第65話 ガイアックの行方【side:ガイアック】


俺はギルドを抜けて、新しい居場所を探した。


「おう、お前のギルドに入れてくれよ」


まず俺が向かったのは、昔なじみの他のギルド長仲間の元。


同じギルド長の家系として、仲良くやってきたからな。


俺は金もなくなったが、ピンチの時には頼れるやつらだ。


――そう思っていた……。


「おいおい、ガイアック……。勘弁してくれよ」


「は?」


「お前はもうギルド長でもないし、金だって底を突いた。それに、悪評も酷いぞ……。お前のとこの新しいギルド長。グラインド・ダッカーだっけ? あいつがいろいろ吹聴しているそうだ」


「なんだって!?」


どおりで街を歩くと、白い目で見られるわけだ。


「それに、お前が爆発テロの夜にしたことは、もうすでにかなりの人間に広まっている。お前を雇うところなんかありゃしないさ。悪いことは言わねぇ。街を出たらどうだ……?」


「クソ……。頼りがいの無い奴め……」


「あ、おい! っち……相変わらずのヤツだな……」


俺はそれでもあてどなく仕事を探し続けた。


だって働かなくちゃいけないからな……。


俺にはもう金がない。


途中、街を歩いているといろんな目にあった。


「おい! 爆発テロの首謀者め! 死に晒せ!」


「うわ! いってぇ! 違う! 俺は首謀者なんかじゃない!」


抗議するも、街の人々の態度は変わらない。


俺は歩くたびに石を投げつけられた……。


「クソ……これは表通りを歩けないな」


仕方なく裏通りを歩いて、街を移動する。


「ん? 医師募集の張り紙だと……?」


ふと、裏路地に張ってあった紙に目が行く。


これは……俺はやはりついているのかもしれんな……!


こんなにちょうどいいところに、都合よく医師募集の張り紙があるなんて!


もうまともなギルドへの就職はなかばあきらめていたが……。


これはどこのギルドかはしらんが、俺を呼んでいるに違いない!


念のため俺は、ギルドの名前を確認する。


――【世界樹の精鋭達ユグドラシルグレート】……。


「なんだか聞いたことがあるような名前だな……。まあいいか」


俺はすぐに路地を抜け、そのギルドを目指した。





「うう……面接か……緊張するな……」


俺は今まで産まれてから、面接など受けたことがない。


だって、面接する側だったからな。


だが神が俺にここで輝けと囁いているのだ。


俺が落ちる訳はない。


俺は自信満々で、面接室の扉を開け――。


「し、失礼します……っ……って……おいおいおい!」


なんと、そこにいたのは……。


ザコッグと……キラ……!?


なぜこんなところにこいつらが!?


「おいおい、誰かと思ったら……ガイアックじゃないか……!」


ザコッグが嬉しそうに目を丸くする。


そうか、確かこいつは俺にあこがれていたんだったな。


じゃあ俺の合格は確実じゃないか……!


「ザコッグ、キラ……なぜお前たちがこんなギルドで面接官をしているのかは知らんが……。まさか俺を落とすわけはないよなぁ……?」


キラにしても、ザコッグにしても、俺への恩義は感じているはずだ。


俺は今までこいつらをさんざん助けてやってからな。


「は? なにをいってるんだ?」


「さぁ?」


ザコッグとキラは互いに顔を見合わせる。


どうやらこいつらは状況がわかっていないようだな……。


仕方がない……。教えてやるか。


「おい、キラ。この前俺を裏切ったことは水に流してやる。だから俺を雇え!」


「はい?」


なぜそこでコイツらは首を傾げるのだ!


「おい! ザコッグ! 俺を雇え!」


「うーん……」


クソ……話にならない。


「もういい! ギルド長を出せ! 直接交渉してやる!」


「はぁ……もういいよガイアック……。おい、キラ。警備員を呼んでくれ」


「はい、ザコッグさん」


おいおい、なぜザコッグがキラに命令してやがる!


キラ、お前の上司は俺だけだろうぅ!!!!??


くそ……あんなに……ずっと……一緒だったのに……!


「や! め! ろ! は! な! せ!」


俺を警備員が取り囲む。


クソ……なんて対応のギルドだ……。


もう俺の居場所はどこにもないのか……?


俺は無様な気持ちで、ギルドを追い出される。


「なんということだ……」





「クソ……ただいま……」


俺は家に帰りつく。


家といっても、以前の住居は差し押さえられ、今では平民の住むような木造の民家だ。


「おう……ガイアックか……お帰り……」


親父……ガイディーンがしわがれた声で返事をする。


親父はもう、あれからどんどん弱っていって……今ではベッドで寝て一日を過ごしている。


あんなことがあったから……爆発テロのせいで……。


俺は今でも隣国のテロリストたちを許せない。いつか復讐してやる!


「親父……ちゃんと食べないといけないじゃないか……」


親父はすっかり衰弱し、栄養もなくなってストレスで老け込んだ。


こうなっちまったらあっという間だ……。


それまでに俺がなんとかしないと……!


「クソ……すまねえ……俺は今日も仕事を見つけられなかった……」


いったいなんでこんなことに?


俺はみじめだ……。


俺はなにも悪くないのに……。


すべてポーション師とテロリストのせいだ。


そしてあの監視役のせいだ……。


俺は何を恨めばいいんだ?


どこに怒りをぶつければいい?



そして――。




――どうすればいいのだ!





ついに動き出したガイアック。


そしてここから彼はどこに向かうのか――。


そしてガイディーンの病はどうなるのだろうか!

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