第11話 ギルド長は脅迫する【side:ガイアック】


 とりあえずポーションの素材はそろった。


 少々イタイ出費だったがな……。


 だがそれも、患者を救うためと思えば仕方がないだろう。


「それにしても、このクズ素材の山をどうするかだな……」


 新しくまともな素材を買いなおしたとはいえ、倉庫にはまだ大量のゴミが余ってしまっている。


 なんとかこれを有効活用したいところだが……。


「俺にいい考えがある。ザコッグを呼べ」


「はい」


 キラに命令をし、なじみの医師を呼び出す。


 ザコッグは医師というより、俺の舎弟しゃていのような男だ。


 今は別の医術師ギルドで、ギルド長をしている。


 まあ俺のギルドにはてんで敵わないがな!


 ガッハッハ。


「なんでしょう……ガイアックさん……?」


「おう、よく来たな、ザコッグ。久しぶりじゃないか」


 ザコッグはおびえたようすで、イスにこしかける。


 そんなにおびえなくてもいいのにな。


 まあ、小さいころから殴ったりしてたからなぁ……。


 それもこれも、コイツが弱いのが悪いのだが。


「今日お前を呼んだのは、他でもない。お前にプレゼントがあるのだ」


「は、はぁ……プレゼント、ですか」


「そうだ、よろこべ。俺がプレゼントをやるなど相当だぞ?」


「そ、そうですね。初めてのことです」


「お前のギルドは金がないから、ポーションの素材にも困ってるだろう?」


「ええまあ、なんとか、ギリギリでやっています」


「うちでポーションの素材が余っているんだ。格安で譲ってやろう」


「ホントですか!? それはありがたいです」


 はっはっは。


 ザコッグめ、まんまと食いつきおった。


 俺の策略はやっぱり完ぺきだ。


「薬草6000個を、60000Gでどうだ?」


「え、そんなに安くていいんですか?」


「ああ、いいとも! 俺とお前の仲じゃないか」


「ガイアックさん……! 怖い人だと思っていたけど……ホントにありがとうございます!」


「あ? お前今悪口言わなかったか?」


「い、いえ……そんな! 気のせいですよ」

「そうか」


 俺はさっさと商談をすすめ、相手の気が変わらないうちに、サインをさせた。


 これでもうこっちのもんだ。


 あとから何を言われても、文句を言われる筋合いはない。


「じゃあ、あとでお前のギルドに送るよ」


「はい、よろしくお願いします」


 ザコッグは、うきうきした足取りで帰っていった。


 自分が騙されているとも知らずにな!


 バカな男だ。





 翌日、ザコッグが血相を変えてギルドの門を叩いた。


 やっぱりな……。


 だがムダだ!


 俺は完全に理論武装しているッ!


「ちょっと! ガイアックさん! どういうことですか!」


「ん? どうかしたか? ザコッグ」


「いただいたポーションの素材、全部ランク(F)のゴミじゃないですか!」


「だからどうしたというのだ? 契約書には、一切の文句は受け付けない・・・・・・・・・・・・と書いてあるが?」


「そんな……! あんた、初めからわかっていて俺を騙したわけか!」


「騙したとは人聞きが悪いなぁ。商品の状態をあらかじめ確認しなかったお前が悪いのでは?」


「う! たしかに……。でもそんなのあんまりですよ!」


「は? 自分のミスを俺に押し付けるのか?」


「自分のミスを俺に押し付けたのは、ガイアックさん、アナタじゃないか!」


「ふん、知らんな。自分の無能っぷりを悔いるがいい」


「そんな! これじゃあうちのギルドは潰れてしまう……!」


「そうか。おかげで俺のギルドは安泰だ。よかったよかった」


 俺はそのまま暴れるザコッグを追い出し、ギルドの門にカギをかけた。


 まだ門の前でなにやら言っているが、まあそのうち帰るだろう。


 正直、あんなヤツの弱小ギルド、どうなったところで構いやしない。


 俺としては競合ギルドが減って、いいことずくめだ。


 さすが、ガイアックさんは天才だぜ!





 ガイアックの策略により、窮地に立たされたザコッグ。


 しかしそんな彼を、ヒナタが救うことになろうとは……!

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