第146話 ファッションヤンキー、黄金龍について聞く

 私とシャドル、そしてフェリーンとその護衛一行は、トレトゥスに向かっていた。フェリーン達は元々馬車に乗っていたそうだが、襲撃によって壊され、馬は殺されたり逃げてしまったらしい。一応、私とシャドルには犀繰とシギョクといった移動方法はあるが、流石に全員は乗せられないし抱えて飛べもしない。

 てなわけでフェリーンは、この面子でどうにもならない相手に遭遇した時用にすぐ離脱できるように犀繰に乗って徒歩並みのスピードで走行。私達はそれを囲んで歩くということになった。

 それにしても……


「黄金龍様、ねぇ?」

「?オウカ、なんか言った?」

「何でもない」


 出発前にフェリーンより告げられた黄金龍に仕えし姫巫女という情報。思わずつぶやいてしまった黄金龍という単語にシャドルが反応したけど、はぐらかしておいた。

 気のせいかな?私、悉く龍と縁がある気がするんだけど。もしかして、龍と遭遇するって割と普通のことだったりして?どうなんだろ、シャドルにも聞いてみるべきかな?


「のぉ、シャドル。お前、龍に会ったことあるか?」

「龍?うーん、ワイバーンとかドラゴビーストなら遭遇したことあるよ!」


 ワイバーンはともかく、後者は聞いたことの無いモンスターだね。聞くと龍のような鱗を纏った狼型のモンスターらしい。ドラゴという名前を冠していることを関係してか、ブレスを吐くことが出来る厄介なモンスターらしい。


「あら、オウカ様はもしかして黄金龍様にご興味が?」


 おっと、フェリーンが私たちの会話に喰いついて来た。その目はキラキラと輝き、如何にも黄金龍について話したいと物語っている。まぁ私も気になっていたことだし、犀繰も近くにモンスターの反応は無いという。ずっと歩いているというのも暇なので、教えてくれるというのであれば教えてもらおうかな。


「そうじゃのぉ、興味あるわ」

「でしたらお話しさせていただきますね!」


 アカン、これお気に入りの特撮について語るシャドルとおんなじ目をしてる。話長くなる奴だ!


「うわ、ヤンキー漫画語る時のオウカとおんなじ目してる!」


 おい待てシャドルお前今何て言った。



 凄い情熱的に語られましたね、フェリーンさん……周りのコーネスト並び護衛達がやっちまったなみたいな顔していた理由が良く分かりましたとも。ただ、得られた情報は多かった。

 まず。黄金龍様と呼ばれる存在の正式名称は黄龍ゴルディバルド。黄色を通り越して黄金の鱗を持った龍らしい。司る力は雷で一度力を振るえば空が雷雲に覆われるとのこと。

 その言葉通りなら、過去に出会った水龍トルネイアは雨雲に覆われて、火竜サラマーダは……何?噴火でも起きるのかな?だとしたら物騒だな。ちなみに黄龍ではなく、黄金龍と呼ばれているのは、フェリーンの先祖がゴルディバルドを始めて見た際に漏らした言葉が黄金龍で、ゴルディバルドはそれをいたく気に入り以後そう呼ばせていると言われている。


「俗っぽ」

「こらシャドル」


 幸いシャドルのこぼした言葉はフェリーンの耳には届いてなかった。


「それでですね、最近黄金龍様が気になることを仰っていたんですよ」

「気になる事?」

「フェリーン様、それ以上は」


 言わんとしていることが重要機密なのか、コーネストが顔をしかめフェリーンに苦言を呈すが、彼女は笑顔のみでそれを制し、コーネストはそれ以上何も言えず黙り込んでしまった。いいんかアンタそれで。


「『何か同族っぽいのが生まれた気がするなぁ』と、仰られてました」

「同族」

「えぇ、私も最初はよく分からなかったのですが、今では確信を持てます。それはオウカ様のことだと。その眼を見た途端、すぐに結びつきました。……あの、オウカ様何故そんな不服そうなお顔を?」


 そんないきなり同族と言われてもねぇ……私ヤンキー目指しているだけのいたいけな女の子なのに、龍なんて言われてもあんまり嬉しくないというか。いや、龍はそれなりに好きだよ?でも、そうなったらもはや人外じゃないですか。ヤンキーじゃないじゃん!


「俺は別に龍になる気は無いけぇのぉ」

「そうなのですか?にしては、龍の気配が強くなっていらっしゃるみたいですが」


 龍の気配って何ですかね!?ってかそれ絶対、ダリグリカ食べたことや龍拳が関わってるでしょ!

 アカン、私このまま龍になってしまうのかな……対策してどうにかなるならいいけど。とりま極力倒されたドラゴン系は見ないようにしよう!視界に入れたらまたあの謎現象起きそうだし!

 心の中で誰ともなく誓う私。そんな私を尻目に、シャドルが何かに気付き声を上げた。


「あっ!オウカトレトゥス見えてきたよ!」


 どうやら目的地に着いたみたいだね。……モンスターの襲撃、一切なかったなぁ

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