第24話 頑張りすぎた結果


 今日からは通常のポーション作りはウィンディに任せて、僕は研究に時間を割いてもいいということになった。


 ライラさんには感謝してもしきれないな。


 それに応えるためにも、頑張らなきゃ!



 妹のために、幻の万能薬エリクサーを完成させてみせるんだ!



 ――僕はその日から、倉庫の片隅に作った研究所にこもりきりになった。





【side:ライラ】


 新しく雇ったウィンディさん、頑張ってくれているみたいですね。


 これでヒナタくんの助けになればいいですが……。


 今日は少し早めにギルドへ行くとしますか。


 私もヒナタくんに負けていられません。


「おや……?」


 私がギルドへ着くと、倉庫から明かりが漏れているのがわかりました。


「ヒナタくん……?」


 恐る恐る、倉庫の扉を開けて中を確認すると、そこには一人頑張り続けるヒナタくんの姿がありました。


 まさか……!


 昨日から帰っていない!?


 それどころか、いや、何日も?


「ヒナタくん……!」


「あ、ライラさん。こんばんは」


「今は朝ですよ! 大丈夫ですか!?」


「ええ、おかげさまで」


 そう言って振り返った彼の目には、クマができ、頬もやつれています。


 どうしてこんなになるまで……!


 きっと私のせいです。


 私が助手を雇って、ヒナタくんを研究に没頭させたから……。


 彼が無理をしすぎる可能性を考えていませんでした!


 優しすぎるヒナタくんは、妹さんのために、ここまで頑張ってしまう人だということを、失念していました。


「もう、休んだ方がいいですよ!」


「大丈夫ですよ。これを飲んでいるので」


「それは……?」


「徹夜ポーションです。これを飲むと疲れを感じずに作業できるんです。自分用に調合しました。健康面での保証はできないので、売り物にはできませんが……」


「そういう問題じゃないですよ! 健康面で保証できないのならヒナタくんも危ないじゃないですか! 休んでください!」


「これが済んだら休みますから……。もう少しやらせてください」


「それが済んだら休むんですよ? 約束ですからね?」


「はい」


 真剣な表情のヒナタくんに説得され、私はとりあえず倉庫を後にしました。


 本人は大丈夫だと言っていましたが、やはり心配です。


 それに、私も責任を感じずにはいられません。


 もし彼に何かあれば、それは私の監督不行き届きということになります。


 でも――


 だけど――


 あんなに一生懸命なヒナタくんを、無理やり止めさせることなんて……!





【side:ヒナタ】


 ライラさんには申し訳ないことをしたなぁ。


 心配してもらってありがたい。


 だけれど、今いいところなんだ。


 何かが掴めそうな気がする。


 気がつけばもう昼だ。


 倉庫の中もいろんな従業員であふれかえっている。


「オイオイオイ、大丈夫かよ?」


「働き過ぎだわ、アイツ」


「大したものですね」


 そんな声が聞こえてくる。


 でも僕は一心不乱にポーションと向き合い続けた。


「さすがに疲れたな……」


 だけど、徹夜ポーションを飲めばまだ頑張れるはずだ。


 徹夜ポーション――滋養強壮じようきょうそう効果、眠気覚まし効果、体力回復効果、それら様々な効果が合わさって、最高のパフォーマンスを発揮できる!


 ――ごくごくごくごく。


「あれ……?」


 なんでだろう、今、5杯目の徹夜ポーションを口にしたはずなのに……。


 なんだか目の前がかすむ。


 真っ暗になる。



 ――そして僕の意識は深い暗闇へと落ちていった。



「キャーーーー!! ヒナタ先輩!? しっかりするっス!」


「どうしたの!? ヒナタくん!?」





 過労の末、倒れてしまったヒナタ。


 だがこのことがきっかけで、とんでもないチカラに覚醒することになろうとは……!

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