第88話 オーバーパワード
「う、うぅ……」
「意識が……!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「!?」
緑の発光に包まれたまま、ガイディーンさんはガバっと起き上がり、雄たけびを上げた。
「何事だ!?」
あまりのことに、外にいたはずのガイアックも、駆けつける。
「おお……ここは……!? 私はどうなったのだ!? 身体に力がみなぎる……!」
ガイディーンさんは見るからに生気を取り戻していた。肌艶はよくなり、むしろ病気になる前よりも元気そうなほどだった。若返ったようだ。
「お父様! そうか! 目が覚めたのか! ありがとう、ヒナタ! そしてザコッグ! キラ! ヘルダー! そしてウィンディ!」
ガイアックは感激しながら、僕たち一人一人にお礼を言って回る。
なんだか、信じられない光景だ。
「うぇ、ガイアックにお礼を言われるなんて……なんだか気色悪いぜ……」
「ほんとだ。ちょっと嘘くさい……」
みんな、散々な言いようだね……。
「っく……。お前たち、そんなに俺を恨んでいたのか……。すまなかった……!」
ガイアックがさらに深々と頭を下げる。
「そりゃあね……。でもまぁ、せいぜいこれからはちゃんと生きてくれよ……」
「だな。まだ許せないが、ほら、親父さんも目覚めたんだ……。しっかりしろよな」
でも、ザコッグさんもキラさんも、ヘルダーさんも、一応は許している……みたい……かな?
ガイアックは、目覚めたばかりのガイディーンさんに、恐る恐る近寄っていく。
「ガイアック……。これは……」
「お父様……俺がふがいないばかりに……。彼らはギルド【
「そうだったのか……。ヒナタくん……これは、君の力か……」
ガイディーンさんは、まだ自分の身に起きたことが信じられないというような顔で、僕の方を見やる。
そりゃそうだ。僕でさえ、何が起きているのか理解不能だ。
「そういうことになりますね……。ガイディーンさんには僕もお世話になりました。元気になってよかったです」
「ヒナタくん……。なにからなにまですまない。バカ息子があれだけ迷惑をかけたというのに……。君は本当に……いや、なんでもない。とにかくありがとう。全力で感謝するよ」
「いえいえ、ガイアックとのことは、関係ないですから。僕はガイディーンさんのためにやったまでですよ」
それにしても、ガイディーンさん……この一瞬で、ここまではきはきと喋れるまでに回復するなんて……。どういうことだ!?
【
「では、僕たちはこれで……。あ、今回のことはくれぐれも内密に……。いろいろと面倒なことになりかねませんからね……」
「あ、ああ……もちろんだ。それよりも……また改めてお礼がしたい。そのうちギルドにお邪魔するよ。構わないか?」
「ええ。ぜひいらっしゃってください。ガイディーンさんならみなさん歓迎します」
お礼なんていいのに……。でも、またガイディーンさんの容体も気になるところだしね。ぜひギルドでおもてなししよう。
「改めて……本当に今まで迷惑をかけたな……。それと……ありがとう」
ガイアックが、今にも死にそうなほど、はかなげな表情で、目元をうるませ、言った。
「はは……もう、やめてくださいよ。僕とあなたは……いや、あなたは……ガイアック・シルバはそんな人間じゃないでしょ? もっと堂々としてくださいよ、ギルド長。あ、でも……くれぐれも、もう悪いことはしないように……ね」
「ああ。そうだな。誓おう。ガイアックさまに二言はないからな! がっはっは!」
僕たちは、そうして過去の因縁に終止符を打つかのように、別れた。
とはいっても、僕個人としては……もうすでにガイアックのことなんてどうでもよかったわけではあるけどね……。
問題は……スカーレット・グランヴェスカー王女……この国の王女が、戦争をしたがっているということだ。その問題については、まだ解決していない。
いまだに情勢は不安定。いつ大きな争いが起こっても不思議じゃない。
妹の病気も、ガイアックとの因縁も、無事に解決した今……本当にさしせまって考えなきゃいけないことはそれだ。
でも……本当に、国を説得できるかもしれないね。
それくらい、僕たちのギルドは大きなものになった。
【
僕は本気でそう思えてきたよ。もちろん、最初からそのつもりだけど……。
それに、この
それこそ、
そう思って、帰り道、僕はなにげなくペンダントに触れる。
すると――。
「あ……」
僕はさっき、鑑定で確認した説明文を思い出す。
――ただし、このペンダントは時間経過により破壊され、二度と使用は不可能となる。
――バラバラバラバラ……。
僕の浅はかな作戦への夢想と共に……。
「あれれ……」
「壊れちゃった……っスね……」
「ど、どうしよう……?」
「だ、大丈夫っスよ! 先輩ならまたなんとかできるっス!」
「えぇ……!? そうかなぁ……。ちょっとこれは……うーん……」
僕は、大変な事態になったなぁとしか思えないのだった。
いったいこれから、
こんど同じ病気の人が現れたら……今度こそ詰みだ。
だけど僕は必ず救ってみせる!
と、誓ってみるのだけど……。どうしたものかな……。
◆
【三人称視点】side:???
「あれは……黒龍のレア素材……」
物陰に隠れながら、なにやら情報を探っている様子だ。
「やはり……早めに始末しておくべきか……」
身体は黒いローブに包まれており、その正体は誰にもわからない。
「これは報告の必要があるな……」
そして、一人そうつぶやくと、ヒナタたちとは反対の方向に、姿をくらました。
◆
一命をとり遂げ、みごと復活したガイディーン。
本心ではわからないが、表面上は改心したように見えるガイアック。
そして、ペンダントを失ってしまったヒナタ……!
だが、彼らはまだ気づかない……。
ヒナタの真の才能が、まだまだこれだけではないということを……!
そして、ヒナタを追う謎の人物の正体とは!
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