第50話 世界樹の精鋭達
あれから月があけ――。
国からの補助のおかげで、あっという間に済んでしまったよ。
金銭面でももちろんだし、魔術大工の職人さんたちもたくさん
「こう見ると、ずいぶんおっきいっスねぇ……」
「そうだね……。以前の5倍……いや、10倍はあるよねぇ……」
僕たちはピカピカの新ギルド――【
「でも、今までとどう変わるんっスかね……?」
「ウィンディにはまだ説明してなかったかな。今までは商業ギルドでしかなかったから、品物のやり取りだけだったけど、今度からはあらゆる分野を運営することになるね」
かわいい助手の無邪気な質問に、僕は答える。
「例えば、医術ギルドや、もちろん冒険者ギルドなんかも。街全体の中心になっていくだろうね……」
「ふええ……仕事が大変そうっスねぇ……。新しく人員も増えるだろうし、人見知りしないか心配っス……」
「あはは、ウィンディならかわいいから大丈夫だよ! みんな優しいって」
「え、自分がかわいいっスか?」
「え、うん?」
「そ、そんなことをいわれたのは初めてっス……」
どうしてそんなに顔を赤らめるんだろう……。そりゃあ、もちろん僕にとっては初めてできた助手だし、素直だし……。かわいいに決まってる。
きっとウィンディは誰からも好かれるはずだよね。
そうしていると……。遠くから――。
「ヒナタさーん!! ヒナタさんも見学ですか?」
「あ、ザコッグさん!」
なぜザコッグさんがここにいるのか。それはもちろん僕たちへのお祝いのためなんかじゃない。
【
そこの最高責任者が彼――ザコッグさんなのだ。
もともとの縁もあって、ザコッグさんの医術ギルドは【
やっぱり、医術のことは人の命を預かるから、信用の置ける人にやってもらえると助かるね。ガイアックなんかじゃなくてよかったよ。
「それにしても……。ギルドが大きくなってよかったですよ。感慨深いものがありますねぇ……」
「そうですね。僕もまさかここまで早く出世できるとは思ってませんでしたよ……」
僕もご多分にもれず、【総合ポーション管理・研究部】の局長という肩書をもらった。
お給料も上がるし、ヒナギクやヒナドリちゃんのためにも、本当によかったって思うよ。
「ライラさんも、喜んでいるでしょう? やっぱり」
ふいに、ザコッグさんが僕に質問する。
「ええ、まあ。そうですね。でも僕はそれ以上に、ライラさんへの心配が勝ってしまいます」
「どうしてですか? ライラさんなら大丈夫でしょう?」
「ああ見えて、ライラさんは弱い部分もありますからねぇ。一人で抱え込んでしまっていないか心配で。ギルド長というのは大変なものでしょう? それが、さらに大勢をまとめるとなると……」
「なんだ、そんなことですか。ヒナタさんはあいかわらずお優しいですね」
「え?」
「ヒナタさんがついているんですからライラさんは大丈夫ですよ! 自信をもって!」
「ザコッグさん……ありがとうございます。」
そう言われるとなんだかやれる気がしてきた! 僕がしっかりしてライラさんを支えればいいんだよね!
「そういえば……そのライラさんはどちらに?」
「えっと……なんでも、新しい部門の担当者さんたちと面会があるとかで……」
僕も詳しいことはまだわかっていないけど、どうやらかなりの部門が増えるらしい。
総合ギルドには条件があるみたいだ。
その1、冒険者ギルドとしての役割をそなえていること。
その2、複数の部門のギルドから成り立っていること。
その3、その街で
これらを満たすことで、その街の『
「新しい部門? 商業部と医術部以外には、どんな部があるんです?」
「僕が聞いた中だと……冒険者ギルドはもちろん、錬金術師ギルド、
「それは楽しみですねぇ。ヒナタさんもわくわくするんじゃないですか?」
「え? それはどういう?」
「だって、ヒナタさん、勇者さんから誘われたんですよね? だったら、冒険者登録とかするんじゃないんですか? それに、ヒナタさんなら錬金術だって……」
ちょ、ちょっと待ってほしい……。
どうしてザコッグさんはそんな飛躍したことを言うのだろうか。
僕が冒険者登録? たしかに、勇者さんとの出会いで魔法も使えるようにはなったけど……。でもそんなこと、考えもしなかったなぁ……。
だけど、この機会に新しいことにチャレンジしてみるのも悪くはないのかもしれないなぁ。
なんてことを考えながら、僕は新たなる出会いと発展に――
――胸を躍らせるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます