第126話


 しばらく船に乗って、ご飯を食べたり、揺られたりしていると……。

 いきなり、船全体が大きく揺れはじめた。

 ――グラ!!!!


「どうしたんですか……!?」


 僕は甲板に出て、船の乗組員さんに尋ねる。

 みんなは慌てふためていて、海の上を指さした。


「く、クラーケンだぁあああああああああ!!!!」

「クラーケン!?」

「うわあああああああああ! 俺たちはもうおしまいだ……! 船ごと飲み込まれておわりだ!」

「お、落ち着いてください……!」


 船員が指さした方を見ると、そこには超巨大なクラーケンがいた。

 海の流氷をものともせぬ勢いで、海の底から飛び出てきたのだ。

 クラーケンは久しぶりの獲物とばかりに、こちらを狙っているようすだ。


「ヒナタくん、どうする……!?」

「ユーリシアさん、ここは僕がなんとかします……!」


 僕はさっき海を割ったのと同じ要領で、クラーケンに向けて魔法を放つ。


火炎ファイア超流弾バーナー――!!!!」


 ――ゴオオオオ!!!!


 しかし、クラーケンの頭部がわずかに焼け焦げるだけで、あまり効果がないようだった。


「そんな……堅い……!」


 海の生き物だからかはわからないが、どうやらクラーケンには火属性自体があまり効果がないみたいだ。

 でも、だったらどうすれば……。


「ヒナタくん、ここは私に任せて!」

「リシェルさん!」


 そう、魔法の専門家といえばやっぱりリシェルさんだ。

 リシェルさんは、炎魔法以外にも、様々な魔法を使いこなす。

 でも――。


氷柱槍アイス・ランス――!!!!」


 ――ズドーン!!!!


 しかし、リシェルさんの魔法はあらぬ方向に飛んでいき……。

 なんと船の帆に穴を開けてしまったのだった。


「もおおお! なにやってんのリシェル!」


 ケルティさんが急いで帆に治癒魔法をかける。どうやら人以外にも使える治癒魔法もあるみたいだね。

 やっぱり、リシェルさんの魔法の命中率は正直言ってゴミだ……。


「くぅ……悔しい……。ヒナタくん、代わりにお願いできる……!?」

「もちろんです! さっき見ましたから、もうできます……!」


 僕はさっきのリシェルさんの魔法を、鑑定でコピーしておいた。

 これで僕にも同じ魔法が使える。


「うおおおおおおお! 氷柱槍アイス・ランス――!!!!」


 僕はクラーケンに向けて、魔法を放った。

 ――ズドーン!!!!


 僕の魔法は、クラーケンの頭蓋を貫き、まるでクラーケンまでの橋がかかったようになる。

 僕の手からクラーケンの頭部に伸びる、氷柱の橋。

 だが、クラーケンは頭部を貫かれたというのに、まだまだ元気そうだ。

 なんとか僕の氷槍を破壊しようと、腕を動かしている。

 そこをすかさず、ユーリシアさんが動く!


「よし……! ナイスだヒナタくん! あとはぼくに任せて!」

「ユーリシアさん……!」


 ユーリシアさんは、まるで僕の氷柱を橋のようにして、その上を駆け上っていく。

 そして、あっという間にクラーケンの頭部まで移動し、その上に、剣を突き立てた。


「えい……! これでトドメだ!」


 ――グシャアア!!!!


 クラーケンはユーリシアさんの剣によって真っ二つになった。

 そして、海の底に再び沈んでいく。


「やった!」


 ぴょんと飛んで戻ってきたユーリシアさんと、ハイタッチ。

 その光景をみて、船員たちは勝利に湧いた。


「うおおおおおおおお! さすがは勇者さんたちだ……! あのクラーケンを倒してしまうなんて……!」

「これで今後の航海も安心だな……! たのもしいぜ!」


 なんとかクラーケンは退けたけど、これからまだまだ航海は続く。

 次にいったいどんな困難が待ち受けているのだろうか。




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【あとがき】


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これも応援くださったみなさんのおかげです。ありがとうございます。


追って情報をお届けしますので、お楽しみに~!





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