんにどこにエラそーな奴がいるか教えるから、キバさんは影にもぐって麻痺らして連れてきて欲しい。」


と言い俺はピピンちゃんとキバさんを個別で俺の念話に登録した。


「了解だよぉ」と答えるキバさんに、〈了解したよ。〉と念話で答えるピピンちゃん…


さて、城ゴーレムチームですが、


「遠方のナニカさんは俺の外線と、キャスターさんはカーンさんの外線で、

ゲートさんとバリスさんは、カーンさんの内線経由で念話で指示を出すから、


ゲートさんはバリスさんとカーンさんの防御担当で、」


と、指示すると、


「了解です」と答えるゲートさん。


「バリスさんは大型魔物を中心に数を削ってください。」


というと、


「お任せを。」と力強く答えるバリスさん…


そして、念話で既に森の奥に潜伏…というか建っている〈見張り台〉と、〈円形の壁〉の二人に


〈キャスターさんとナニカさんは例の作戦で魔物が左右に広がるのを阻止して下さい。〉


と、お願いすると、


「応!」と気合い十分なナニカさんと、

「頑張る。」静かに闘志を燃やすキャスターさんから念話が届いた。


「最後にカーンさんは中心に固められた敵…特にピピンちゃんからの報告に有った大型の魔物をお願いします。」


と、指示すると、


「了解しました。」とカーンさんも答えてくれて作戦開始になる。



たとえ大軍勢と言えど、ほとんど〈魔物〉…


魔物さえ消えたら何とかなるし、


可能ならば魔族は殺したくないが、ウチの皆にはもっと死んで欲しくないから、ヤバそうなら魔族も殲滅も考えておこう…


〈ひん剥いて魔族の国に連行が理想だけど、無理かなぁ?〉


等と考えていたら、


皆から〈準備完了〉の報告が入った。



〈では、いくぞぉぉぉぉぉ!!〉

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