第73話 元気なヒナギク
僕は先ほどの【上級回復ポーション+】を再び手に取る。
これを今の体力でできるだけ、
今の僕なら、何度でもブーストを撃てる気がする!
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
――
【上級回復ポーション+】が【上級回復ポーション++】に変化する。
まだまだだ。こんなんじゃ足りない。もっともっと、ブーストを加速させないと!!!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
――
――
――
――
――
――
――
――
――
――
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「せ、先輩!? もうムリっスよ……! 本当に死んじゃいます!」
さすがにもうこれ以上は無理だ……。わかっている……。
僕はその場に倒れそうだった。
ちょうどそのとき――。
「ヒナタくん……!? な、なにやってるんですか!?」
ライラさんがやってきた。どうやら騒がしくし過ぎてしまったみたいだね……。
「あれ……、ら、ライラさん……?」
僕はそのままライラさんの胸に倒れ込む。もう立てない。
「ヒナタくん!? ちょっと! 大丈夫ですか!?」
「す、すみません……無茶しちゃいました……えへへ……」
「わ、私は大丈夫ですが……。いったいどういうことなんですか!?」
ライラさんはちょっと怒っているようだ。心配させちゃったかな……?
「ウィンディさん! あなたが付いていながらヒナタくんにこんな無茶を……」
「す、すみませんっス……」
「ライラさん、ウィンディを責めないでください。彼女はちゃんと止めてくれました。僕がわがままを言って無茶をしたんです」
「先輩……」
「ヒナタくん……」
最後の力を振り絞った僕は、そのまま意識を失った――。
「ヒナタくん!? ウィンディさん、どういうことか説明してもらいますからね!?」
「は、はい……っス……」
◇
「……ッハ!? そうだ! ポーションは!? あれは夢だったのか……!? エリクサーは!?」
僕はそんな言葉と共に目を覚ます。
あれからいったいどうなったのだろう……。
どうやらここはギルド内の病室のようだけど……。ライラさんは?
それに、はやく家に帰ってヒナギクに飲ませないと……! 効果が切れてしまう。
「……くそっ! また僕は失敗したのか……!?」
僕は悔しくて泣きそうになる。あんなに頑張ったのに……!
すると――。
「――兄さん……?」
――え?
今の声は……?
「――ヒナギク!? どうしてここに……!?」
――ということは?
「ヒナギク!?」
僕が考えている間にも、ヒナギクは元気に駆け寄ってきて、ベッドの上の僕に飛び乗ってきた。
「えへへ……兄さん、おはようなのー!」
こんな声色のヒナギクは何年振りだろうか……。
「そっか、よくなったんだね……?」
「兄さんのおかげなのー! でも無茶はいけないの……。兄さんが倒れてちゃ意味がないなの」
「そうだね。あはは……ごめんね、心配かけて」
僕はうれし涙をこらえながら、そう言った――。
◇
【side:ライラ】
「よかったです……本当に……」
「そうっスね……。ほほえましいっス」
私とウィンディさんは病室の外で、ヒナタくんたち兄妹を見守ります。
中に入っていきたいところですが、今はそっとしておいてあげましょう。
兄妹水入らずということで……。
「ヒナタくん、頑張っていましたからね……。報われてよかったです……」
「本当に、先輩は妹思いの優しいお兄さんっス……。だからこそ、自分も先輩のことが……」
「は?」
いま、ウィンディさんの口からとんでもない発言が……。私の気のせいではないはずです。
「ウィンディさん……まさか私のヒナタくんに思いを寄せているのですか……!?」
「ええ!? 先輩はライラさんのものじゃないっスよ!?」
――ムカっ!
今の発言は、いくらヒナタくんのかわいい助手だとしても聞き捨てなりませんね……。
「いいですか? ヒナタくんは
「違うっス! 先輩は自分の大事な先輩っス!」
――バチバチバチ!
私とウィンディさんの間に、なにやら火花がバチバチと……。
にらみ合います。
まったくヒナタくんにも困ったものです……。
すぐに違う女性を引き寄せてしまうんですから……。
「お二人とも、そこまでですわ!」
するとそんな私たちを制止する声が……。
振り向くと、そこにはヒナタくんの
「あなたは確か……」
そう、彼女はヒナドリさんでしたか……、ヒナタくんの従妹さんだったはず……。
「お兄様はあなた方どちらのものでもありませんの。
「確かに……そうかもしれませんね……」
「そうっスね……少なくとも、今は……」
ベッドの上で嬉しそうにはしゃぐ
その後しばらく、私たち三人は、病室の外から中のお二人を見守っていました……。
するとしばらくして安心したのか、兄妹は疲れて眠ってしまったようです。
「あらあら、ヒナギクったら、久しぶりにお兄様とじゃれあって、疲れてしまったんですのね……」
「風邪をひくといけないですから、そっと毛布をかけてあげましょう……」
私たちは起こさないように、お二人に毛布をかける。
なんだかこの兄妹を見ていると、こっちまで幸せな気分になります。
ほんとうによかった――。
そして私はますます強く思うのでした。
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