第92話 明かされる真実

ダンジョン最下層で、

妖精族の長さんと、ティターニアさんにオベロンさんと会議をしています。



妖精族の長 ハッグさんは少し小さいだけで、普通のオッサンでした。


ハッグさんに、妖精族について教えて貰いました。


妖精族の特徴は、外部の魔力を使用でき、魔力の濃い場所では元気になり、溢れる魔力で体に羽や翼が具現化したり、硬い鱗が現れたりと変化が見られる者もあり、子供の時期が異様に長く大変長寿にもなるが、成長しきっても身長はあまり高く成らないらしい。


感情や魔力の共有能力があり、一致団結すれば全員の魔力を一人が行使し

神のごとき大魔法も放てるミスティル最古の種族


ただ、魔力の薄い場所では体内魔力のみの使用で活動し、寿命も一般的な人族並み、むしろ元気が出ない分人族並み以下…しかし何代も過ぎるうちに魔力の薄い地域に馴れ妖精族らしさを無くした代わりに周りの魔力に左右されなくなった個体が


「人族」であると、


〈つまり、人族の原種が妖精族〉



地母神様が育んだこの大地に更なる繁栄を望んだ地母神様の父神様が、


異界の男神を二柱この地に招き、


『神力を使わずに人々を導き、千年後に多くの民を従えた方を娘の婿とする。』


となったらしい…


〈なんちゅうお見合い形式だよ…〉


パパ神の結婚観がヤバいな、


いや、神様はそれが普通なのか?


