第59話 進化する仲間

胸くそが悪い国を出て、清々している…


〈もう、ユリアーナさんを置いて帰っても良いかな?〉


などと一瞬思ってしまう程、終始失礼な国だった…


〈パパさん…こんな国…捨てて正解かもね…〉



そして、そんな感じの悪いエルフの王国の、

〈王都アメリス〉を出て愛妻号で4日の場所にあるエルフの国のメインダンジョンに来ている。


ドワーフの国のメインダンジョンとルール的には同じだが、出てくる敵が違うみたいだ。


一面の森がひろがる1階層から、魔法攻撃に手を焼いている。


…俺だけが…。


「風イタチ レベル50」

「風魔法」「加速」


ゴーレムチームは、このレベル程度の魔法では、ノーダメージだが、俺のお子さますべすべお肌はそうもいかない。


大怪我にはならないが、


〈ちゃんと痛い…〉


だが、スキルカード集めも兼ねて、


濾過スキル


大きさ 1メートル 継続時間 10時間


濾過膜A 指定枠 1 「魔石」

濾過膜B 指定枠 2 「スキル」「MP」

パッケージ あり


を発動し魔物に突撃していく。


気付いた方もいるかも知れないが、以前やった「経験値」を濾しとったカードを試した結果、

「運気」のカード同様に一時的に上乗せする効果しかなかった。


〈レベル爆上がり!俺無双計画〉が白紙になり、このメインダンジョンでは、カード集めと、ゴーレムチームのご褒美おやつと化した「MP」カードを溜め込む予定でいる。


キッド君は索敵


ミレディさんとキバさんは地上班、

ファルさんとシルバーさんが空中班で魔物を追い込んだり、叩き落としたりしてくれるので虫取感覚で倒していける。


目の前の敵が攻撃をしかけたら、

「短距離転移 レベル2」で5メートルほどズレて攻撃をかわして濾過ポイで倒すのを繰り返す。


もう、経験の指輪が、レベル200を超えた俺には使えないので、地道に寝る前に 反復横飛び みたいに、「短距離転移」を何日も使い、やっとレベル2になり使いやすくなった。


しかし、1メートルぐらいズレる能力では大きな攻撃は避けれないから、まだまだレベル上げが必要だが…


順調にサーチ&デストロイを繰り返し、10階層に到着し、すぐさまボスにアタックをかける。


ボス部屋には顔があるデカい木と雨合羽みたいはフード付きマントの小人?

が五名並んでいた。


鑑定

『エルダーボムトレント レベル80』

〈爆発魔法〉〈炎耐性〉〈物理耐性〉


『ガーディアンリリパット レベル50』

〈マジックバリア〉〈弓〉


ボムトレントの進化魔物だな…


「絶対〈爆発魔法〉を濾しとる!

〈マジックバリア〉もついでにいただくぞ!」


と気合いを入れ、


俺は、ゴーレムチームにサポートを頼み、


「 濾しとりたいので俺が行く!」


と宣言しボスの前に進み出た。


多分名前からして、小人が守り、かしの木おじさんが爆発させるスタイルだろう。


まずは、小人から!


