第123話 海を割る
「どうしましょうか……」
船に乗ろうと港街にやってきたものの……。
海が凍り付いていて、僕たちは立ち往生を余儀なくされていた。
「大丈夫よ、ここは私に任せて!」
名乗りを上げたのはリシェルさんだ。
リシェルさんは凄腕の大魔術師だけど、その命中率が壊滅的という欠点を持っている。
だが、今回のように海に相手だとその命中率も関係ないね。
「そっか、リシェルさんの炎魔法を使って海を溶かせば……!」
「でも……そんな海を溶かすなんてこと、できるのか……?」
ユーリシアさんは懐疑的なようだけど、僕はできると信じている。
「えい!
――ゴオオオオオオオオオオ!!!!
リシェルさんは海にめがけて特大の炎魔法を放った!
しかし……。
――ズドオオオオオオオオン!!!!
「あ、あれぇ……!?」
海という超巨大な的を相手にしているにも関わらず、リシェルさんの魔法は見当違いの方向へと流れていった。
しかも着弾したのは港に泊めてあった漁師さんの船だ。
「あ、あんたら……! 勇者パーティーだかなんだか知らないが突然やってきていったいなんなんだ……!?」
「お、オラたちの船がぁ……!」
それを見ていた地元の人たちから避難ごうごうが飛んでくる。
あらら……。
リシェルさんの命中精度を信じた僕がうかつでした……。
「み、みなさん大丈夫です! 弁償しますんで……!」
僕は地元の人たちをあわててなだめる。
今回の旅の予算は貯金をたくさん持ってきたから、このくらいの出費は想定内だ。
「お、そうか……! ならまぁ……ちょうど船も新調できるならいいか……」
「すみません、すみません」
僕は精いっぱい頭をさげた。
「ちょっとリシェル! なんでヒナタくんにだけ謝らせているんですか! あなたもちゃんと謝りなさい!」
「うう……ごめんなさい……」
ケルティさんに言われて、リシェルさんは落ち込んだようすで謝罪する。
「ふぅ……やっぱりこうなったか……」
ユーリシアさんもあきれ顔だ。
しょうがない……ここは僕が一肌脱ぐしかなさそうだね。
「みなさん、今度は僕に任せてください」
「え……!? ヒナタくんが海を……? でも……どうやって……?」
僕にはいくつか考えがあった。
いつものように
うまく命中率だけを活性化させることができたのなら、きっとうまくいくだろう。
だけどまたリシェルさんに魔法を使わせるのは、万が一を考えたら不安だ。
だから今度は僕がやることにした。
「僕が代わりに魔法を打ちます。それでいいですか? リシェルさんの魔法をまたコピーさせていただくことになりますが……」
一応、鑑定で魔法をコピーさせてもらうときはこうやって断りを入れておかないとね。
急を急ぐ場面でもないし、なにより魔法は情報という財産だ。
「あ、そうか! ヒナタ君は鑑定を使って人の魔法をコピーできるんだったな!」
思い出したように、ユーリシアさんが手のひらをうつ。
「い、いいわよ……仕方ないわね……」
しぶしぶリシェルさんがこちらを向く。
まあリシェルさんからしたら、十八番の魔法をコピーされるのは立場を奪われるような感じがして抵抗があるのかもしれない。
でも、いざとなったらリシェルさんの魔力に頼る必要があるから大丈夫だと思うんだけどね。
「じゃあ、失礼します。
〇
消費MP500
山を一個まるごと溶かすほどの灼熱を放つ
「よし、これで……! 僕も
そういえば、以前にもスパイを倒したときに
「じゃあヒナタ君、頼みます」
「はい! 任せてくださいケルティさん」
僕は凍り付いた海に向かって、手のひらをかざした。
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