第100話 みんなとの再会


僕たちは数日間、観光を満喫した。

ヒナギクをいろんなところに連れ出せて、ほんとうによかったよ。

いよいよ医術大学への登校が近づいてきて、緊張してきたなぁ。

そろそろみんなのことも恋しいし……。

上手くやっていけるだろうか……。


「ヒナタさま。お客様がいらしています」


「ありがとうリノン。誰だろう……」


「ヒナタさまの婚約者だと申されております」


……ってことは……シスターマリアだな。

まだこの街にいたんだね。

てっきり、お祈りが終わったからもう帰ったのかと思ったけど……。

そう思って玄関までいくと、そこにいたのはシスターマリアではなく――。


「こんにちはヒナタくん!」


「ら、ライラさん!? どうしてここに!?」


「来ちゃった……」


「来ちゃった……じゃないですよ! びっくりしたー……」


「ヒナタくんにはまだ話していませんでしたが……」


「……?」


ライラさんは無言で僕の袖を引っ張る。

どこへ連れていかれるんだろうか……。

そのままどんどん街の中心部へ。

新手の人さらいかなにかかな?


「着きました」


「こ、これは……!?」


そこに建っていたのは――。


「ゆ、世界樹ユグドラシル!?」


なんと世界樹ユグドラシルと書かれたギルドだった。

たしかここは前は別の建物だったはずだけど……。

前の世界樹ユグドラシルよりも、さらに大きな建物だ。


「ど、どういうことですか!?」


僕はますますわからない……。

何が起こっているんだ!?


「私たちも王都に来ちゃいました……。前のギルドは世界樹ユグドラシルの支部ということにして、こっちに新しく建てちゃいました!」


「建てちゃいました! って、えぇ!? ずいぶん大胆ですね……。お金とか大丈夫だったんですか!?」


「ええまあ、そこは国からの補助金もありますしね。王都に移転したいと言ったら、ぜひとのことで……」


「でも、それだと王女の思うつぼなんじゃ……」


「動きやすいのはこちらも一緒です。敵を知るにはその近くに潜り込まねばなりません! こっちからもさらに動きを仕掛けましょう!」


ライラさん、ずいぶん思い切ったことをするなぁ……。

でも、久々に会えてうれしい。

これからはいつでも会えるね……!


「みなさんも一緒なんですよ! みんな、ヒナタくんに会いたがってます」


「えぇ!? ほんとですか!?」


ライラさんに案内され、新しいギルド内へ。

ポーションを作る施設には、見慣れた顔――。

ウィンディがいた。

僕のかわいい後輩だ。


「先輩、お久しぶりっス!」


「うわぁ! あえてうれしいよ!」


「医術大学に一発合格なんて、さすが先輩っス!」


「ありがとう! ウィンディも頑張ってるね!」


次はモンスター牧場だ。

以前のギルドよりもはるかに広い。

見たことのないモンスターもいっぱいだ。


「元気かいクリシャ!」


「おかげさまで、楽しくやっています。ありがとうございます、ご主人!」


久しぶりに会ったクリシャは、ちょっと背が伸びてお姉さんになっていた。

獣人の子は成長が早いみたいなんだ。


「会えてうれしいです!」


「ははっ……くすぐったいよ!」


クリシャは駆け寄ってきて、僕に飛びついた。

あまりくっつかれると、耳がもふもふしてくしゃみが出そうになる。


そして、次にやってきたのが……。

錬金術師ギルド部門だ。


「リリーさん、お久しぶりです」


「あ、ああ……ヒナタくん。ひ、久しぶりだな……」


なんだかリリーさんとは、あれ以来――僕の活性ブーストでリリーさんのようすが変になって以来――だから気まずいな……。

それにしても、相変わらずようすが変だぞ……?


「リリーさん、大丈夫ですか? 顔が真っ赤ですけど……それに、汗と、妙な震えも……。ポーション、飲みますか?」


僕はリリーさんの熱を確かめるために、その桃色の髪の毛をかきあげ、おでこにやさしく触れる。


「ひゃ!? ひゃひ!?」


「ど、どうしたんですかリリーさん! さらに真っ赤に……!?」


どうしよう……これは治療が必要かもしれない……。

すると突然、横からライラさんが僕の手をとり、制止する。


「ヒナタくん……そのくらいにしてあげてください……。まったく……相変わらずなんですから……」


「……?」


どういうことなんだろう……。

僕には女心というものはまださっぱり理解できていないようだ。


夕方近くになり、僕とライラさんは名残惜しみながらギルドを後にする。

夕焼けで赤く染まった川沿いを、のんびり散歩する。


「ライラさん、ありがとうございました。今日はみんなに久々に会えて、うれしかったです」


世界樹ユグドラシルはヒナタくんのお家みたいなものなんですからね、またいつでも寄ってください。みんなも喜びます」


「はい! ありがとうございます」


「と、いうか……ヒナタくんに会うためにわざわざ移転してきたんですけどね……」


「え、それってどういう……」


僕の為だけにギルドを王都に移転!?

まさかね……。

いくらなんでも、それは大げさすぎる。

第一、コストが釣り合わないよ。

王女に僕が上手く対抗できるようにっていう意味だろうか?


「あ、いましたわ! お兄様ー! こんなところにいたんですの!?」


「あ! ヒナドリちゃん!」


僕が急に家を出てどこかに行ったもんだから、探しに来たのかな。

心配をかけちゃったね……。


「あ、ライラさんも一緒でしたの……。でも、どうしてここに?」


「それが、ギルドごとこっちに引っ越してきたんだって」


「まあ! ライラさん、本気ですのね……」


「……? 本気?」


なんのことだろう?

本気で国一番のギルドを目指すつもり……とかってことかな?


「そうです! 私は本気ですよ! だから、ヒナドリちゃん、いろいろとよろしくね?」


「はいですわ! 私もライラさんを応援しますわ! まあ、お兄様の鈍感さではなかなか一筋縄ではいかないみたいですが……」


「……?」


なんだか、2人は僕のことを話しているようだけど……?

僕が鈍感だなんて、失礼だなぁ。


「さ、日が暮れますわ。お家に帰りましょう。ライラさんも、ぜひお夕飯をいっしょに!」


「まあ! いいんですか! ありがとうございます、ヒナドリちゃん!」


なんだか、2人は仲良しさんみたいだね。

いいことだ! よかった!


「ライラさんとご飯か……うれしいな!」


「ヒナタくんも嬉しいですか!? 私も、ヒナタくんと久しぶりにご飯が食べれてとっても嬉しいですよ!」


僕たちは家に帰って、みんなで楽しくご飯を食べた。

こんな日々がずっと続くといいなぁ……。

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