第47話 ダンジョンの悪意ある罠

40階層の転移部屋に着き、


転移陣の上の宝箱に鑑定をかける。


『ダンジョンの宝箱』

〈罠無し〉

〈鍵不要〉


でしょうね。

俺は、転移陣の宝箱は安全説を確信しながら開けてみる。


『鍛治の極意と魔石の利用方法』


と言う革の表紙の本だった。


裏表紙に、


『この世界の鍛治の発展を願う。マイス』


と書いてあった。


〈技能神様の直筆?!〉


パラパラと読んでみたら、

魔石を使ったスキル封入方法と書いてあった…


魔石に正確に封入紋を描き、

その魔石にスキルを使えば、その効果を封入出来る。

衝撃を与えれば外に出るので、

矢じりに使用すれば魔法矢にもなると…


自由度が高い技術である…。


〈マイス様、ゴブリン軍団前に知りたかったです…。〉


そして、


転移陣の登録が済み皆で休憩を取る事にした。


ミレディはお料理にハマっていて、マイステアで買ってあげた〈家庭料理の本〉を片手にレッツクッキングしている。


ミレディのその右手には俺の処女作品の魔鉱鉄の包丁が握られている。


キッドはシルバーと戦車の手入れをしていて、


キバは俺の横で寝そべり、


俺は、これ迄の戦利品のスキルカードのチェックをスキル図鑑を片手に行っている。


『念話』×1

登録した者と口に出さずに会話が出来る。

登録人数と距離はスキルレベルにより変化する。


〈軍司のスキルだな、ミレディに良さそう。〉


『気配消し LV - 』×3

索敵に引っ掛からなくなる。

目視されると効果がなくなる。


『不意打ち LV - 』×3

目視や感知されていない相手にクリティカル率2倍


〈アサシンのだな…キッドかキバにやりたいな。〉


『騎獣の心 LV 1 』×10

騎手との信頼度により身体能力にプラス補正


〈ゴブリンライダーの犬のスキルか?〉


と、チェックを済ませて、


〈よし、今はこれくらいだな。〉


と、満足した俺は、〈念話〉〈気配消し〉〈不意打ち〉を一枚づつ獲得し〈騎獣の心〉を五枚まとめてLV MAX を獲得する。


アイテムボックスから鍛治釜戸と鍛治セットをセーフティーエリアでひろげて、

ミスリルで馬用のハミを作り、武器鑑定をする。


『ミスリルのハミ』

〈空きスキルスロット 2〉


と、結果を確認し、「よし!」と喜んだ後に、


俺は、アダマンタイトの金槌をハミに当て、


「鍛治スキル、付与、騎獣の心 LV MAX、発動」


と、金槌でハミを〈コン〉と叩く。


完成したハミを早速シルバーに装備してもらう。


俺は、もう一度「騎獣の心」を五枚取り込み、


そして、キバ用の首輪を改造し鞣し革で鞍を作り、ミスリルの持ち手をゴブリンライダーの犬の鞍を思いだしながら作り、


武器鑑定をすると、


『ミスリルの犬の鞍』

〈空きスキルスロット 3〉


が完成し、付与スキルを使い

〈騎獣の心〉〈気配消し〉〈不意打ち〉

を付与する。


〈よし、なかなかの出来だ。〉


と、満足しながらキバに装備させると、

キバも喜んでいる様子で、

ご機嫌でキッドを乗せ走り回っている。


〈続きをしよう。〉


〈気配消し〉〈不意打ち〉をキッドのメイン武器のオリハルコンとミスリルの弓に付与する。


これで、キッドは遠隔から〈鷹の目スキル〉で不意打ちが出来るスナイパーになるはず。


ついでに俺も〈気配消し〉〈不意打ち〉を覚えておく。


最後に料理が終わったミレディさんに「念話」のスキルを付与し、

ミレディさんにスキル図鑑を頼りに使い方を教える。


念話スキルの登録先に俺を登録してもらい、


早速実験に移る…


〈マスター、聞こえまマスか?〉


と、聞こえるが、ミレディは普段から口が動く訳じゃないから成功か判断に困る…


と悩んでいると、


〈では、失敗デスか?〉


と、心配そうなミレディさんに、


〈いや、失敗かはよく…あれ?俺…〉


と、違和感に気がつき、


「今、俺しゃべってないよね?」


と、確認する俺に、


「はい、マスターは喋ってないデス。」


と教えてくれるミレディさん…


〈成功してるじゃん〉


と安心して実験を終了した。


〈よし!全員完成したぞ。〉


片付けを終わらせ、グンと伸びをしていると、


「マスター、豆と鶏肉のシチューが完成していマス。どうぞお召し上がるくだサイ。」


と、ミレディさんが手料理を並べてくれる。


食べるのが俺だけなので気が引けるが、皆気を使って食卓を囲みMPカードをパリっとやっている。


〈皆優しいな。〉