ところが、千年の間に現主神は法と秩序を旗印に人族の国を作り、王として民を従えたのだが、


もう一方の名前を奪われた男神は、妖精族の仲間となり、元は力と技で一人で戦う軍神だったのだが、協力と団結を旗印に魔力に溢れる都を建設した。



主神はこの勝負に勝つことを第一に行動したが、

名を奪われた男神は、ただ、妖精族が未来永劫繁栄出来るようにと、定められた時間のすべてを注いでくれた。


ハッグさんはここまで話して、一度お茶を含み心を落ち着けてから、


「そんな男神に心奪われた娘がいた…


我が姉メディカだ…」


と寂しそうに語った…


〈えっ、メディカって、治癒神さまの? 〉


俺は、驚き、


「失礼ですが、ハッグさんは何歳です?」


と素朴な疑問に、


ハッグさんは、


「ダンジョン最深部なんて地脈…つまりエネルギーの塊だよ。

その中から魔力を妖精は吸収も出来る…無尽蔵に力を与えまくられるから、私の年など数えるのをとうに止めているよ。


初めに避難してきた三百人も相当年だし、ココで生まれた子供達も軽く数千歳だろうし、


むしろ魔力が濃すぎて子供が成長しないくらいかな…


私の息子のパパスも五千歳は超えてると思うよ。」


と笑っていた。


〈2つ謎が解けた


パパス君は、自分の事を「パパ」と呼ぶ


そして、数千年で一番の幸せが1枚のクッキー…


また泣きそうだ…〉



ハッグさんが、また悲しそうな目をして上を見上げ話してくれた。


「姉は男神に恋をした。

淡く一方的だったかもしれないが、千年の歳月は自分の気持ちに気付き、確信するのに十分過ぎる時間だっただろう。


男神も、地母神との見合いに来たのを忘れたように、妖精の都を作り我々の繁栄のために尽力してくれた。


男神も、寄り添い共に歩む姉に少しづつ心を許していった。


そして、千年の時が経ち、

審判の時だが、魔力の溜まりにしか住めない種族とそれ以外どこでも住める種族どちらが多いかなどスライムでも解る…


軍配は主神に上がるが、


男神の行動を知った現在の主神はこの世界の主神になった初仕事で男神を元の世界に戻す筈なのに、


〈私に負けるのが怖いから、まともに勝負せずに、神聖な戦いに泥を塗った〉


と、男神を全く違う異界に封印してしまったのだ…」


と…


〈ゴメン、マイス様達、俺は主神は呪われてクソなのかと思いましたが、ナチュラルクソかも知れません…。〉


そして、その後は、


主神は地母神と神力を合わせ、


ハイエルフが纏めるエルフ族


技術こそが正義のドワーフ族


力の強いリザードマンを王とするリザードマン族


聖獣を慕う獣人族


を新たに創造されたり、他の世界より招いたりして、


もともと、ミスティルに居た、2種族…


財力が力となる人族


魔力に愛される妖精族


を合わせて、


この6種族が世界に散らばり、


星が繁栄し始め、溢れた力が地脈を流れ大地を裂こうとしたのを地母神様が楔になるダンジョンを打ち込み管理者として自らの力だけで魔族をつくったのち神界に向かったそうだ…


〈なるほど、ダンジョンは溢れすぎたパワーを吸出したり、土地と土地を繋ぐ役目もあるんだね…


ダンジョンを壊したら大陸大移動でも始まるのかな…地球みたいに…〉


などと考えていたが、


話しは雲行きが怪しく成ってきた。


ハッグさん達の話しでは、


母神様のパパ神様から派遣された〈マイス様〉と〈ラウド様〉の二柱を副神に、力と技術と法にて世界が動き出し、


そして百年ほどたったある日、


主神は、増えた各種族にスキルを与える為に、副神が二人では足りないと、各種族の長を副神として神界に召しあげると通達をしてきたらしい。


ハッグさんは、


「 有無を言わせず、男神の居なくなった国を守っていた我が姉も連れて行かれたのだが、


その時姉は既に壊れてしまっていたのかも知れない…


主神の行いに怒り、主神を呪わんばかりだった姉は、謀反を起こしてもおかしくない程だった…


しかし、


後日、神界より届いた神託の宝珠からは、無機質な口調の姉の声が流れた…」


と、悲しそうに語っていた。


「千年連れ添い愛した男神を元の世界に還されるのも心を引き裂かれる思いなのに、自分達のため頑張ってくれた愛する者を異世界に封印されたのだ…


しかも、名指しでその敵の元に行かなければならない

姉はまともな精神では、居られなかっただろう…」


と涙を流すハッグさんに、


俺は、かける言葉すら持ち合わせて無かった…


そして、ハッグさんは涙を堪えて続ける、


「一連の流れを知る母神様は、


〈私が居る間は、メディカさんにも妖精族にも手出しさせないから安心して下さい。〉


と約束していただき、姉は神界で母神様の薬師として母神様の庇護のもと自分を偽りながら副神として過ごしていたのだが、


母神様は名前を奪われ地に落とされた…


力を失いながらもそのすべてを使い、メインダンジョンの補佐用のサブダンジョンや管理者の魔族を生み出し眠りについた母神様の使いが我々の国に来て、


『何一つ、助けれなかった…

皆も妖精の都を捨てて私のダンジョンに隠れ住んで欲しい。

私はもう、メディカさんを止める事も、メディカさんを守る事も出来なく成りました…ごめんなさい。


長く辛い生活になるかもしれませんが、このままでは、何かの時に主神の怒りが妖精族に及ぶかもしれません…


それ程までに彼女を追い込んだのは我等神々です…許してくれなどど、厚かましい事は言えません…


ただ、生きてほしい…私の最初の子供たちよ。』


との手紙を渡されてからの地下生活です。」


とハッグさんが語ってくれた。


〈あまり接点は無かったけど、メディカ様は、主神に敵意が有るのに、それを勘づかれないまま何千年も天界にいるのか…


ただ、ヤバいお薬を一服盛る神様では無かったのは解ったが…勇者天野君の事を心配してたし…悪い人では無さそうだけど…〉


などと考えて居ても答えは見つからない…


〈まずは、俺が出来る事をまずやろう!〉


と決めた俺は、


「さっき言ってたティターニアさん達が俺達の仲間に成ってくれる為の〈条件〉ってなに?」


と聞くと、


ティターニアさんは


「私たちの願いは母神の最後の願い…

〈妖精族の保護〉です。」


と真剣な表情で訴える…


俺が、


「最後のって…?

