第12話 クズ素材の山【side:ザコッグ】
「はあ……困ったなぁ……」
俺はガイアックから押し付けられた、大量のクズ素材の山を前に、うなだれる。
薬草(F)6000個を、60000Gかぁ……。
自分でも、呆れるほどぼったくられたものだな。
まさかランク(F)を売りつけられるとは……。
「くそ! あのガイアックのヤロウ! 許せねぇっスよ!」
他のギルドメンバーたちも、ガイアックへの怒りをあらわにする。
俺の不注意のせいで、こうなったというのに……。
それでも俺のことなんか恨み言一つ言いもせずに、
なんていいヤツらなんだッ……!
そして、だからこそ……!
俺はこのギルドを守らなくてはならないッ!
ギルド長として!
「なんとかならないかな……?」
「俺、近隣の商業ギルドにも、相談してみるっス!」
「ありがとう! 頼むよ」
俺たちは手分けして、なんとかこのクズ素材の山を処分できないか、考えた。
それはもう……
◇
「ザコッグさん! 一つ、協力してくれるかもしれないギルドが!」
「なに!? 本当か?」
まさか……!?
クズ素材の山をどうにかしてくれるのか?
いや、そんなうまい話はないだろうが……。
それでも、
「ライラさんという方が、最近立ち上げた商業ギルドで、
「いや、知らないな……。だがそんなことはどうでもいい! 今は誰だろうと構わない! 無名のギルドだろうと、助けてくれるのなら、神にも等しい存在だ」
「ですね! さっそく、会談をとりつけます」
「そうしてくれ」
◇
「こんにちは、
やってきたのは、ギルド長ではなく、ポーション師の青年だ。
ずいぶんと若い印象を受ける。
だが、見た目もキレイで、物腰も柔らか。
絵にかいたような好青年といった感じだ。
「
「いえ、困ったときは、お互い様ですから」
若いのに、礼儀正しく、しっかりとした人だ。
一人でやってきたということは、ギルド長からの信頼も厚いのだろう。
「実は……薬草(F)が6000個ほど、余ってしまって……。うちのギルドは倒産の危機なんです」
「そうですか……それは大変ですねぇ」
「正直、これを解決してもらえるなら……なにをしたっていいくらいで……。もうほとほと困り果てているのですよ」
「でしたら……」
と、ヒナタと名乗ったその若いポーション師は、口を開く。
俺にはその後、彼が放った言葉が、どうしても信じられなかった。
だって……そんなこと、
「でしたら…………うちで、買い取りますよ」
「は……?」
??????????
俺には本当に意味が分からなかった。
なんで?
どういうことだ?
「ですから、その薬草(F)が6000個をうちで買い取ります」
「え?」
「そうですねぇ……30000Gでいかがです?」
「は、はい……」
「では、そういうことで。僕はこれで……」
「ちょ、ちょちょちょちょっと待って!」
「はい?」
「いいいいいいいんですか!?」
「なにがですか?」
「だって、薬草(F)ですよ? 使いものにならないんですよ!?」
「ええ、まあ……」
「そんな……うそだろ……。あんたは神様か!?」
「あはは……まあ、うちでなんとか活用しますよ」
「そんなことができるのか!?
まさかそんなすごいギルドが、まだ無名のままなんてな。
俺は、歴史の一片をかいまみているのかもしれない。
「詳しくは企業秘密ですけど、僕のスキルでね……」
「あんたは神様か!?」
たたずまいからして、ただのポーション師じゃないとは思っていたが……。
まさかこんな若者が、そんなすごいスキルを持っているなんて!
「ほ、本当にいいんですか!?」
「だから、そう言ってるじゃないですか」
「あああ……! あんたは本当に命の恩人だ!」
「大げさですよ」
「困ったことがあったら、この俺、ザコッグを頼ってくれ!」
「ええ、そうします」
「きっとだぞ!」
俺としては
きっとまだまだやることがあるのだろうな!
彼ほどのポーション師だ!
ポーション師ヒナタ……。
俺はその名を、一生胸に刻むことにした。
彼と彼のギルドには、頭が上がらないな……。
◆
こうしてヒナタはまた一人の人間を救った。
ヒナタ自身はそのことをそれほど理解していないが、これはザコッグにとっては、忘れられない出来事となる。
こうした人の輪が、まわりまわって、自分自身を救うことになるのだ……。
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