第59話 ライラの面接【side:ライラ】
今からヒナタくんのところに会いにいこうと思っていたところです……。
突然、ギルドに入ってきた集団に……面接を頼まれてしまいました……。
「え!? 今から面接をですか……!?」
「はい! ぜひよろしくお願いします!」
たしかに……人員不足で困ってはいましたが……。
こんなにはやく、しかもこんなに大勢の人がやってくるなんて思ってもいませんでした。
さすが、ヒナタくんのアイデアです!
やっぱり彼はなにかとても大きな
そして、さすがヒナギクちゃんの絵ですね……。
上手いだけじゃなく、確実に人を引き付ける魅力にあふれている……!
それにしてもこの医師志望の男性……どこかで見たような……?
わかりませんね……ちょっと……。
最近、ヒナタくん以外の男性の違いはよく分からなくなってきています。
「で、では……みなさんでこちらへ……」
ここは冒険者ギルドのテーブルをつかわせてもらいましょう。
あそこは広いですからね。
数人掛けの長いテーブルありますし。
「ありがとうございます。いきなり押し掛けたのに面接してもらって」
「いいんですよ。こちらも、急を要しますしね」
私たちは歩きながら、そんなことを話す。
その後は無言で、しばらくみんなで歩いて冒険者ギルドに着きました。
少し気まずい時間でしたが……仕方がないです。
ヒナタくん以外の男性と話すような世間話なんて……ありませんからね。
そして私たちはぞろぞろと着席する。
なんだか、一対複数人で向いあって座ると……すこし変な気持ちになりますね。
ま、まあいいでしょう。こういう面接の形もあります。
「で、では……まずは代表の方から、お名前を……」
「は、はい! 自分は……キラ・マクガエルです。出身はゲフテンベルグです」
「そうですか……遠いところからなんですね……。では次の方は?」
「俺はジンリュウ・キュジョーです。出身はフランツェルプです」
「けっこう近いんですねぇ……」
そんな感じで、順番に簡単な自己紹介をしてもらいました。
まあヒナタくん以外の男性の情報はあまり頭に入ってきませんが……。
名前や出身地は置いといて、これまでの経歴とかも知りたいですねぇ……。
「以前はどこにお勤めだったんですか?」
「え!? えーっと……それは……」
どうやら怪しくなってきましたね……。
そんなに言いずらい場所で仕事をしていたのでしょうか……?
……っは! まさか! 裏世界で闇医者でもしていたとか!?
でもそれだとなんでこんなに大勢でクビに?
まったくわかりませんね……。
「あのー、お話してもらえないと採用はできないんですが……」
「あ、はい! す、すみません……。あの、その……とっても言いにくいことなので」
「?」
「……分かりました! 話します! 話します!」
ようやく話す気になってくれましたか……。
このキラという男性、意気地がなくてダメそうな感じですね。
ヒナタくんとは大違いですよ。
もっとシャキッとしてもらいたいものです。
特に、医師なんていうのは決断力が大事ですからね。
そう考えていると、ようやくキラさんが重い口を開きました。
「ガイアック……というのはご存知でしょうか……。あ、いや、この街の人にそんなことを訊くのはおかしいですよね。あの悪名高いガイアックですよ。爆発テロでたくさんの被害者をだした……。我々はそいつのギルド出身なんです」
「ガイアック……!?」
その名前には聞き覚えがあります……。
ほんとうは覚えたくもない名前ですが……。
仕方がありません。だってそれは私の敵――害悪なのですから。
「…………おかえりください」
「ええ!? ちょ、ちょっと! 待ってくださいよ! たしかにガイアックは酷い男ですが、我々はその被害者なんです! あの男にひどい目にあわされ、ギルドを追われたのです!」
キラさん……残念ですが縋りついても無駄ですよ?
私はぜーんぶ、知ってるんですからね?
ガイアックギルドの
「どの口がそんな嘘を言うんですか……?」
「え! 嘘!? そんな! 嘘なんて……」
「あなたたちだって、
「ギク……! い、いえ……そんなことは決して……」
私はこの人たちを許せません……。
ま、まあ……彼らがヒナタくんを追い出したことで、私と出会えたのは感謝しますが。
それでも、私のヒナタくんに対する数々の仕打ち……! 許せないっ!
「あなたたちは……ヒナタ・ラリアークという人物をご存じで……?」
「へ? い、いえ……そんな名前の者は……あっ!?」
ようやく気付いたようですか……。
それにしても、一瞬とはいえ、ヒナタくんの名前すら忘れているなんて……。
「そ、その男は……たしかにうちのギルドに居ました! ですが、追い出したのはガイアックです! 俺たちは関係ありません! 信じてください!」
「嘘ですねッ……!!」
「えっ!?」
「私を誰だとおもってるんですか……? このギルドのギルド長ですよ? そして、ヒナタくんの恋人でもあります! その私が……、知らないわけないじゃないですか……。ぜーんぶ、ヒナタくんの口から聞いてますよ?」
私は、彼らを静かに笑みで威嚇する。
「で、では……その男……ヒナタ・ラリアークはここのギルドに!?」
呆れました……この男はそんなことも忘れているのですか……?
どれだけヒナタくんのことが眼中にないのかよくわかりました。
きっと、平民を差別しているタイプの貴族ですね……これは。
底辺貴族にありがちな思想です。
自分たちが見下されているから、より下にいるものを虐げる。
こうなればもう救いようがありませんね。
彼らの意識は、根っこのところでは一生変わらないでしょう……。
「きっとヒナタくんはあなたたちを許します」
「……!? じゃ、じゃあ……!」
喜ぶ顔を見せた彼らの目の前に、私は人差し指を突き立て、制止します。
一度喜ばせてから、どん底に突き落としてやりましょう。
「ですが、私が許しません!!」
「そ、そんな……」
これで少しでもヒナタくんの気持ちがわかってくれればいいのですが……。
まああまり反省は期待できないでしょうね……。
「ではそう言うことですので……。おかえりくださいな」
「う、うぅ……」
私としても、もったいないことをしました。
ほんとうは人材確保のチャンスだったんですけどね……。
でも、ヒナタくんを傷つけた人たちを、どうしても許すことができません。
これは私のわがままなんですけどね。
ごめんなさい、ヒナタくん。
私のせいで、またギルドに迷惑をかけてしまいます……。
そのときでした――。
「ま、待ってください!」
――現れたのは、ヒナタくんでした。
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