第4話 商業ギルドへようこそ


「ようこそ! 【世界樹ユグドラシル】へ!」


 ライラさんに連れられて、商業ギルドへやってきたよ。


 みんな僕を笑顔で歓迎してくれた。


「ヒナタくんはすごいポーション師なんですよ。子爵さまを救って、ギルドにコネを与えてくれた英雄に乾杯!」


「すごい新人が入って来たな! 頼もしいな」


 みんなで歓迎会をしてくれた。


 こんな扱いは初めてだな。


 食事のあと――。


「キレイな建物ですね」


「ええ、新しいギルドだから、まだ新品ですよ」


 ライラさんはギルド内を案内してくれた。


 忙しいはずなのに、ありがたいね。


「そしてここが、うちの商品倉庫です!」


「うわすごい! 見たことない素材も沢山ありますねぇ!」


 これだけの素材で、自由にポーションの研究ができたらいいだろうなぁ。


 もしそうできたら、妹の病気も治すことができるかもしれないね!


 原因不明の未知の病気だから、沢山の研究が必要だ。


 そのためにも……まずはここでがんばらなきゃ!


「一応、できたばかりとはいえ、商業ギルドですからね。品揃えが命です」


「そうなんですね」


「ヒナタくんには仕入れをやってもらいたいので、よーく見ておいてくださいね」


「は、はい!」


 ふと端っこのほうを見ると、灰色の物体が山になって積まれていた。


 ゴミ……のような気もするけど。


 ゴミは倉庫に置いておかないよね……?


「おや? あっちの方にかためて置いてあるのはなんですか……?」


「ああ、それですか? それは……粗悪品置き場です。もう捨ててしまうような、質の悪い素材なんかを、置いてあるだけですが……」


「もったいないですね。僕がスキルで使えるようにしていいですか?」


「へ? これを……ですか?」


「ダメですか……?」


「いえ……でも、これは本当に状態が悪いですよ? 使い物になるかどうか……」


「やってみますね」


 まずは……。



 ――【素材マテリアル鑑定アプリ―ザル



 結果は、全部(G)の状態だ。


 (F)よりさらに下の、劣悪な状態。


 どんな悪徳商人でも、さすがに売り物にはしないレベルだ。


「やっぱり……。ダメみたいですね……?」


「いや……そんなことはないですよ!」



 ――【素材活性マテリアルブースト



 僕のユニークスキル、素材活性で(G)の素材が(E)に変化する!


「よし!」


「すごいです! 素材が完全に生き返りましたよ!?」


「まあもとが粗悪品だから、最低限使えるかなってレベルですが……」


「それでも助かります! 捨てるものが少しでも利益になるなんて!」


「お役に立てたようならよかったです!」


「やっぱり、ヒナタくんを雇って正解でしたね」


「これだけではないですよ……?」


「え……?」


「こっちの素材も使っていいですか?」


「へ? ま、まあ……」



 ――【薬品調合ポーションクリエイト



 今回はさっきの元クズ素材――薬草(E)を使うよ。


 もう一個は別のところにあったスライムコア(D)を使う。


 できたのは下級回復ポーション(D)だ。


「すごい! 薬草(G)の素材から、下級回復ポーション(D)になりましたね!」


「ええ、完成品のランクは……素材のレアな方と同じランクになる、という法則があるんです」


「つまり、薬草とスライムコアだったら……スライムコアのほうと同じ質になる、というわけですね……!」


「そうです。ちょっとした、裏技……というかコツ、みたいなものですかね」


「さすがです! 素材の扱いにムダがないですね」


「うちは貧乏ですからね、こういう知恵ばっか身についてしまって……」


「それも立派なスキルですよ!」


「ですかねー」


 しばらく話していると、ライラさんが、するどい質問をしてきた。


「その……素材活性マテリアルブーストで品質アップした素材を、そのまま転売すれば、莫大な利益になるんじゃないですか……?」


「え?」


「あ、いやその……私自身がそれで荒稼ぎしたい、だとかではなくてですね。えっと……そのスキルを活用すれば、こんなギルドなんかに所属しなくても、生きていけるのではないかと、邪推じゃすいしまして」


「ああ、そういうことですか。素材活性マテリアルブーストで活性化させた素材は、すぐに薬品調合ポーションクリエイトでポーション化しないと、もとに戻ってしまうんですよ。あくまで活性化にすぎないですからね。


 それに、ポーションは薬草だけではできませんからね。スライムコアを手に入れるには、スライムを倒す必要がありますから。僕には戦うことはできないので……」


「なるほど、そういう仕組みなんですね。まさにヒナタくん専用スキルですね」


「ええ、まあ。そういうわけで、僕にはポーションを作ることくらいしか、出来ることがないんですよ、ホントに。そんなんだから追い出されちゃったんですけど……」


「そんなことないですよ! 私は素晴らしいスキルだと思います」


「あ、ありがとうございます」


 そんなこんなで、あっという間に日は暮れて。


 夜にも歓迎会が開かれた。


 まあみんな、飲む口実が欲しいんだろうね。


 ライラさんが今日のことをみんなに話すと、一気に盛り上がった!


 さっそくみんなの信頼を得られたようだね。


 安心してやっていけそうだ。


「新人がすごいことをやってのけたな! うちのギルドは安泰だ」


「おいおい、今月の利益はどうなっちまうんだよ!」


「だれかヒナタにビール持ってこい!」


 僕はお酒は飲まないんだけどな……。


 それでも歓迎の気持ちは嬉しいね。





 僕は家に帰って、妹たちに今日のことを話した。


 いろいろあったからね……。


 ちゃんと話しておいて、安心してもらいたい。


「……と、いうことがあったんだ」


「すごいです、なの。兄さん!」


「さすがですわ、お兄様」


「貴族の人を助けるなんてすごすぎる、なの」


「子爵さまのお礼のお金で、しばらくいいお薬が買えそうですわ」


 よかった。


 二人とも元気そうだ。


 僕のことで心配させてしまったからね。


 とくにヒナドリちゃんには頼りっぱなしだ。


 ヒナギクにはせめて心は元気でいてもらいたい。


 心の元気は身体の健康にもつながるからね!


 はやくヒナギクが元気になるように、もっとがんばらなきゃな。





 新たな場所で、新たなスタートを切ったヒナタ。


 一方でガイアックは……新しい環境に、頭を悩ませるのであった。

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