もうすぐ復活させるよ…


その為にここに来たんだ。


…まぁ、クソ主神からの〈ダンジョン踏破〉の約束だけは守らないと、何されるか解らないからもあるけどね…」


というと、


〈ハッ〉とするティターニアさんは、


「主神の使徒なのにですか?」


と聞いてくる。


俺が、


「俺が、約束したのは期日迄にダンジョン踏破して、地脈に干渉出来る様に成ることだけだ。


その先は指示されてないし、指示されてもクソ主神だけの指示には従わないよ。


とりあえず、母神様を復活させてから本人達に話し合わせたいのが目標かな?」


と俺が答えると、


「了承しました。アルド様…


いえ、我等がマスター。


グランドマスター アルド様

我等にご指示を!」


と、ティターニアさんとオベロンさんが頭を下げた瞬間


頭の中に電子音声の様な無機質な声が響いた。


『グランドマスターが、承認されました。

世界の全てのダンジョンの権限を、

グランドマスター アルド に移行します。

ダンジョン間通話機能


ダンジョン間転移機能を


ダンジョングランドマスター権限で使用可能になりました。』


と…


〈何か起こったぞ?〉


と慌てながらも


「ダンジョン間会話?って…」


と、ポソリと呟くと、


『了』


と、頭中に響き、


俺の周りにモニターが現れて各メインダンジョンのダンジョンマスターが現れた。


「あっ、数年振りイゴールさんだ!」


イゴールさんに手を振ってみた。


「アルド君…いや、アルド様、念話で先ほど話したでしょ?」


と突っ込むイゴールさん。


〈ちゃんと会話できるんだね。〉


と感心しつつも、


〈えっ!じゃあ、ダンジョン転移ってもしかして…。〉


と気が付き、


〈俺、凄い能力手に入れたかも!〉


と、改めて、〈グランドマスター〉の能力に驚いた…


マウカルさんの長距離転移を羨ましく思い、カタログを調べたらメダル一万枚だったから泣く泣く諦めたが、


ダンジョングランドマスター権限がある俺は、指定したパーティー丸ごとダンジョン間を移動できるらしいのだ!!


その他、グランドマスターの機能として、


〈ダンジョンポイントのピンハネ機能〉

全てのダンジョンの入手ポイントの3%が俺のポイントとなる。


〈グランドマスタールームの指定〉

俺の指定した部屋に全てのダンジョンが監視できるモニターと管理用のダンジョンコアが出てくる。


〈ダンジョンコアでお買い物機能〉

ダンジョンポイントでお買い物が可能になる、品揃えはメダリアのダンジョンとほぼ同じ、


〈ダンジョンマスターに命令権限〉

一応あるが、お願いベースで行きたいと考えている。


そして…〈神格〉…神格!!


パパさん、ママさん、

アルド、人間やめたってよ!


