第22話 ギルド長はやっぱりポーションが作れない【side:ガイアック】


「ギルド長、やっぱり、ポーションに関しては素人の自分たちが、ポーションを混ぜるべきではありませんでした……!」


「聖水の件で、ギルド長に迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした!」


 部下たちが俺に頭を下げる。


 当然だ。


 こいつらが聖水やポーションのことをロクに知らなかったせいで、俺が怒られたんだからな。


「まったく、いい迷惑だよな」


「はい、反省しています!」


 そもそも、こんなことになったのは全部ヒナタのせいだがな。


 あいつが満足のいく働きをしていれば……。


 俺がポーション師をクビにしたのは、あいつがどうしようもないマヌケだったからだ。


「で、どうするんだ?」


「もう一度、チャンスをください!」


「いいだろう」


 こうして、俺たちはもう一度ポーション作りに挑戦した。


 もちろん今度は、聖水を使うことを忘れてはいけない。





「ギルド長、ただいま戻りました!」


 教会に聖水をもらいに行ったキラが帰ってきた。


「おう、どうだった?」


「それが、教会では最近、聖水を作る量が減っているとかで……」


「は?」


「代わりに、世界樹ユグドラシルとかいうギルドから聖水を買いました」


世界樹ユグドラシル?」


「なんでも、彼らは教会の負担を減らすために、代わりに聖水を作って売ってるそうで。それに、売り上げも教会に寄付しているらしいですよ? いやぁ、世の中にはすごい人もいますね」


 ふん、どうせなにか裏があるんだろう。


 寄付なんてするのは頭の腐った偽善者だけだ。


 それにしても、世界樹ユグドラシル……。


 どこかで聞いた名だな?


 まあいいか……。


「さぁ、聖水も手に入ったんだ。こんどこそ、ちゃんとポーションを作れるな?」


「はい!」





 ――イライライライライライライライラ。


「おい、いつまでかかってるんだ? たかだかポーションを混ぜるだけのくせに!」


 俺は従業員たちを怒鳴りつける。


 以前、井戸水でポーションを作った時にはこんなことにはならなかったのに。


 どういうことだ?


 俺を舐めているのか?


「それが、聖水だと、ポーションを作るのが思ったよりも難しくて……」


「いい訳をするな! そんなわけないだろう!」


「井戸水と違って、すぐに蒸発するんですよ……。この調整がなかなかシビアで……」


「俺に貸してみろ!」


 ――ぐつぐつぐつぐつ。


 む、たしかに……。


 これはなかなか難しいな……。


 ま、まあこんなのは俺の仕事ではないからな。


 できなくても問題ないだろう。


「どうしましょうか……」


「もういい、金はいくらでもつかえ! とりあえず患者はどんどんやってくるんだ、既製品のポーションを買ってこい!」


「はい!」


 くそう、このままじゃいつか破産するぞ……。


「やはりポーションの専門家が必要なのでは……?」


 レナが俺にささやく。


「うるせえな……?」


 俺はその辺にあったゴミ箱を蹴とばす。


 だがまぁ、レナの言うことにも一理あるな……。


 破産するまでに、新しいポーション師を雇わなければな……。


 そうだ!


 今度は大学出の、貴族を雇おう。


 そうすれば、あんな馬鹿みたいなウスノロはやってこないだろう。


 ポーション師なんかに金をやるのは嫌だが……。


 貴族のヤツならまあいいだろう。


 貴族のポーション師なんて少ないが、まあ探せば見つかる。


 まったく、世の中には物好きなバカもいたもんだ。


 そんな底辺職……。


 まあそういうヤツは、大学でも落ちこぼれなんだろうな。


 それに、底辺貴族ってのがお決まりだ。


 もしくは、完全に道楽でやっている上級貴族のバカ息子か。


 まあどちらにしろ、ヒナタなんぞよりはましだろう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る