と思ったとたん、小人の一人が俺の足元を狙い俺の動きを制して、残りの四人はおれの前後左右に布陣する。


四人がマジックバリアを展開した瞬間、俺は嫌な予感がして短距離転移を連発し、四人の中心から退避したと同時に、


「ドゴォォォォォン!」


と、火柱がマジックバリアで囲まれたエリアから立ち上る。


〈ひぇぇぇぇっ!怖ぇぇぇ…あいつら防御じゃねぇ!〉


アイテムボックスから〈MPカード〉を取り出して、回復しながら、


〈名前詐欺だ、四方に拡散する魔法の威力を一点に集中させる、攻撃サポート要員だ!〉


と、心の中で文句をいう…


どっちにしろ、隣の晩御飯に突撃サイズの濾過ポイでは、かしの木おじさん は濾しとれないので、能力そのままで、

大きさ30メートル 継続時間 10分

で濾過ポイを張り直し、

上から叩きつける様に被せる作戦に変える。


危険を察知したガーディアンたちがマジックバリアを木の前で展開していし、

木は焦って爆発魔法を連射してくる。


〈やけくそかよ!?〉


と悪態をつきながらも〈かしの木おじさん〉に向かい走り出す。


かわしたつもりでも威力のある爆発の余波を2~3発食らうが、


「あの頃とは違うのだよ、あの頃とは!」


と、軽い傷を負うも、気合いを入れて〈かしの木おじさん〉と〈五人の小人〉ごと上から叩きつけた。


………〈静かだ〉………


〈あっ、爆発で鼓膜がサヨナラしたのか…〉


と、納得し、


〈勝った…よね?〉


とゴーレムチームを見ると、


ミレディさんが駆け寄り、


「痛いの痛いの飛んでいくデス!」


と治癒魔法のライフヒールをかけてくれている。


〈ありがとうね〉


10階層の転移陣の宝箱に鑑定をかけて、安全を確かめた後開けると…


スキルカードだった。


〈マジックパンチ〉


なんじゃコレ?…


俺は、スキル図鑑を出して確認すると、


『武道家にお薦めなスキル

拳に魔力を纏うパンチを繰り出せる。

攻撃は魔法扱いになり物理耐性のある敵にダメージが与え易くなる。

また、属性魔法が使えれば、その属性のパンチも使用可能。』


と書いてあった。


〈めちゃくちゃ当たりだ!〉


俺はあまり疲れていないが、転移陣の登録が終わるとキャンプの用意をして、鍛治仕事に入った。


まずは、グランユニット用に

盗賊団から濾しとった体術スキルを五枚


マジックパンチ


10階層迄に集まった

火、水、風、土の魔法カードを束で出し。


マジックバリア


爆発魔法を取り出し習得した。


グランユニットに前回付与できなかった、


〈自然修復〉を付与

そして、

「体術 レベル MAX」

「火魔法 レベル MAX」

「水魔法 レベル MAX」

「風魔法 レベル MAX」

「土魔法 レベル MAX」

「爆発魔法 レベル ー」

「マジックバリア」

「マジックパンチ」

を付与した。


これでグランユニットの空きスキルスロットが1になってしまったが、なかなかの仕上がりである。


次にミレディさんのミスリル金の腕輪に

マジックバリアを習得し移し代える。

空きスキルスロットがあと一つ有るので、風魔法をMAXまで習得し移した。


「ミスリル金の腕輪」

「魔力吸収」「マジックバリア」

「風魔法 レベル MAX」


と云う魔法使いが欲しがりそうな装備になった。


ミレディさんは満足そうにカチャリと腕輪をはめて、


「フフフっ、ワタシは愛されてマスね。」


と鼻歌を歌いながら料理をしている。


キバさんのネームプレートにも空きスキルスロットが一つあったから、マジックバリアを移した。


シルバーさんには新にミスリル金で尻尾飾り(ほぼ腕輪)を作り、「マジックバリア」と「火魔法 レベル MAX」「水魔法 レベル MAX」を付与しておいた。


キッド君は水龍の守りが有るし…


と考えていたら、キッド君から秘密のお願いをされた。


俺は、「本当に良いのか?」と聞いたが、

キッド君はしっかりと俺を見て黙って頷いた…


了解した俺は、マジックバリアと土魔法 レベル MAXを習得してから、


鍛治釜戸に向った…



ー 数日後 ー


