第116話 突入前夜


シノビの里は滅び、カエデちゃんのお兄さんも助けられた。

カエデちゃんがもう戦わなくなってよかった!

僕たちは祝勝会と親睦会をかねて、パーティの仕切り直しをしていた。


「みんな、心配をかけましたね……」


「いえいえ、ヒナタくんはなにも悪くありませんよ!」


そう言ってもらえてよかった……。

でも、僕が自力で回復したせいで、解毒薬が余ってしまったね。


「この解毒薬、どうしましょうか……」


「それなら、王に使ってくれ。王はいまだ、薬によって眠っているんだ……」


ジールコニア子爵が、僕にそう頼む。

もちろん、僕はそれに頷く。

王を回復させて、王女の計画を止めるんだ!


「だけど、どうやって王のもとへ……、シノビの里が無くなったことをしったら、王女はそんなことをさせないようにすると思うんです」


「そうだな。確かにそうだ。なんとか私が解毒薬を届けれたらいいのだが……。私も、王女に警戒されている」


ジールコニア子爵でも、身動きがとれないんだね……。

すると、ジールコニア子爵の使用人の男性が一人、こちらへ来てなにか耳打ちした。


「なに!?」


「どうしたんですか、ジールコニア子爵!」


「それが……王女のもとにスパイとして潜入させていた男が殺されたそうだ……」


「そんな……!」


王女も、ジールコニア子爵の動きに気づいたというわけだね……。

シノビの里を襲ったのは、やっぱり動きが大きすぎたか……。


ジールコニア子爵のおつきの人は、さらに何かを告げる。

ジールコニア子爵の顔が一気に緊張する。


「ど、どうしたんですか……」


「それが、王女が私を王城に呼び出してきたようだ……」


「ということはつまり……!」


「ああ、王女は私を暗殺するつもりだろう……。食事会のときに、毒でも盛るつもりだな……」


「そんな……!」


ジールコニア子爵を直接狙ってくるなんて!

もう王女はなりふり構わずに、強硬手段に出るつもりなんだろう。


こうなったら、こっちもいよいよ覚悟を決めるしかない。

最終決戦だ!


「ちょうどいい……正面衝突、上等じゃないか……!」


ジールコニア子爵は不敵な笑みをこぼす。

頼もしい……。


「ヒナタくん、君も私のお付きの者として、同行してくれるかな?」


「もちろんです! いっしょに王女を倒し、王を救いましょう!」


僕はジールコニア子爵とかたい握手を交わした。


だが、ライラさんが立ち上がり――。


「ヒナタくん! まだ病み上がりなのに、王城へ乗り込むなんて危険です!」


「大丈夫ですよライラさん」


正直、今の僕に怖いものなんてない。

僕はやるときはやるんだ。

そしてライラさんに認めてもらって、もう一度ライラさんに――!


「そういうことなら、ぼくもお供するよ」


「勇者さん……!」


勇者さんも立ち上がり、僕たちと握手を交わす。


「ぼくは王城には何回か出入りしたことがある。ヒナタくんにもしものことがあれば、僕が守るよ。命に代えても……」


「ありがとうございます……! 勇者さんがいれば、頼もしいです」


「ヒナタお兄ちゃん! 私もいく!」


「カエデちゃん……危険だよ?」


それに、もうカエデちゃんが戦わなくちゃいけない理由はないはずだ。

僕はできるなら、この子に戦ってほしくない。


「王女を止めるのは、私の役目でもある気がするんだ! 私は、王女に雇われたシノビだった……。王女とケリをつけたい……! それに、隠密行動も役に立つはずだ」


「まあ、そういうことなら……」


こうして、僕たちは解毒薬を手に、王城へ出向くことになった。

僕、ユーリシアさん、ジールコニア子爵、カエデちゃんの4人で。


僕はジールコニア子爵のお付きの人として、変装していく。

ユーリシアさんは、勇者として堂々と訪問だ。

カエデちゃんは隠密行動で後ろから。


これで、なにかあっても絶対に大丈夫だ――!

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