第93話 第1回全体会議

街を眺めながら、


〈色々な建物が増えたなぁ…〉


と、散歩をしながら実家を目指し、


〈ナニカ〉さんに、「警備お疲れ。」とだけ挨拶して実家の玄関に到着した。


「ただいま、アルドです。」


と声をかけると、パパさんがニコニコしながら小声で、


「上手いタイミングだったね。アルルがお昼寝中だから静かだよ。」


と、俺を招き入れてくれた。


果ての村の時より頑丈で、少し大きくなった我が家の食卓に案内されて着席したが、


〈妹がお昼寝の時しかユックリ話せないとは…悲しい。〉


と、少し凹む俺に、


パパさんはお茶をいれながら、


「ママも、もうすぐ帰ってくるから」


と言ったので、


「どこにお出かけしてるの?」


と、聞いてみた。


「ターニャちゃんのお家に、ランド・ウ・コッコの新しい小屋を立てる手伝いだよ。」


と、教えてくれた。


「夫婦二人で飼育小屋を増やして大変じゃないの?」


と聞いたら、パパさんは、


「嫁取り伯爵もお隣の幼なじみのハートは射抜けなかったらしいな」


と笑った。


〈なんのことやら?〉


考えてもピンとこないので、


「なに?」


と俺が聞くと、


「ターニャちゃんがお婿さん候補を連れて帰って来るらしいんだよ。


それで、ターニャパパが張り切っちゃって、


ランド・ウ・コッコの雛が沢山孵ったから、小屋を増やすぞぉ


ってなったんだ。」


と…なるほど…理解しました。


パパさんも、俺を手当たり次第に女性に手をだす種馬ボーイと思ってるのね…


…悲しい…


俺は、ガクリと肩を落として、


「パパさんが、どう思ってるのか解ったところで、大事な話が有って来たのですが、ママさんが帰って来てからにします。」


とだけ告げてお茶を飲んだ、


パパさんは、


「あれ?何か悪いこと言ったかな?


もしかして?ターニャちゃんのことショックだったごめん、アルド」


と、トンチンカンな謝罪をされた。


俺は、尚も死んだ魚の様な目で、


「いえいえ、父上。

私は、実の父親に女性なら全員に求婚をする種馬だと思われていたと知り、

現在ショックを受けております。」


と言ってみた。


ふてくされ茶を啜る俺に、


「ごめん、ごめんってアルドぉ」


と、パパさんが謝っている最中にママさんが一仕事終えて帰って来た。


「あら、アルドお帰り、鳴き声が聞こえないからアルルはお昼寝ね。」


と玄関横の倉庫に斧とロープを降ろしママさんもテーブルに着いた。


「パパがなに悪いことしたの?」


と聞くママさんに


「いやね、アルドにターニャちゃんの事言ったら拗ねてしまって…」


とはぐらかすパパさん…


しかし、ママさんは、


「嘘おっしゃい!どうせ嫁取り伯爵とか言って怒らせてたんでしょ?!