魔法主体の敵にマジックバリアは効果絶大で、魔力を込める程に強いバリアになるためレベル差がある今の階層では相手は手も足も出せずに、パッシュん する。


順調に進むが、無理をせずに5階層ごとの休憩エリアでキャンプをしゆっくりと、攻略していく。


そして、


折り返し50階層までやって来た…


ここまでの道のりで分かったことは、ダンジョンマスターの人間性なのか、このダンジョンはとても真面目な感じのダンジョンだった。


罠の類いは非常に少なく、マップも左右対象で綺麗な配置だったりと…。


このダンジョンは魔法を主体とした、攻撃をする魔物とその魔物のサポート的なスキルを持つ魔物がセットで出たり、珍しいスキルの魔物も多く見られる。


〈インテリジェンスを感じるダンジョンだ。〉


別にイゴールさんを悪く言ってる訳じゃないからね…どちらかといえばアホのサブマスターの〈ベノン〉のせいでバランスが悪いダンジョンだっただけだから…


〈ミレディさん念話飛ばしちゃダメだからね!〉


だが、やはりメインダンジョンだった。


裏切り、罠をはり、仕掛けてくる。


目の前の50階層のダンジョンボスは二体


『魔水晶のジャイアント レベル85』

〈魔水晶の効果で魔法攻撃耐性〉

「体術 レベル MAX」


『泥の巨人 レベル85』

〈泥の効果で物理攻撃耐性〉

「水魔法 レベル 2」「土魔法 レベル 2」


と、魔法だけでは勝てない。

物理だけでも勝てない、巨人のコンビに俺は、


「ファル。行けるか?」


と聞けば


「応!」


とだけ答え、空中に舞い上がるファルさん。


俺は、アイテムボックスからグランユニットをだし、


「合体だぁ!」


と、叫ぶ俺。


グランユニットに向け、空中から隼が舞い降りる。


頭部にオリハルコンの隼が納まり、


瞳が輝く


「うぉぉぉぉ!」


と雄叫び、ゆっくりと、立ち上がる…


そして、拳の先まで回路が繋がった様にメタルボディーの巨人が躍動し、


「機動巨人! ファルグラン !!」


と、段々と様になってきている名乗りを聞いて、

ウンウンと頷く俺。


2体の巨人に向けて動き出すファルグランさん…


泥の巨人は魔法をファルグランに、打ち込むがオリハルコンの外装にダメージは、ほとんど通らない。


ファルグランさんは右手に火魔法を纏い、


「ファイアーインパクトぉぉぉ!」


ファルグランさんの右手の拳が、刺さった泥の巨人は「ジュウゥゥゥゥ。」と水分が蒸発する。


そして、渇ききった土塊が、爆ぜる


〈パッシュん〉


と乾いた音が響き、


残った魔水晶のジャイアントに向き直るファルグランさんは水晶の巨人に向かい走り出す…


しばらく、体術 MAXの巨人二人の素手の攻防が続くが、


いつまでも続くと思われた互角な拳や蹴りの打ち合いは突如止んだ…


ファルグランさんが一旦距離を取り、


「解析完了」


「ターゲットロック」


と呟くと、


ファルグランさんの右手が仄かに赤く光る。


そして、全身から沸き上がる気迫と共に、


「うぉぉぉぉ!もぎ取れ!!

グラァーン・フィンガァァァァァ!」


と、叫ぶ…


実は数日前にグランユニットの〈空きスキルスロット1〉が気になり何となく「もぎ取り」スキルで埋めておいたのだ。


水晶の巨人の胸に深々と突き刺り、そこからユックリと引き抜かれたファルグランさんの手には、大きな魔石が握られていた…


〈パッシュん〉


と音が響き、静寂がボス部屋に訪れた…


〈あれだね…ちゃんとした使い方すると…カッコいい技だね…


おイナリ引きちぎる技じゃ無いんだ…あれ…〉


と感心したのはファルグランさんには内緒である…


〈マジでミレディさん伝えちゃ駄目だよ!〉



50階層の転移陣の部屋に入り、


何時ものように宝箱を鑑定する…


『ダンジョンのレア宝箱』

〈罠なし〉

〈鍵不要〉


久々のレア宝箱だ。

危険が、無いので開けて中身をチェックする。


「音魔法」のスキルカード


スキル図鑑で確認すると、


レベル1 声真似 (イメージした声がでる。)


レベル2 拡声 (大きな声がだせる。)


レベル3 エコーロケーション (音の反響で状況が把握できる。)


