第129話 ファッションヤンキー、友人の状況を聞く

「ヒヨコなのに強そうじゃのぉ……」

「うん、強いよ!私に負けないスピードで敵に接近して毒をぶち込むの!あと嘴でキツツキみたいに突いたり!」

「遠くからサポートするタイプじゃないんか?」

「最初はそうしようと思ったんだけどねーなんか接近して戦うのが好きみたい!ねー?」

「クルァー」


 羽ばたくシギョクを捕まえ両手で挟みポムポムと弾ませるシャドル。シギョクは気持ちよさそうに目を細め、同意するように鳴く。言葉を理解してるようだし、この鳥、鳥頭ではないね?


「それにね、さっきは種族わかんないって言ったけどそれとなしに見当はついてるんだ」

「ほう?」

「毒と鳥だし、バジリスクかコカトリス系かなって」


 あー、確かにそれっぽいけど……どちらも蛇とか龍とか混じって無かったっけ?シギョクさん、よく見てもヒヨコ要素しかないんだけど。目の辺りに意味深なラインは入っているけど。

 おっと、そう言えばシャドルってイベントどうしてるんだろう。そもそも戦うの好きだから参加はしているはずだけど――


「シャドル、イベントの調子はどうなら」

「絶好調!テイマーじゃないからシギョクは参加させられないんだけどね!パーティ戦もソロも結構勝ち進んでるんだよ!なんと、ソロでムラムラマッサンさんと当たった!」

「マジか!勝ったんか!?」


 ムラムラマッサンと言えば私の知る中では最強とも思えるプレイヤー。滲み出る胡散臭さはあるけれど、それを補って余りあるほどの強さを持っている。

 シャドルも彼女自身が言ってた勝ち進んでいるという台詞から強者の部類に入るんだろう。身内びいきかも知れないけどね?けど、そもそもマッチングするのは保有ポイントが近い者同士。であれば……


「負けちゃった」

「そう、か」


 ワンチャンあるかと思ったけど、駄目だったかー。でも負けちゃったという割には残念そうには見えない。寧ろ目をキラキラとさせて楽しそうだ。


「いやね?健闘したと思うんだよ?初撃も躱して接近するまで持ち込んだんだもん!」

「なーんで魔法職が刀持ちに接近戦挑んでるんかのぉ……」


 シャドルの戦闘スタイルは一度戦ったから知っているけど違和感MAXだよ?ってか初撃ってタイガスとかいうモンスターを離れた場所から斬ったあれ?そうかぁ、あれ避けれるんだ……私は踏ん張り所で耐えることしかできないと思うよ。


「色々攻撃したんだけどねー決定打が与えられなくてね、結果スパっとね!」

「ムラムラマッサン、攻撃は凄いけど回避はおざなりってことは無かったんか?」

「ないない!私も結構な弾幕張ったんだよ?ほとんど躱されるんだよ?足さばきとか凄い参考になる!」


 参考に……なるのかなぁ?なるんだろうなぁ……


「で、オウカはどうなの?」


 そう聞かれたので、今の私の状況を伝える。流石にスキルの効果とかは教えられないけど勝ち負けとかくらいはね。


「へぇーオウカ凄いねぇ」

「そうか?」

「うん。私と戦った時のままのオウカだったらそんなに勝てないと思ってたもん!」

「正直じゃのぉ」


 シャドルの屈託のない言葉にそう返し、私は苦笑を浮かべる。


「でも、遠距離職にも勝ててるなら大丈夫でしょ!うーん、私もオウカと戦いたいなぁ」

「闘技場なら出来るかもしれんけど、イベントでは厳しいじゃろ」

「そんなことないよ!オウカ頑張って勝ち上がってきてね!」

「善処するわ」

「ヤンキーなら『やってやるぜ!』くらいは言ってよ!」


 だってねぇ、もう2日目の夜だし……そろそろ私ログアウトしようかなーって思ってた頃にシャドルが来たんだもんなぁ。明日イベント潜ってシャドルレベルまで登り詰められるか。いや、厳しくない?

 だからこその善処するなんだけど、珍しくシャドルからツッコミがとび、私達は顔を見合わせ笑い合った。


「そうだ、オウカ!出会いついでにお願いがあるんだけど!」

「お願い?シャドルが俺に?」


 私よりも先に攻略が進んでいるはずのシャドルが頼みって……?私生産職じゃないから物作ることはそもそもできない。寧ろ壊す方が得意かなって、ヤンキー的な意味で。アイテムもあげられるようなもの……レアそうなものはあるけどあげられないよ?


「ゴーレム乗せて!」

「あぁ、なるほどのぉ犀繰か」

「掲示板で見たんだよ!もーすっごい羨ましい!私も風を感じたい!」

「まぁえぇけど。ただ俺と2人乗りじゃないと犀繰は動かんぞ?」

「それでもいい!」


 ってことでシャドルを乗せてポートガス街道を走り回ることとなった。シャドルは終始笑顔ではしゃぎ、その方に乗ったシギョクも珍妙な鳴き声を上げて楽しそうだ。でもご両名?乗りながら爆発魔法とか毒とかモンスターに撃ち込むのはどうなの?傍にいたプレイヤー引いてるよ?私も楽しいからいいけどさ!


「飛ばすぞぉおおおお!!」

「おー!オウカ行けー!」


 シャドルが満足する頃には現実世界ではもう寝る時間になっていた。シャドルはまだAFWをプレイするようだが、私はもう眠いので落ちさせて貰おう。

 んじゃま、また明日ー

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