木刀を求めて

第3話 ファッションヤンキー露店を訪ねる

「よし、まずは武器じゃの。木刀欲しいし。」


 教会から出た私はとりあえず木刀を求め、武器屋に向かうことにした。

 でも視界の端っこに地図とかないのよね、このゲーム。しょうがないから人に聞くとしようかな、そこを歩いているプレイヤーっぽい男性に声かけよう。初心者装備じゃないし、それなりにやり込んでそうだ。えーっと……


「よう兄ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんじゃけどいいか?」

「え?っ!な、なんでしょう?」


 一瞬、面倒そうな眼差しだったけど、私を見上げ目を合わせるや否やその目を驚愕に変えた。あ、ちなみに私身長182センチです。

 よしよし、聞いてくれそうだね。


「俺初心者でさぁちょっと武器屋探しとるんよ、どこにあるか教えてくれん?」

「え、えっとNPCがやってる武器屋とプレイヤーが露店しているのがあるけど……?」

「ん?プレイヤーは店持ってないん?」

「俺が聞いた限りでは鍛冶プレイヤーの第一人者もまだ店買うほどの金を集めてないとは聞い、あ、いや聞きました!」

「ふぅん?で、兄ちゃんはNPCの店に行ったことは?」

「まぁありますけど……」


 最初こそおどおどしていた男性プレイヤーだが、次第に私に慣れてきたのか詰まらずに質問を返してくれるようになった。


「そのNPCの武器屋に木刀はあったん?」

「木刀!?あの、土産屋でよく見るあの?」

「そうじゃけど?」

「え、あ、いやー?見たことないですね……」


 ちくせう、最初の街であれば売っているかもしれないと思ったんだけれど現実は非情である。

 悲しい事実に私は顔をしかめ大きくため息をついてしまい、男性プレイヤーは何故か小さく悲鳴を上げた。え、怖かった?


「すまんのう、せめてそのプレイヤーの露店の場所教えてくれんか?」

「あ、はい。ここの大通り真っ直ぐ行ったら噴水のある公園があるんで、そこで何人か露店やってるはず……」

「ありがとよ。」


 私は礼の言葉と共にすれ違いざまに男性プレイヤーの肩をポンポンと叩き、彼が指し示した噴水のある公園に向かった。

 ……うへぇあ怖かったぁ!プレイヤーとの絡みってあんな感じでいいのかな!?変なプレイヤーだと思われ……いや変なプレイヤーだな私!でも不快にさせないようには心がけた!


 少し歩くと、言われた通り噴水の飛沫のようなものが見えてきた。あの飛沫の下のところに公園があるのか。

 でもその前に、滅茶苦茶いい匂いがするんですけど?あ、屋台とかあるのね。焼き鳥にフルーツになんかよく分からない変なもの……あれ生もの?動いてない?

 とりあえず私は一番無難であろう、焼き鳥の屋台に向かった。私の他にも購入者がいるが、屋台の主人は調理する手を止めず、流れるように注文を聞き、金を受け取っては、良い焼き色に仕上がった焼き鳥を客に差し出している。

 私?もちろん順番待ちしてますよ。横入りなんてとんでもない!とんでもないから前の人譲ろうとしないで!

 数分待ちようやく私の番。あぁ、いい匂いの前でお預けなんて拷問だよ。


「へいらっしゃい!おぉ、中々厳つい姉ちゃんじゃねぇか!何本いるんだ!?」


 お、物怖じしない。


「そうじゃのう、2本頂戴や。」

「あいよ!40Gね!」


 そういえば、お金ってどうやって出すんだろ。などと考えていたら手のひらに10Gと書かれた硬貨が4枚出てきたではないか。え、これ自動で出てくるの?凄いな。

 そんなわけで出てきた40Gで焼き鳥を2本買い、一口ぱくりと。

 ほほう、これは……あれだ!炭酸飲料が欲しくなるね!つまりは美味しい!私の好みの塩味だし!

 んふふ、美味しいものを食べると気分がいいね。足取りが少し軽くなった気がするよ。

 さぁ、私の木刀ちゃん待っててくれよ!



 やってきました噴水公園。名前そのままなんだね。

 男性プレイヤーの言っていたように噴水の周りにプレイヤーがシートを敷きそこに武器や防具……おっアイテムや服もあるな。

 ウィンドウショッピングってそれだけで楽しいよね。いろんな商品見てさ、うふふ。うふ、うふふふ、うふふふうわあああああああん

 悉く木刀ないなぁ!?うっそ、そんなに需要ない!?でも当然かぁだって木刀、木だもん。そりゃ鉄だのなんだの金属で作った武器のほうが需要高いよね。そりゃ私だって生産プレイヤーならそうするさ!

 最後の露店も……無い……っ!!なんか私にはまだ届かないようなすごそうな武器あるけど求めてねぇわ。つれぇわ。

 今の私は絶望の表情を浮かべていることだろう。あゝ、どうしようかもう木工スキルとって自分で作るぅー?でも自分で木刀作るヤンキーって絵面は面白いけどさぁ。


「おい、おいおい?お姉さん?怖いお姉さん?」

「あン?」


 肩を落とし落胆している私に声を掛けたのは私が最後に見ていた露店の主の少女……いや、少女にしてはがっしりしてるな?ドワーフか。


「何ぃ。」

「何ぃはこっちの台詞なんだけど?あなたが初めてなんだけど?私の武器見てがっかりしてるの。」

「それは済まんかった。目当ての武器がなかったんよ。」

「えぇ?あなたこの公園一周してたじゃない。それでも無かったの?何探してるのよ。こう見えても私結構いろんな武器作れるし取り扱ってるけど?」

「木刀。」

「木刀?……あー確かに無いわね。というか、作ったことないわ。」

「邪魔したわ。」


 はい、これ以上ここにいても意味なし!私は踵を返し公園の出口に向かって足を進める。

 これは本格的に自作しないといけないかなぁ……木工スキルってどうやって取るんだろ。


「ちょちょちょ、待ち!強面!」


 ん、脚が進まん……うわ、服をドワーフ娘に引っ張られてる!ちょ、動けないんだけど!

 この子どんな筋力してるの!?


「それもしかしなくても、わた……俺の事じゃろうが。何なら。」

「さっきも言ったけど武器見られてがっかりされたのは初めてなのよ。……いいわ、作って見せようじゃない木刀を!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る