レベル4 ボイスミサイル (音の振動を相手に飛ばし攻撃する)


レベルMAX 無音 (目視で確認出来る指定した場所から半径5メートルの音を消す。)


よく分からないけど、エコーロケーションは索敵と相性が良いらしい…



俺達は、転移陣に腕輪を登録させ、キャンプの用意を済ませる。


このキャンプ地で数日過ごし、


そして、ようやくキッド君との約束を果たす時が来た…


今、キッド君は完全装備で俺の前に立っている。


他のゴーレムチームにはすでに報告をしている…が、今になっても、ミレディさんは、


「大丈夫なのデスか?」


と不安そうだったが、


キッド君は念話で、


「僕が頼んだんです…後悔はありません。


それにきっと大丈夫ですよ。」


と明るく語った。


そして、俺はキッド君から

「魔力」と「スキル」と「ゴーレムハート」を濾しとった。


頭から濾過ポイが足元に抜けると、

キッド君から空中に魔力が霧散し、

カラン、コロンとミスリルコートの魔鉱鉄のパーツが転がった。


俺は、ポイの中にあるパッケージされたゴーレムハートをパッケージを破り、魔力で満たした。


鑑定


『ゴーレムハート(コモン) レベル127』


イケるはず。


俺は、完成している新しい体にキッド君の魂を近付けると、

ゴーレムハートから金属の糸がオリハルコンのパーツに染み込んでいく…

ゴーレムハートも溶け込んだ瞬間に、パーツの塊が一人の意思を持ち、


〈物〉から〈者〉に成った…


「キッド君!」思わず声をかけた俺に、


スッと、親指をたてるオリハルコンゴーレムの青年がそこにいた。


『オリハルコンゴーレム (コモン)』

〈キッド レベル127〉

「空きスキルスロット 10」


やった…のか?

やった…よね。


それから俺は、一晩かけてキッド君にスキルを渡した。


『キッド レベル127』

〈オリハルコンゴーレム〉


スキル

「神々の知恵」

〈俺のスキルをそのまま渡した。〉


「アイテムボックス レベルMAX」

〈俺のアイテムボックスの中身を一旦ミレディさんに預けてから渡す〉


「忍の心得 レベル1 」

〈隠密・忍び足・気配消し・不意打ちの複合スキル〉


「自然修復」

取り込んだら付与の〈クールタイム中〉から〈使用可能〉に成った。


「魔力吸収」


「水龍の守り」


「音魔法 レベル1 」


「重さ軽減」


空きスキルスロット 2


装備


オリハルコンの弓

「弓 レベルMAX」

「命中率上昇」

「クリティカル率上昇」

空きスキルスロット2


オリハルコンのナイフ

「短剣 レベルMAX」

「武器速度上昇」

空きスキルスロット2


作業着セット 〈ミレディさん用の作業着の流用〉

「耐久力上昇」

空きスキルスロットなし


キッドのドックタグ

空きスキル2


完成した。

一晩かかった…


だいぶ俺のスキルが寂しく成ったので、


サルーン盗賊団から濾しとった、

「アイテムボックス」

「鑑定」

と、キッド君の「鷹の目」をもらった


すべてを獲得したが

すべてがレベル1になり鷹の目は、


マップ レベル1と、索敵 レベル1に

戻った…


残念…


試しに、ミレディさんの手料理に、


「鑑定」


と、唱えると、


「食べ物」

「食べられる」…


鑑定先生は転生してアホの子に成ってしまった…



アカン眠たい。


もう、寝て明日から仕切り直したい…


と思っていると、


「ご主人様お疲れ様でした。ベットの用意ができております。」


と、キッド君の声がした。


「ありがとう、キッド君。

体の調子、変なら言ってね。」


と言ってベットに向かう。


「はい、何があればお願いします。

では、お休みなさいませ、ご主人様。」


と…


「うん。」と言って愛妻号に向か…うん??


〈えっ!キッド君しゃべってないかい?〉…



「皆集合!キッド君がおかしいよぉぉぉぉ!」



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