本当にパパはあの劇を見てから感動するのは良いけど、題名だけならただの悪口だから、内容が良くても本人をそう呼ぶのは駄目よね。」


と…


〈解ってらっしゃる!…ママさん大好き。〉


しかし、


「見に行ったんだね。パパさん」


と俺が聞くと、


「アルドの事が何故か嫌いなアルルに、

アルドの事を好きになって貰おうと、

メダリアの街に劇団が来た時に、アルルを連れて見に行ったんだが…


あの主人公がお兄ちゃんだよと教えたら、アルルが勘違いしたのか、劇団の役者さんに懐いてしまってね。


なんでだろ?」


と、パパさんが不思議がる…


〈あれ?パパさんこんなポンコツ臭がしたっけ?〉


と、首を傾げる俺に、


はぁーっとため息をついたママさんが、


「パパが、あのお話の題材がお兄ちゃんと説明するべきところを、


あれがお兄ちゃんというから…ややこしく成ってるんでしょ!」


とお怒りです。


〈駄目だこりゃ〉と、呆れながらも、


「まぁ、まぁ、本日はお二人にお話が有りまして…」


と俺が切り出す。


すると、ママさんが、


「いよいよなの?」


と聞いてくる。


〈なにが?〉と思う俺に、


パパさんも、


「えっ、嘘だよね?」


とそわそわしだす。


〈なによ?〉と少し不安に思う俺に


ママさんは、


「そろそろとは思ってたのよ…おめでとう。」


と言ってくれた。


さすがはママさん俺がそろそろ〈お役目〉を達成すると気が付いていたのだろう…


「人生でそんなに無いことだから緊張するかもしれないけど、シルフィーさんが支えてくれるから。」


とママに言われ納得した。


「そうだね、神様になたけど、僕は僕だし、シルフィーちゃんもいるから大丈夫だよね。」


と俺が言ったとたんに、


「えぇぇぇぇえぇぇぇぇぇっ?!!」


と騒ぐ二人


なんだよ急に?!


「アルド、さん…神様になったの?」


とパパさん…


〈なんだ、予想してたのママさんだけなの?

もう、鈍感だなぁパパさんは。〉


と、少し呆れながら、


「そうだよ」


と答えた俺に


「い、いつから?」


とママさんが聞く、


なになに、お役目の完了の予想出来てたのに…ママさんまで…


と少しガッカリしながら、


「先日、全部のメインダンジョンを踏破してダンジョンを所有するグランドマスターになったら自動的にスキルに不老不死やら神格やらもらって…


つい、神様に成ってしまいました。」


と発表したが、

大体予想してたらしいママさんは別にしてパパさんはアゴが外れそうなほど驚いてるし、


ママさんはターニャちゃん家のコッコ小屋を建てて疲れたのかな?…座ったまま寝てる…


〈ってな、訳ないよね。〉


えっ!?


ママさんが気を失ってる!


だ、誰か助けて下さい、ママさんが、ママさんが!


いきなり意識不明に!


きっと何かしらの急性ナンチャラ症とかだよ!!


そうだ、フルポーションだ!


ママさん飲んで、早く飲み込んで!!


と騒いだ結果ママさんが目を覚まし、


「神様?」


と俺を呼んだ…


「えっ、ママさんは、俺が、〈お役目〉を終わらせる頃って予想してたんじゃないの?」


と聞けば、


「うん、ママは結婚式がもうすぐと予想してたの…。」



と答えるママさん


〈…なん…だと。〉


どうも、俺は飛んだ勘違いで、心臓によろしくない形で『神ングアウト』をかましてしまったらしい。



ごめんねママさん…。




そんな事が有った数日後…


さて、もう魔王軍に素性がバレ、

劇の題材にもされているので、

何も隠す必要が無くなったので、フルパワーでゴリ押して行こうと思います。


という事に成り、我が家のホールを使い、


〈女性陣チーム〉

〈全ゴーレムチーム〉

〈使用人組〉

〈ダンジョンマスター・サブマスターチーム〉

〈城ゴーレムチームは念話でリモート参加〉

それプラス、〈念話で連絡がつく人〉による、


「大集合!ファミリー全体会議。」


が開かれております。


ホールに椅子とモニターが並び、30人以上の知恵が集まり、


三人寄れば文殊の知恵らしいから、十倍頼もしいはずである。


『議題の1つ目は、これから行う作戦について、一番面倒な情報のやり取りについて、念話網では時間が掛かるので、ダンジョン間通信のようにモニターに相手が写せたり、一度に多くの人に知らせる方法はないか?』


