第63話 ポーション部の視察
今日の僕の仕事は、ポーション部の視察だ。
今の僕は、既にギルドを管理する側だから、もうあまり直接ポーションを作るってことはしないでいいみたいなんだけど……。
それでもたまに勝手に作っちゃってる。
手持無沙汰だし、何より自分で作ったほうが早いからね。
あとは、部下たちにポーションの作り方のコツとかも教えなくちゃね!
まあ基本的にはウィンディにまかせっきりでも大丈夫なんだろうけど……。
それでもやっぱり心配だ。
「ウィンディ……? 入るよ……?」
僕はポーション部の扉を開け――。
「せ、先輩!? いいい今はだめっス!」
「へ?」
中に入ると、そこには半裸のウィンディとクリシャがいた……。
二人とも、あられもない姿になっていて……。
思わず僕は見とれてしまう――じゃなかった。
思わず僕は目をそらす。
「ご、ごめん! っていうか……何してるのさこんなところで」
「ぽ、ポーションをこぼしてしまったんス。それで、二人で洗いっこしてたんスよ……」
「そ、そうなんだ……。まあかぶれないように気を付けてね……」
ポーションの中には、肌に弱いひとには刺激が強いものもあるからね……。
ん? 肌に刺激……?
そのとき僕は急に閃いてしまった。
「ウィンディ! ちょっとここ借りるよ!」
「え、ええ!? ま、まだ服着てないっスよー!」
お肌に刺激があるポーションの成分があるっていうことは……。
その逆もあり得るんじゃないか?
その成分の逆だけを抽出できれば……。
僕はそのまま無我夢中で、ポーション研究にのめり込んだ。
「あのー先輩……? 聞こえてるっスか?」
「うん。でも待って。もうすぐなんだ」
「だめだこりゃ……」
あとちょっとで、新しいポーションが開発できる!
僕は自分の知識と閃きを、最大限フル活用する!
鑑定スキルと調合スキルを駆使して、ようやく完成したそれは――。
「できた! お肌スベスベポーションだ!」
「ね、ネーミングどうにかならないんスか……?」
ま、まあウィンディの言うことももっともだけど……。
とにかくそれよりも、これを試してもらいたい。
「ウィンディ、クリシャ。これを使ってみて!」
僕はさっそく、彼女たちに肌すべポーションを渡す。
女の子の肌は繊細で、とってもきれいだからね。
こぼしたポーションでかぶれないうちに、しっかりこれでケアしてほしい。
「おお! すごいっスよ先輩! ほんとにお肌がうるおいました!」
「ご主人すごいすごい! すべすべでうれしい!」
よかった。クリシャが飛び跳ねてよろこんでる。かわいいね。
もともと綺麗だった肌が、さらにきらめいて見える。
「じゃあ僕はこれをライラさんのところに持っていくよ。さっそく商品化の相談だ」
「あ、ちょっと待って先輩! ライラさんならもうすぐここに……って、行っちゃったっス……」
はやくライラさんにも見せたいなぁ!
――――――。
はぁ……はぁ……どこにもいない……。
まさか!? ウィンディのところに!?
僕は急いで戻る。
そしてまたポーション部の扉を開け――。
「ひ、ヒナタくん!? 今はダメです!」
「ら、ライラさん!?」
またもや三人とも、服をはだけた状態で……。
しかも今度はポーションまみれだ……。
「な、なにやってんの……」
「試しに肌すべポーションを塗っていたら……どんどん身体中に塗っていって……こういうことに……」
僕が帰ってくるってわかってるだろうに……。
こういうことは、家でやってほしい。
それとも……僕が来ることをわかっていて、やってるのか?
まさかね! そんなはずはないよね。
「と、とりあえず、みなさん身体を拭いて、服をきてください!」
「そ、そうですね……」
「うう……先輩に二度も裸を見られたっス……」
た、確かにノックをしなかった僕も悪いけど……。
でもポーション部っていちおう公共のスペースだからね!?
女の子だけだったからいいけど……。
これがもし僕以外が急に入ってきたらどうするつもりだったんだろう?
「今度から、カギをかけてくださいね……」
「は、はーい!」
なんだかライラさんの返事がわざとらしい気がするのは気のせいだろうか。
◇
「……と、いうわけで、肌すべポーションもとっても売れています!」
「ほんとですか! よかったです!」
またしてもヒット商品の誕生というわけだね。
どんどん利益が増えていって、順調な感じだ。
このままいけば、本当に王女の野望を阻止できるかもしれない!
「絶対に、もっともっとギルドを大きくしましょう!」
「はい! ヒナタくんならできますよ! 私も頑張ります!」
僕たちは決意を新たにした。
あ、ちなみに――。
肌すべポーションは地域の奥様方に大変好評をはくしたよ。
それに、家に持って帰ると、ヒナギクとヒナドリちゃんもすっごく喜んだ。
よかったね!
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