第40話 救いたい人のために――。


「ライラさん! 大変です!」


 僕はライラさんに事の顛末てんまつを話したよ。


「え!? 爆発テロですか!? それは大変ですね……」


「ええ、ですから僕たちで街の人を救いましょう!」


「ではヒナタくんはポーションの用意を! 私は人員を集めます!」


「はい! よろしくお願いします」


 さっそく僕たちは手分けして救助に取り掛かる。


 僕は倉庫に直行した。


「クリシャ! 手伝ってくれるかい?」


「はい、ご主人!」


 倉庫にいく途中でクリシャを拾う。


 彼女は元奴隷の獣人の女の子だ。


 鼻が利いて、薬草の仕分けとかをしてくれるから、こういうときにも頼りになるね!


「ウィンディ! 君も頼りにしてるよ!」


「はいっス! 自分も先輩のお役に立ててうれしいっス!」


 ウィンディ・エレンフォード――僕の優秀なかわいい助手だ。


 彼女にはこれまでもお世話になったね。


「よし、手術オペの準備だ!」





 僕たちが準備を整えてから数分で、とんでもない数の患者さんたちが次々と運ばれてきた。


「う、ひどい……」


 ――ガラガラガラ。


 担架たんかに乗せられて、動けなくなった人たちが、僕の目の前に並べられる。


「よし、やるしかない!」


 傷口にどんどんポーションを塗っていく。


 でも万能オールポーションや上級回復ポーションには、数に限りがあるし……。


 症状の重さによって、うまく使い分けるしかないね。


 症状の軽い人ならポーションだけでなんとかなるけど……。


 やっぱり医療魔法がないと……。


「ヒナタくん! 他のギルドからすけっ人を連れてきましたよ!」


「ライラさん、ありがとうございます!」


 誰だろう。


 医術ギルドの人かな?


 まさかガイアックじゃないだろうけど……。


 まともな・・・・魔法医師の人が一人いるだけでも助かる。


「ヒナタさん、もう大丈夫ですよ。俺に任せてください」


 そう言って、やってきたのは――。


 かつて僕が救った、医術ギルドのギルド長……。


「ザコッグさん!」


 そう、ザコッグさんだった。


 たしか、ガイアックから押し付けられた大量のクズ素材を、僕が買い取ったんだったっけ。


 あの時はすごく感謝されたけど、こういう形で恩返しされるとは思ってもみなかった。


 やっぱり、人と人のつながりは大事だなぁ。


 ザコッグさんはテキパキと魔法手術マジックオペをこなしていった。


「すごい!」


「ヒナタさんのポーションの性能がいいからですよ。だからこんなに早く処置できるんです。それに、さっきまでの応急手当も完ぺきだ……。俺のギルドの若い魔法医師よりもすごいですよ?」


「そんな……。まあ僕も一応医術ギルドで働いてましたから。見よう見まねですよ」


 ん?


 見よう見まね……。


「そうだ!」


「どうしたんです?」


 僕は思い出した。


 さっき、勇者パーティの魔導士さんとの間であった出来事を。


 僕はあのとき、万能鑑定オールアプリ―ザルのスキルで彼女の火炎小球ファイアボールを真似したんだった。


「ちょっといいですかザコッグさん。見せてもらいますよ」


「え、なんですかヒナタさん……」



 ――万能鑑定オールアプリ―ザル



 僕はザコッグさんのスキルを確認する。



 ●医療魔法マジックオペLv2


  対象者の簡単な傷口を処置するためのフレームワーク魔法。

  使用にはポーションとの併用へいよう推奨すいしょうされる。



「これだ! これで僕にも……」


「……?」


 僕は目の前の患者さんに向かって、唱えた!



 ――医療魔法マジックオペ




「「「えええええええええ!!!!????」」」




 それを見ていたライラさん、ザコッグさん、ウィンディたちから一斉に、驚きの声があがる。


「ひひひ、ヒナタさん。医療魔法が使えたんですか!?」


「いえ、今スキルで模倣もほうしただけです」


「すごい、ヒナタくん。いつの間にそんなことまで……」


「先輩……すごすぎるっス」


 正直、僕だってまだまだ信じられない。


 でも、いつまでも驚いてばかりはいられない。


「治れ!!!!」


 さらに力を込めると、患者さんの傷がみるみるふさがっていく。


「なんということだ……。ヒナタさん、すでに俺よりも使いこなしている!」


「ヒナタくん、万能すぎますね……」


 自分でも驚いている。


 なんで僕はこんなに使いこなせているんだ?


 そうか!


 きっと長い間、医術ギルドで何回も見てきたからだ。


「まさかこんな形で、今までの経験がやくにたつなんてね……」


 正直、ガイアックの元で過ごしてきた時期を、後悔しかけていた。


 だけどあの耐え抜いた日々は無駄じゃなかったんだな。


 そう思えただけで報われた気がした。


 お、患者さんの意識が戻った。


「あ、あなたが医師せんせいですか……? あ、ありがとうございます」


 患者さんは力の抜けた声で、なんとか振り絞って声をだした。


「そんな、医師せんせいだなんて」


 だけどとにかく、一人救った。



 まずは一人。



 これからつなげるんだ――。






 僕が本当に救いたい人ヒナギクを救うために――。





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