である。


「えー、皆さんの知恵を借りたいのですが、俺の行動を一回一回報告しなくても、このダンジョン間通信の様に、同時に複数に知らせる方法を考えて欲しい。」


とお願いする俺、


皆が「う~ん?」と考えるなか、発言第一号は意外な人物だった。


「発言して良いかのぅ」


と、フンドシ教の教祖様が手を挙げる


「では、カノンさんどうぞ」


と指名すると、モニター越しにカノンさんは、


「各地に、〈千里眼〉スキルの保持者を配置して〈記憶の水晶〉で見せてはどうじゃ?」


と意見をだしてくれた。


「おぉ、いいねぇ。


マウカルさん、〈千里眼〉と〈記憶の水晶〉ってメダル何枚?」


と俺が質問すると、


「〈千里眼〉メダル一万枚と〈記憶の水晶〉メダル1500枚です。」


とマウカルさんから報告があがる。


「う~ん、いい感じだが、〈千里眼〉が凄いスキル過ぎて高い


何が低コストで映像が送りたいのだけど」


悩む俺に


「では、こんなのはどうですか?」


と意見をだしてくれたのは


ダンジョン図書館の司書ディアマンテさん


「〈共有〉スキルに〈念話〉を合わせれば、視覚情報も飛ばせますわ。」


と教えてくれた。


〈おぉ、電話からテレビ電話になるのか!〉


ついでにディアマンテさんは、


「あと、〈拡散〉を使えば複数に長距離念話が飛ばせて同時にスキル保持者を介して会話が可能で、


スキル〈範囲拡大〉を使えば短距離念話の範囲が倍近くになりますわ。」


と説明してくれた。


「おぉ、凄いなウルトラレアゴーレムハートのゴーレムに〈念話〉と〈拡散〉と〈範囲拡大〉を付与すればコストもおさえられるし、何より自由度が増す。」


と、興奮する俺…


〈イケるかもしれない〉


などと喜んでいると、


「アルド様、発言宜しいでしょうか?」


とファルさんが何か閃いたみたいだ。


「はい、ファルさんどうぞ、」


と、俺がファルさんを指名すると、


「はい、念話の指定先に〈記憶の水晶〉組み込んだゴーレムを配置して、〈念話〉と〈拡散〉で念話網を広げる事が出来て、〈範囲拡大〉で〈記憶の水晶〉の映像を拡大できます。」


と、博識のスキル検索してくれたみたいだ。


確か念話スキルは1・3・5・7・11と連絡先が増えたから最大27名の登録ができる。

最初の1枠は親機ゴーレムとの相互通話にしても26機づつ〈記憶の水晶〉を内蔵した子機…〈テレビゴーレム〉が作れる。

その子機・孫機と広げれば、「マスコミ王に俺はなる!」も可能になるな。


〈えぇやん、えぇやん!〉


よし試して見よう。


「ミレディ、右手の小指の指輪貸して。」


とお願いしたら


「返してくれるのデスか?」


と疑ってくる。


「パワーアップして返してやるから。」


と説得して、渋々かしてもらった。


城ゴーレムの時のキッド君のお土産スキルカードに「拡散」が何枚か有ったので、指輪に付与しながら、


「キッド君、この〈拡散〉のスキルカードってもっと取って来れる?」


と聞くと、


「可能です、ご主人様。

〈拡散〉は妖精の里のメインダンジョンの〈激臭カメムシ〉という魔物のスキルで、因みに、〈範囲拡大〉も同時に手に入ります。」


と教えてくれたが…


〈なに、その嫌な能力の魔物は、〉


色々察した俺が、


「大変だったろ?」


と聞けば、


「はい、シロ様とキバが丸二日行動不能になりました。」


と報告を受けた。


〈チラリ〉と、シロちゃんをみたら、眉間にシワを寄せているし、キバさんは鼻を前足で隠している。


〈完全なトラウマ案件だった。〉


とりあえず完成した指輪をミレディに渡して拡散長距離念話を使ってもらった。


「ガヤガヤ」と色んな知り合いの声がする


「あーあー、皆さん落ち着いて下さい。


念話の実験です。一度に遠方の方々との通話実験ですのでご協力ください。


えーっと、新たに会議に参加していただいたのは、


ウチのパパさん

中央国前国王のジーク様

ブライトネル辺境伯のトネルお兄様

世界樹の国の議長イグニスお兄様

レトリバー合衆国大統領ラルド様

リザードマンの国王ダイト様


以上六名です。」


と俺が告げるが、キョトンとしている者がいる。


「あぁ、ごめんね、念話の登録外の人はなんのことやらだよね。


今度念話網を整理するので今回は我慢して欲しいです。」


では、本題


俺は、遠距離念話同士で会話を試す。


「えー、イグニスお兄様

お久しぶりです。」


と俺が声をかけると、


「しゃべっていいの?