〈予定外でした…神様になるのは予定外でした。〉


不老不死で、ダンジョンの機能を使い地脈のパワーを自在に扱える権限を持つ…らしい…


〈神様だよね…これ…〉


でも、できる事も増えたから深く考えないことにして、ママ神様の復活作戦に移る。


事にする…だって成ってしまったモノは仕方ない…



クッキー配達チームが仕事を終えて楽しく遊びだしたのを確認したキッド君達が合流したので、


ハッグさん達に別れを告げて

メダリアのメインダンジョン最下層に転移してみる事にした。


怖かったのかシロちゃんが手をキュッと握ってきた。


〈流石の神獣シロちゃんも知らないスキルは少し不安なのだろう…〉


そしてミレディは偽物の丘を必要以上に押し付けてきた…対抗心から…


〈風流ではないのでマイナス10ポイント!〉


と、考えているが、


〈わちゃわちゃする暇もなく、転移自体は一瞬だった。〉


目の前にダンジョンショップ本店があり、


ウレロさんが駆け寄り


「ようこそお越し下さいましたグランドマスター」


と、膝を付こうとする。


俺は慌てて、


「いやいや、そう云うの要らないからウレロさん!」


と止めると、


「しかし、神よ…」


と言い出す始末…


「アルドで良いから!」


とピシャリと言っておいた。


〈今後の関係も有るし、


下手にうやうやしくされたら、しんどいからね。〉


俺達はウレロさんに、


「何かあったら連絡します」


と言い残して転移陣で地上に上がる。


メダリアのダンジョンはかなり賑わっており、ダンジョンに入る場合はサインやチェックがあるが、出る時にはサイン帳の自分の名前に横線を入れるだけのザルセキュリティだ。


まぁ、冒険者ギルドの対応なので、俺は口を出さないが、おかげで名前を消す振りだけして、問題なく外に出れた。


屋敷に戻るとシルフィーちゃんに驚かれた。


〈フフフッ、どっきり大成功。〉


今朝、最後メインダンジョンの踏破に向かうコールをしたところだから、それはもうビックリでしょうよ…


旅支度を脱ぐ為に風呂に入り、楽な服装でホールに向かうと家族勢揃いで出迎えてくれ、


「完全踏破おめでとうございます。」


と口々に祝ってくれた。


その後に夕食を取りながら、


「メインダンジョンを完全踏破して、ダンジョングランドマスターになりました。」


と報告したが、女性陣チームも使用人チームも反応が薄い…


俺は少し悔しくなり、


「我が家をダンジョンのマスタールームにもできます。」


と屋敷のホールをグランドマスタールームに指定した。


食堂の壁にモニターが並び、

俺の隣に拳大のダンジョンコアが現れたところで、


メイドのヒラリーさんがパタリとひっくり返った。


ミーチェさんがヒラリーさんに駆け寄り、


シルフィーさんが、


「皆の理解が追い付かないのにポンポンとビックリ新事実を発表しないでよぉ。


ビックリ仕方が解らないがくらいビックリしてるのに!


めっ!!」


と、お叱りを受けた。



俺は順を追ってはなしたが、ダンジョン転移やダンジョン間通信の辺りで皆静かになってしまった。


最後に、


「神様に成りました。」


と言ったらクリステラさんが椅子から崩れ落ちた。


シルフィさんは勿論、ユリアーナさんや、ミーチェさんにもお叱りを受けた。


「ディナーのついでにする内容ではないです!」


との事でしたので、


一旦ホールをマスタールームの指定を外しておいて


〈絶賛お説教中〉です…。


その日はそこで終了となったが、翌日エルザさんが、


「これでアルド様も父上と同じ立場だから結婚の支障がなくなったよね?


神様の娘が神様に嫁ぐから。」


とニコニコしている。


〈じゃあパパにご挨拶がてら、おばあ様の復活をしてしまおうかな?〉などとサラリとキザに決めれるプレイボーイでは無い…


俺は、ぎこちなく


「明日から各地を周り精霊結晶の装飾品の回収と根回しに行くから、其が済んだら一緒に魔王領に行って母神様を復活させよう。」


とだけエルザさんに告げた。


それでも、エルザさんは俺に抱きつき


「嬉しい。」


と一言呟いた。


急な展開にドキドキしている俺に、


盗聴ゴーレム娘の内線機能から


女性陣チームの


「いいなぁ」とか、

「キスをするデスか?!」とか、

「この角度からはよく見えませんわ!」などと聞こえてきた。


女性陣チームは盗聴はおろか、覗き行為に及んでいるとは…


「皆さん何をされているのでしょうか?」


と聞けば、


「抜け駆けをしないかのチェック機能デス」


と、主犯が答える…


「俺は、シルフィーちゃん一途だ。皆の者サラバダ!」


と言い残し屋敷から逃げた。


〈あの後、シルフィーちゃんも参加してドキドキした事を追及でもされたら…たまったモノでは無い。〉


しかし、


とりあえず行くとこ無いからパパさんと、ママさんに、


「神ングアウト」してこようかな…?



驚くんだろうなぁ~。

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