今日はゆっくり休んで明日も頑張ろう…



ー 翌日 ー


41階層に突入ですが、


キッド君のマップと索敵が育ち複合スキル〈鷹の目〉に進化、見えない位置からの狙撃が可能となり、実に進むのが楽々で、


早くも42階層に突入します。


ここも前の階層と同じで、サバンナの様な乾いた大地にまばらに低木の林があり、ごく稀に大木が生えている広い階層で、


鞍等を作り、機動力が上がった俺達は、

キッド君とキバさんのコンビのあとをシルバーさんにミレディさんと二人乗りをして階層を駆け抜ける。


そうそう忘れてましたが、

ミレディさんの重さ軽減の付与は、冗談ではなくマジだった様で、

昨日、皆の付与が終わったら、


「マスター、重さ軽減の付与はいつデスか?」


と聞いてきた。


〈あっ、あれ本気だったんだ〉と思ったら。


「本気デス!」


と念話スキルで駄々漏れの俺の心だった…


なんか神様と話をしてた時の事を思い出した。


まぁ、そんなかとがあり、

現在シルバーさんに二人で乗っても大丈夫になったのだが…


さて、この階層での問題が一つ、


それは、久しぶりの〈隠し通路〉があるのだ。


ミレディさんに隠し通路の件を告げると、ゴーレムチームで会議が始まる…


ゴーレム同士での念話のような能力があるが、俺は、仲間外れである。


話の流は解らないが、ゴーレムチームは隠し通路に興味津々で行く事に決定した。


マップを頼りに隠し通路を目指し、


見つけた隠し通路はサバンナの大きな岩の影にあった丸い穴で、嫌な予感しかしない…


シルバーは到底入れないので、アイテムボックスなのだが、この穴は入ったら最後引き返せそうにない。


最近、俺の運の悪さとダンジョンという特殊な状況に慎重になる小者精神から感が冴えているのも有り、


「皆悪いけど、アイテムボックスに入ってくれないかな?」


と保険をかける提案をだす。


「なぜデスか?シルバーは穴に入れないから仕方ないデスが、私は入れマスよ?」


とのミレディさんの意見に俺は、


「入った先の感じがわからないんだけど、

一方通行にするからには、何かしらの仕掛けがあると思うんだ…もし大丈夫なら皆を出すから。」


との説明に、ミレディたちは渋々了解してくれたが、

同時にダンジョンで1人になる恐怖にも襲われた。


それほどにゴーレムチームは心強い仲間なのだと確認できた。


皆をアイテムボックスにしまい、

深呼吸をしてから、腹をくくって穴に入る。



穴は滑り台だった長い長い、多分この世界一かもしれない長さの滑り台はグングン加速し最後にはクイッとジャンプ台に成っていた。


空中に投げ出され、無重力を体験する。


〈玉ヒュンのチン寒です…〉


かなりの落下時間…


あれ、この高さから地面に着いたら…


「ヤバイ死ぬかも!」


と気が付き、慌てながらアイテムボックスからHPカードを複数枚取り出す。


二枚ほど口に入れ歯を当てておき着地の衝撃に備える。


ハッと気付きフルポーションも握っておく。


そして着地の時…


いや、着水だった。


本来なら勢い良く水中に叩き込まれるトラップ通路だろうが、


運悪く、〈水上歩行〉のある俺は、水面に叩きつけられた。


ただの事故…落下事故である。


激痛が走り奥歯を噛み締める!


HPカードを割りHPが回復するが同じ勢いで力が抜けていく。


〈ヤバイ怪我が酷い!!〉


まだ意識が有るうちにフルポーションを飲み干すと、体がうっすら光り、みるみる傷が癒えていく。


そして、意識がハッキリして状況を確認する。


水の上だ…


階段らしい陸地?が遠くに見える、水上歩行スキルで沈みはしないが生身では泳ぐのがしんどい距離の水のフロア…


落下した水面は、俺の血で赤く染まっている…


〈我ながら良く生きてたよ。〉


と驚く量の血の匂いを嗅ぎ付けてか、深い深い水底から何かが上がってくる…


俺の本能がざわめく…〈逃げなければ!〉と…


咄嗟にそう思った。


仲間は水の上には呼べない。


いざとなれば、1人で殺らなければ成らない…


アイテムボックスからじぃじ師匠作の アルドはんどあっくす を取り出し陸地を目指して走り出した。


走り出してすぐに、水面が盛り上がりソレが水面に躍り出る。


鑑定


『水龍 グランサーペント レベル250』

〈HP 4,200 / MP 560 〉

〈水龍撃〉〈龍の守り〉〈龍の牙〉〈スカイウォーク〉〈治癒魔法〉


なんじゃこいつ、強すぎだろだよ…デストラップだろ!こんなの…


ドラゴンを単騎で戦うなんてアホか!!