アルド君お久しぶり、何か手伝うことある?」


と気に掛けてくれる


「色々ありますが、まずは通話実験をお手伝いしていただきたいです。」


「了解」


と返事をもらったので、


「パパさん」


と呼び掛ける俺に、


「えっえぇ?パパかい。


何をしたらいいの?」


と言ってきたので、


「ご挨拶お願いします。


イグニスお兄様、こちらウチの父です。


で、パパさん、こちらシルフィーちゃんのお兄様のイグニス様です。」


と紹介したら「息子が…」とか「妹が…」などと親族顔合わせをしていた。


〈よし、〉と実験の手応えを感じた俺は、


「これで実験は成功だね


パパさんはもう大丈夫なんだけど、伝言頼めますか?」


とパパさんに聞くと、


「うん、こんな偉い方々との会議はパパには荷が重いからお使いに向かうよ。」


と言ってくれた。


「フリューゲル様とジェイムスさんに

三日後のお昼を一緒に食べましょう。

トンプソンさんとマリーおばさんも一緒にどうぞと伝えてください。」


とお願いし、パパさんは、


「では、皆様失礼します。」


と念話から降りた。


〈チャット機能だなこれ。〉


と感心しながら、


「では、遠方の皆さんにお願いしたいのは、


以前設置をお願いした〈大地の女神像〉の精霊結晶の装飾品をアルドニアまで送って欲しいです。」


と俺がいうと、みな快く引き受けてくれた。


するとシルフィーちゃんが、


「発言宜しいですか?」


と聞いてきたので、


「はい、シルフィーさん」


と指名すると、


「皆様の国に〈ゴーレムハート〉〈念話のスキルカード〉〈記憶の水晶〉あとは余っているミスリル・アダマンタイト・オリハルコンが御座いましたら、シルフィー商会が買い上げますので、一緒にお送り願えませんでしょうか?


あと国の猛者を半年契約でメダリアでメダル集めに協力をお願い出来ないでしょうか?メダル以外はその方の物で、メダルのみシルフィー商会に、半年納めていただければ月に大金貨一枚をお支払します。」


と宣言した。


これにも皆快く了解してくるた。

中でも、ラドル様と、ダイト様が、メダル狩り部隊を送ると興奮していた。


俺は、ウレロさんに、


「ウレロさんメインダンジョン以外のサブダンジョンでもメダルシステム導入できる?」


と聞けば、


「店はすぐには出せませんがメダルシステムだけならすぐ導入できます。」


と答えてくれた。


すると


「はーい」


と、タマちゃんが手を上げたので、


「では、タマさん!」


と指名すると、


「ウチのダンジョンもお客さん多いし、メダルシステム導入したらメダル集まるんじゃない?


使える店が無いけど、商会で買い取り窓口を置けば皆がメダルを売るででしょ…


商会さんはメダルが集まるし、冒険者はお金が手に入る。


それで、メダルの色をかえたらメダリアで使われた分のウチのメダル分のダンジョンポイントは、後でウチのダンジョンポイントをメダリアに支払う方式で。


どう…駄目かな?」


とアイデアが出た。


俺は、


「駄目じゃないグッドアイデアだよ!


でもいきなり全部のダンジョンでやるのは怖いから、〈メダリア〉と〈レトリバー〉の二国でスタートして様子を見よう。」


と言ったら、


「よし、ダンジョンをテコ入れするぞ、罠を捨ててやる。」


とやる気のタマちゃん…


後でウィリアムさんに罠の保存用に〈記録〉のスキルをプレゼントしよう…


ラドルさんが、


「使徒様、確認なのだが、


レトリバーの全てのダンジョンでメダルが出るのだな?」


と聞くと、


直接タマちゃんが、


「そだよ」


と答える


ラドルさんは続けて、


「では、メダル一枚の価格は?」


と聞く、


これにはウレロさんが、


「小銀貨1枚です。」


と答える。


〈1000円かぁ…まぁ、そんなものか、〉


と、納得していると、


ラドルさんは


「なら私もメダル集めに参加出来そうです。」


とご満悦

なぜかダイト様が悔しそうだが、プラウドダンジョンは、全部終わってからだ…



よし、念話網の見直しと、

テレビゴーレム作戦の開始だな。


と、当面の目標がたったので、


「では、第1回ファミリー全体会議を終わります。


では、皆さん作戦の開始をお願いします!」


と閉会の宣言で締めくくった。




…やることいっぱいだぞ。

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