第14話 孤児院に寄付をしよう
ある日僕がギルドへ向かう途中、道ばたに倒れている人を見かけた。
ボロボロな服を着てるけど、どうしたんだろう?
服装を見るに、どうやらシスターさんみたいだね。
「あの……大丈夫ですか!?」
「う……」
身体を揺さぶってみるが、返事はない。
病院に連れて行かなきゃ!
ここから近くなら……。
以前僕が勤めていた、医術ギルドが近くにある。
でも、おそらくギルド長は彼女を助けてはくれないだろうね。
服が汚れているし、みるからにお金もない。
僕だってそこまでのお金はだせないし……。
それに、ガイアックギルド長の手を借りるのは、僕としてもしゃくだ。
なら、
倉庫には多種多様なポーションがそろっているし……。
この程度なら僕のポーションで治るだろう。
◇
【side:シスターマリア】
「う……ここは……?」
私は永い眠りから目を覚ました。
目がまだ明かりに慣れなくてまぶしい。
たしか……医術ギルドに助けを求めに行って……それから……?
えっと……よく思い出せない。
「あ、目覚めましたか……?」
声のしたほうを見ると、一人の青年が立っていた。
年は若いが、しっかりしたたたずまいの、見るからに優しそうな人物です。
きっと彼がわたくしをベッドまで運んでくれたのでしょう。
「えっと、ここは……?」
「ここは商業ギルド、
「ヒナタさん、ですか。どうやら介抱していただいたみたいで。ありがとうございます」
「いえいえ、軽い打撲でしたので、上級回復ポーションで一発でしたよ!」
「じょ……上級回復ポーション!? そんな高価なものを!? いったいどうやってお返しをすれば……」
「そんな! お返しなんていらないですよ! 僕が勝手にしたことですし……」
ああ神様……。
彼はなんと素晴らしい人物なのでしょうか。
見ず知らずのわたくしを救っておきながら、一切の見返りを求めないなんて!
きっと神様がつかわしてくださった天使に違いありません!
「ヒナタさま! わたくしをめとっていただけますか!?」
「はい!?」
「ですから、わたくしと結婚を!」
「なんでそうなるんですか!?」
「わたくしにはそのくらいしかお返しできる方法が思いつきません……。大丈夫です。わたくしこう見えて、キレイに着飾ればそこそこの見栄えになりますよ?」
「た、たしかに、シスターさんはお綺麗な方だとは思いますが……! そういうことではなくてですね!」
どうしたのでしょうか……。
きっと照れていらっしゃるのね。
まあそれも時間の問題です。
いずれ振り向かせてみせますわ!
「あの……シスターさん。頭を打ったせいで、ちょっと気が動転しているのでは? まだゆっくり休んだほうがいいですよ」
「む、失礼な。わたくしは正常ですよ? それに、シスターさんではなく、シスターマリアです」
「し、シスターマリア。まだ安静にしておいてください。いちおう病人なんですから」
「まあたしかにそうですね。ヒナタさまのおっしゃることも一理あります。ちょっと急ぎすぎたかもしれませんね……」
「そうですよ、目を覚ましていきなり求婚なんて、普通じゃありませんよ……」
「そうでしょうか? わたくしはあなたさまに命を救われたのですよ?」
「ははは……大げさですよ」
「まあ、何はともあれ、あらためてお礼を申し上げますわ」
そういえば……。
何か大切なことを忘れている気がする。
そもそもわたくしは何故、このようなことに……?
「……あ!」
「どうしたんですか!?」
「ヒナタさま、わたくし、今すぐに孤児院へ帰らねばなりません!」
「ダメですよ、まだ寝てなきゃ!」
「そうもいきません。孤児院の子供たちが、今も熱でうなされているのです。きっとわたくしの帰りを待っているに違いませんわ!」
◇
【side:ヒナタ】
「そういう事情があったんですか……」
僕はシスターマリアから、ことのあらすじを聞いた。
どうやらガイアックギルド長に、ひどい目にあわされたみたいだね。
そのへんは僕も親近感を覚えるところだ。
「でしたら、僕が力になりますよ……!」
「え? どういうことでしょうか」
「ちょうど先日、薬草(F)を6000個ほど大量に入荷したところだったんです。引き受けたはいいものの、ちょっと劣化が進んでいて、売り物にするにはどうだろう? と思っていたところなんですよ」
「はぁ……」
「ですから、
我ながら、いいアイデアだと思う。
風邪による発熱ていどなら、あまりランクの高くないポーションでも、なんとかなる。
それに、6000個もあれば、複数使用することで、かなりの病状まで対応できるはずだ。
「そ、そんな……うそでしょう?」
「え? 足りませんでしたか?」
「と、とんでもない! わたくしども、孤児院のものが、そんなにほどこしを受けてしまっていいのでしょうか!?」
「ええ、こちらとしては、受け取っていただけるとありがたいのですが」
「ヒナタさま……あなたはまさに神様のつかい……いえ、神様そのものですわ!」
「ええ!? もう、大げさですって」
「わたくしを救っていただいただけでなく、孤児までお救いいただけるなんて!」
「まあ、僕も子供たちには元気で、そして笑顔でいてもらいたいですからね」
妹のこともあるし、できればこの世から、悲しむ子供たちをなくしたい。
すべての子供たちを幸せにすることはできないだろうけど……。
せめて僕に救える範囲は、なんとか手を差し伸べたい。
「では、そういうことで。さっそく孤児院に行きましょうか!」
「ヒナタさま……! やっぱりステキです!」
「ははは……」
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