第58話 エルフの国の人々

馬車旅が快適になり遠くに行くのも楽になりましたが、流石に二月の旅はキツかったアルドです。


エルフの王国は自然を愛する方針らしくて、道も土道ででこぼこだし、家も樹木を使った家なのか?家が樹木なのかよく解らない、ほぼ森に見える町並みだった。


ユリアーナさんに案内されて、王城?というか、デカい木に入って行くと、


「止まれ!」


と、兵士のエルフに止められ、


「ドワーフのガキが何用だ!」


と、感じの悪い兵士にユリアーナさんは、


「私の大事な方に無礼な態度は許しません!」


と怒ってくれた。


兵士は一瞬、「だれだ?この女。」みたいな態度だったが、ユリアーナさんの顔をジーっと見た後、片ひざをつき右手を左胸にあてて、


「大変失礼を致しました。お帰りなさいませユリアーナ様!!」


と、言った後、


兵士は大きな声で、


「ユリアーナ様がお戻りに成られました。至急執務室へ誰か向かってくれ!」


奥の兵士が慌てながら、


「はい!」


と、返事をして階段を駆け上がり木の上に登っていく…


入り口の兵士は、


「姫、このドワーフのガキ達は、姫の召し使いか何かでしょうか?」


と、失礼な態度を再度とる。


すると、ユリアーナさんは、顔を真っ赤にして怒り、


「この戯け者が!先ほど私の大事な方と申したであろう!!」


と怒ってくれたが、言われた意味が全く解っていない兵士に、


「もうよい!他の者を呼びなさい。」


とチェンジを要求するユリアーナさんに、


「なぜでございましょう?」


と食い下がる兵士さん…


「聞こえませんか?代われ!と、申しているのです。」


と、ピシャリと言ってさがらせた。


そんなこんなをしていたら、


「姫様ぁー!」


と階段を駆け下りてくる初老のナイスミドルなエルフさんに、ユリアーナさんは、


「爺や!息災でしたか?」


と笑顔で駆け寄る。


ゼェゼェして階段を降りきった「爺や」さんは、


「姫様、私より姫様です。いったいどこに居られたのですか?」


と、ゼェゼェしたままユリアーナさんに質問している。


ユリアーナさんは、


「世界を見て回っていました。」


と答えると、


爺やさんは、目頭を押さえ涙を我慢したあと


「姫様、お父上がお待ちですよ。


お供の者もついて参れ!」


と、ユリアーナをエスコートしながら、ゼェゼェと今度は階段を登り始める爺やさん


〈死ぬぞ!休んで。〉


と思いながら後をついていき、

広間に通される。


広間の奥にはマントを羽織ったイケメンに、

隣にはユリアーナのお姉ちゃん?みたいなお嬢さんに、両端にロン毛のイケメンやイケオジが並ぶ、


〈エルフ…無駄に美形だな…おい…〉


と、感心していると、


「父上、母上、ユリアーナ只今戻りました。」


と挨拶をするユリアーナさをに、


「心配したぞユリアーナ」


と話すユリアーナパパさんと思われるマントに王冠のエルフさん…


〈ってことは、横の方はお姉ちゃんではなく、〉


と、理解した時に、ユリアーナさんに、


「母上にもご心配をかけました。」


と挨拶された〈お姉さん〉…


〈やっぱりお母さんなのね。〉


ユリアーナさんの挨拶を聞いたユリアーナママさんは。


「お帰りなさいユリアーナちゃん、旦那様はこの男の子なの?」


と質問すると、


「はい」と答えるユリアーナさんに、


ざわざわする会場


「なぁ~にぃ~!許さんぞ!!」


キレだすユリアーナパパさん…


〈いやいや、それはメイドさん的な「お帰りなさいませ旦那様」のヤツだから!!〉


と焦るが、発言して良いのか迷う程〈敵意〉満々の視線が四方八方から刺さる…


ユリアーナさんは、


「はぁ~…」とため息をついから、


「変わりませんね…この国も…


アルド様、出発前に国王陛下と先王ジーク様より託された書簡をお願いいたします。」


といわれ、


俺は、ユリアーナさんに書簡を渡す。


ユリアーナさんが書簡を側近さんに渡し、


バケツリレーのようにユリアーナパパさんまで回っていく書簡がようやく目的地に到着し、


書簡を読んだユリアーナパパさんが震えだして


「ふざけるな!この様な事信じられるか!!」


と怒り出す。


会場が、なんだ!なんだ?とざわめきだすと、


ユリアーナさんは、


「父上、私は旅先にて盗賊に旅の仲間を皆殺しにされ、自身も傷つけられ、盗賊に捕らわれておりました。


そこに書いてある通りに、ここに居られるアルド様に命を救われ、

私はアルド様にご恩返しをするためにこのお方に付き従うと決めました。」


と宣言すると、


更に会場はざわめき出す。


すると、みかねた王様の


「静まれ!」


の一言で、水を打ったように静かになる…


「そなたが娘の命の恩人と云うのは理解したがそなたに娘を預ける訳にいかん!」


王の言葉に、


「そうだ、そうだ!」や「ドワーフが!」などと、野次が飛び交う。


「静まれと言っておろう!」


王様は、ため息を吐きながら、


「ワシは、この者がドワーフだから許さないと言っているのではない


素性も実力も判らないヤツには誰であろうと娘を任せる訳がなかろう。」


と王様が言うので、


俺はユリアーナさんの横に立ち、パパさんに習った「エルフ式」の片ひざをつけた座り方になり、両手でナイフを捧げ、


「紹介が遅くなり申し訳御座いません。私、エルフの父 アルフ と、ドワーフの母 ルルド の息子で アルドと申します。

これは、父より預かったナイフにございます。」


と、ナイフを側近が受け取り王の元へもっていく


「確かに、このナイフは私が、我が友アルフに渡したもの」


王さまが俺を見る


「アルドと言ったか、アルフはあの馬鹿者は元気にしておるか?」


と聞くので、〈馬鹿者〉のくだりは一旦我慢しながら俺は、無言で頷く


「私がこの国で暮らせるように手を尽くしておったのに、あやつは、早々にこの国を見限りよった…。


そうか、元気にしておるか…。」


と、王様がこの場にいる全員に告げる。


「この者の素性は良くわかった。


ならば、力を示せ、娘を守れるだけの力を!


アルフの息子アルドよ!

エルフの国のメインダンジョンを見事踏破してみせよ!」


会場は、「国王は無茶を仰る」「出来る訳がない」などと、好き勝手な事を言って笑っている。


俺は、


「畏まりました。


元よりそのつもりです…エルフの国のメインダンジョンをこれより踏破してまいります。」


と言ったとたん会場が静まり、


一人また一人と馬鹿にして笑いだす。


その笑い声を掻き消すほどの声で俺は、


「王よ、姫を預けて行きます。

が、この国の人間の態度にいささか思うところがございます。


が、それも、メインダンジョン踏破後に致しましょう。


では、失礼!」


と、広間を出ていく俺に嘲り声が聞こえ続けた。



〈オレ、このクニ、キライ〉


さっさとメインダンジョンに行こう。


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