第5話 ギルド長の勘違い【side:ガイアック】


「今日からは自分たちでポーションを混ぜる必要がある」


 俺は朝礼で、みんなに命令をするッ!


 士気を高めてやるのも、リーダーの立派な仕事だ。


「まあ……とはいっても、ただ混ぜるだけだけどな! あののろまなポーション師でも一人でできたんだ。お前たちにできないはずはないよな?」


「もちろんですギルド長! 自分たちも大学のころに、授業でやりましたから!」


「そうだろうな! ポーション師をクビにしたおかげで、経費も浮いたからな。今月は給料日を楽しみにしておけ!」


「うおおおおおおおおお!! さっすがギルド長です。話がわかる上司だ!」


 ようし、俺の狙い通り、みんなやる気になったようだな。


 とくにキラとかいう新人医師は、反応がいい。


 のろまなヤツだが、ムードメーカーとしてはなかなかだな。


「でも、ギルド長。彼の給料はかなり少なかったと思うのですが……?」


「ああそうだ。だが心配する必要はないぞ? アイツの給料は本当より安くわたしていたからな。実際はもっと金が浮いていたのだ。それを今までは親父の目があったから、お前らにわたせてなかったが……今月からは俺の自由だ!」


「うおおおおおおおおお!! すげえ!」


「さっそく倉庫にいくぞ!」


「はい!」


 倉庫の扉を見ると、ヤツのことを思い出して腹が立つ。


 いまいましい扉だ。


「あの……ギルド長?」


「……なんだ?」


「倉庫に入らないのですか……?」


「は? 俺に開けろと言っているのか?」


「す、すみません……! 自分が開けます!」


「……っち。クズめ」


 気の利かないやつだ。


 俺が扉の開け方なんぞ覚えるとでも思っているのか?


 そんなことに使う脳の容量はない。


 俺の頭はもっと複雑な、魔術医療のことでいっぱいなのだ。


「おいなんだこれ! 素材がどれもこれもくずばっかだ。しけってて使い物にならないぞ!?」


「あっれぇおかしいな」


 俺たちは倉庫に入って、素材を手に取ってびっくりした。


 ヒナタめ……。


 あのクソポーション師、管理をサボってやがったな!?


 俺たちが倉庫に入らないのをいいことに……!


「やっぱりクビにして正解だったな……。無能め」


「腹立たしいですね」


「ああ」


 いくら混ぜるだけといっても、こんな素材じゃどうにもならない。


 全部捨てるしかないな……。


 はぁ、大切な素材が……大量に無駄になったな。


損害賠償そんがいばいしょう請求せいきゅうしたいところだぜ!


「とりあえず今日は作り置きのポーションを使うしかないな」


「ですね」


 一応、倉庫の中には、完成品のポーションが残っていた。


 これはまだ使えそうだな。


 だが無くなるのも時間の問題だ。


「おい、レナ」


「はいギルド長」


 俺はレナを呼びつける。


 こいつに命令しておけば間違いない。


 愛想のない、マニュアル人間だが……。


 そのぶんやることは正確だ。


「新しく素材を発注しておいてくれ、大量・・にな……」


「わかりました」





 彼はまだ知らない……。


 自分が盛大な、かんちがい・・・・・をしていることを……。


 そしてそれによって、とんでもないことになることを。


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