と散々悪態をつきながら俺は、陸地を目指そうとするが、水龍は、スカイウォークのスキルで、くねくねと空中を泳ぎ追ってくる。


〈あぁ、これ、逃げられないかも…〉


最悪だ、

仲間も無しで単騎でドラゴンって…バランスの悪いトラップ仕掛けやがって。

前のフロアの敵はレベル80前後だぞ!

責任者出てこい!


う○こチビる程説教してやる!!


と、やり場の無い怒りを抱えながら、ギリギリまで下り階段を目指したが、


結局回り込まれてしまう。


「あぁ、解ったよ…やってやる。

やってやんよ!脳筋水龍さんよぉ!!」


と覚悟を決めて、


アイテムボックスから盾とフルポーションを出したのち、武器を構えて水龍に向き合う…


水龍は空中から水に降り、凄い速さで俺に向かい迫りくる…


そして、ヤツの牙が魔力で光る。


〈龍の牙 か?〉


と思い、俺は盾を構え、タイミングを合わせ放電を使った。


弾かれると同時に閃光が走る!


〈放電〉な効果はあるみたいだが、ライフを削れている気がしない、俺製の魔鉱鉄の盾はかすった程度でガッツリ削れている。


今度は俺から仕掛けて、回り込んで放電を叩き込むが、水龍の前で弾かれる


〈?なぜ?〉と頭をフル回転しながら体制を立て直し、


スキルか!〈龍の守り〉とやらか!!


と理解するが、


益々勝てる気がしない…


俺は、下り階段を目指して再び移動する。


階段は安全地帯のはず、作戦を立て直さなければ…


と、走りながらも考えていたら背中に衝撃が走る。


尖った尻尾の先で貫かれ、

ワンテンポ遅れて凄い衝撃に襲われ飛ばされた。


フルポーションを飲むが、フラフラだ。

アイテムボックスから新たなフルポーションとMPカードを取り出す。


幸か不幸か壁近く迄飛ばされ、壁を背負って背後からの攻撃はなくなった。水に手をつけ〈放電〉を放ちまくる。


ダメージが有るのか、

水面から顔だした水龍が叫ぶ。


MP不足でフラフラになり、MPカードで回復しながらも、水流に鑑定をかける。


『水龍 グランサーペント レベル250』

〈HP 2,650 / MP 280〉


勝てる…のか?コレ…

と思った途端に、水龍が光り出した。


鑑定

『水龍 グランサーペント レベル250』

〈HP 4,200 / MP200〉


バカ野郎!回復しやがった!!


俺は、アイテムボックスからMPカードを追加で取り出し、

再び、手を水に付けて放電を連発する。


またフラフラになりMPカードで回復をはじめると、


水龍が、電気をくらうのを嫌い、水中からスカイウォークで空中に逃げた。


そして、水龍のまわりに光の膜がはる。


鑑定


『水龍 グランサーペント レベル250』

〈HP 4,200 / MP 30 〉


馬鹿な脳筋水龍だ…スキルに守られて回復待ちか?


または、俺の疲れるの待ちだろうが、フルポーションを湯水の様に使う相手とは初対戦なんだろうな…


俺が、、普通の冒険者なら、てめえの勝ちだが、普通じゃなくなった冒険者だからな俺…。


俺の人生で初めて言うかも知れないセリフを放つ、


「てめぇは強い!

だが、恨むなよ…お前の〈運が無い〉だけだ…」


と…


俺は、手を前に出し濾過スキルを使う。


大きさに魔力1,000追加


濾過膜A 指定枠 1 〈魔石〉


濾過膜B 指定枠 2 〈スキル〉〈魔物素材〉


パッケージ あり


を発動すると、


100メートルの濾過ポイを空中でとぐろをまいて身を守る水龍に向ける…


まさか、鉄壁の守りを破られるとは考えていないであろう水龍はドヤ顔で団子の様に丸く成っている。


だが、残念。


〈俺のスキルは、万物を濾しとれる!〉


俺は、水龍目掛け濾過ポイを振り抜く。


パッシュんと乾いた音はしたが、

濾過ポイの隙間にかなりの質量がある。


ピロリン

ピロリン

ピロリン

ピロリン…


と、鳴り止まないお知らせ…


空中からバランスボールぐらいの魔石が落ちてくる、

一瞬触れてアイテムボックスにしまう、濾過ポイは軽いが中のほぼ丸ごとの水龍素材は重く、全部まとめて〈バシャン〉と水面に落としてしまう。


〈しまった沈んでいく!〉


焦って駆け出すが、杞憂におわる。


パッケージされたものは、浮くんだな…新発見…


戦利品をアイテムボックスにしまい、


やっとの思いで、トボトボと下り階段を目指す。



やれやれだ…

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