第117話 毒の皿【side:スカーレット・グランヴェスカー】
私はジールコニア暗殺のため、ジールコニアを城の晩餐会に招待した。
これでやつの死体ごと、この世から消してやる。
城の中に入ってしまえば、もう私のものだ。
根回しは済んだ。
「スカーレット王女、ジールコニア子爵がお着きです」
「そうか、通せ」
私は窓の外をみて、中庭を歩くジールコニアを観察する。
ん…………?
なにかがおかしい。
「なんだあの面子は……!?」
ジールコニアの横には勇者ユーリシア・クラインツがいるではないか!
しかもその後ろにいる従者は……あれは変装しているが、明らかに――ヒナタ・ラリアークではないか!
「のこのことやってきおって……舐めた真似を……!」
私は手元のワイングラスを握りつぶした。
わざわざそろって殺されにきおったか……!
「だがこちらには策がある。毒の皿だ……! やつらの皿にはすべて、毒が入っている!」
「はい、その通りでございます、王女さま」
「ふっはっはっはっは!」
◇
「スカーレット王女、お久しぶりです」
ジールコニアは白々しく挨拶をする。
「そうかしこまるな。楽にしろ」
「はい」
「それで……なぜ勇者どのがここに……?」
なにか企んでいないといいが……。
「いえ、ぼくはジールコニア子爵の友人としてお供しただけですよ。招待状には、お供を二人まで連れてきてもよいと書かれていましたでしょう?」
こいつめ……白々しいやつだ。
だがジールコニア子爵め、まさか勇者を護衛につけるとはな……。
だが無駄だ。
私ははなから戦う気などない。
勇者もろとも、毒殺してやる。
「そうですか、だが……勇者どのがジールコニア子爵とご友人だったとは、知らなかったな……」
「ジールコニア子爵は顔が広いですから」
「では、こちらへ。みんなで一緒に夕飯を楽しもうじゃないか……」
私はみなを、席に座らせる。
指を鳴らすと、使用人たちが、テーブルの上に料理を並べる。
もちろん、私以外のは毒入りだ。
「さあ、いただいてくれ」
「では、お言葉に甘えて」
ジールコニア子爵は、スープを口に運ぶ。
勇者も、ヒナタも、それぞれに料理を口にする。
――勝った!
くっはっははっはっははははははっは!!!!!!
私は心の中で笑いが止まらない!
これで、邪魔者はみないなくなった。
私による独裁国家の完成だ!
軍事力を拡大して、他国を占領し、蹂躙し!
闇の時代が始まるのだ!
勇者などという英雄気取りのバカもいらない!
個で大きすぎる力は邪魔でしかない!
英雄は私だけで十分だ!
それよりも、必要なのは忠実な軍団だけ!
「ふふ……ふふふ……」
思わず、笑みがこぼれてしまう。
「どうされたのです? スカーレットさま?」
ジールコニアがわざとらしく訊ねる。
「いえね……みなさんとの食事が楽しくて……」
「そうですか、それはよかった」
その後も、私たちは食事をつづけた。
やつらは一歩一歩寿命を縮めているというのに気づかずに、毒を口にする。
だが――おかしい。
もうすでに毒は回ったのではないのか????
なぜ奴らはだれも死なない!?
「っち……!」
私は使用人に目で合図を送り、異変について尋ねる。
だが、使用人はたしかに毒を入れたと合図を返してきた。
どういうことだ?
私がキョロキョロして、焦っていると――。
「どうされたのですか? なにかおかしなことでも?」
ジールコニアがまた、わざとらしく訊ねる。
その口元は、かすかに笑っていた……。
つまり、こいつは初めから、知っていたのだ。
なにか対策を講じ、死なないとわかっていて毒を口にしたのだ。
(キサマぁあああああああああああああああああああああ!!!!)
私は内心、憤慨する。
顔が真っ赤になり、血管が浮き出る。
だめだ、押さえねば……。
ここでブチギレて、剣を抜いてしまっては台無しだ。
あくまでも暗殺でなければいけない。
◇
【side:ヒナタ】
よし、スカーレット王女は怒っているね。
僕は料理を食べながら、勇者さんとジールコニア子爵に目で合図して、心の中でガッツポーズする。
作戦通りだ。
僕はあらかじめ、三人の体内を、
さらには特製の毒対策ポーションをたっぷり飲んでおいたからね。
スカーレット王女が晩餐会に誘ってきたということは、毒殺も十分に考えられるからね。
これであとは、上手く王のもとへたどり着き、薬を飲ませれば解決だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます