第二章 総合ギルド 編

第47話 ギルド長は悪あがきをする【side:ガイアック】


 どうしよう……困ったな。


 俺のギルドが監視役なんかに乗っ取られてしまう……。


 もちろんそんなことにはさせないが、だが監視役が来てしまったらどうなるかわからない。


 なんとかそれまでに、俺じゃなくて、ヒナタを悪者にしないといけない。


 こんなことは間違っているのだ。


 医術ギルドの俺が正しくて、ポーション師のヒナタが間違っていなければならないのだ!


 それがこの世の唯一不変の理というものだ。


 監視役は来週からやってくるらしいが……。


「それまでになにか手をうつ必要があるな……」


「そうですね」


 まずは敵情視察だな。


 世界樹ユグドラシルギルドの情報を集める必要がある。


「おい、キラ! お前、行ってこい」


「わかりました、ギルド長!」


 数日間キラに聞き込みをさせて、情報を集めた。


 それでアイツヒナタについて、いくつかわかったことがある。


「どうやらアイツヒナタは医術免許を持っていないのに医療行為をおこなったらしいですよ……」


「ほんとうか……。それはいい情報だな」


 ポーション師の仕事にもちろん免許などは必要ないが……。


 俺たちみたいな魔術医師には絶対に免許が必要だ。


 そうじゃないと大問題になるからな。


 前例を見るに、一つも例外はない。


 医師免許は大学に通わなければ得られない。


 もちろんヒナタなんかが大学に通っていたわけはないので、あいつは完全な違法行為に手を染めたことになる。

 

「これはアイツをおとしいれるいい材料になりそうだ……!」


 真相を確かめるため、俺は直接ザコッグの元へ向かった。





「ちょ、なんの用なんです!? ガイアックさん。うちはもうあなたと関わるのはこりごりなんだ!」


 ザコッグのやろう、ちょっと見ない間に偉そうになりやがって。


 だがコイツのことはどうでもいい。


 俺が憎いのは全部ヒナタだ。

 

「おい、ザコッグ。お前、あの爆発テロのとき、ヒナタと共に世界樹ユグドラシルにいたらしいな?」


「そうですけど、それが何なんです?」


 俺を憎んでいるはずなのに、こうして素直に受け答えするとは、こいつもとことんお人よしだな。


 そういうやつが馬鹿を見るんだ、マヌケめ。


 俺は密かに心の中で毒づく。


「そのときだ、ヒナタはどんなことをした……?」


「どんなって……みんなを助けましたが? 英雄的な機転の利かせ方で……」


「そうじゃない。例えば……。医療行為をしていなかったか……?」


「なにが知りたいんです? たしかにヒナタさんは魔法手術マジックオペをされていましたが……それがなんなんです?」


「そうか、それでいい……。俺はそれが聞きたかっただけだ。もうお前に用はない。じゃあな」


「はぁ……なんなんだ一体……」


 ようし、これでザコッグの証言は得られた。


 あとは出るところに出るだけだ。


 医術協会は厳しいことで有名だ。


 こんな不正行為、絶対に許さないだろう。





 俺はスーツに着替え、書類を持ってギルドを出た。


 目的地はもちろん、医術協会本部だ。


「医術協会会長――ドレイン・ヴァン・コホックさんに面会したい」


「はい、ガイアックさまですね。しばらくおまちください」


 俺は軽やかに受付を済ませる。


 あとはヒナタの首がまるのを待つのみ……。 


 俺は待っている間、ニヤニヤが止まらなかった!

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