第147話 ファッションヤンキー、そう言えば
「こりゃあすげぇのぉ……」
遠くから見えた時から何となく分かっていたけど王都に次いで栄えているというのはあながち間違いではないのかもしれないね。立派にそびえるもんもだけど、今まで訪れたどの街よりも街に入ろうとしている住民の数が多い。
まぁ、これに関して驚いているのは私だけでシャドルは来たことあるようで、大した反応はせず、フェリーンは笑みを浮かべて「初めてトレトゥスに行く方は皆そう驚かれますよ」と微笑みながら言った。……お上りさんみたいだな、私。これじゃ、田舎からイキって出てきたヤンキーじゃないか!漫画で即やられるポジションだよ!
っと、そうだ。まだ少しトレトゥスから離れているが、到着するとフェリーン達とはお別れすることになるだろう。その前に1つ聞いておきたいことがあったんだ。
「のぉ、フェリーン。アンタぁこの背中の龍、金華龍クリューソルスについて何か知っとるか?聞いた話、黄龍ゴルディバルドに似ている気もするんじゃけど」
そう言い、彼女に私の背中を見せつける。私の学ランに縫い付けられた黄金龍のワッペン。見つけた当初は、全く情報がなかったけれど、火竜サラマーダによって金華龍クリューソルスという名前にたどり着いた。クリューソルスとゴルディバルド。共に黄金龍と呼ばれた龍同士、何か通ずるところがあるんじゃないかと思った次第だ。ってあれ?いつの間にか背中のワッペンの名称が金華龍クリューソルスのワッペンに変化してる。名前が判明した時に変化したのかな?
「やはり、その背に描かれていた龍様は黄金龍様と別の御方なのですね。確かに似通った部分はございますが、鱗の形が異なります。黄金龍様は雫型に対してこの御方は桜のような花弁型なのですね」
「え、マジ?」
「見せて見せて!」
フェリーンに指摘され、学ランを脱ぎ広げて確認してみる。おぉ、本当だ。確かに鱗の形が桜みたいだ。やだ、よく見てなかったけど結構きれいじゃないの。もしかして、金華龍って名前はここからきているんじゃないかな。シャドルは私の背中に乗って頭越しに見るんじゃなくて降りて普通に見なさいな。
「うーん、やはり心当たりはございませんね。私も他の龍様とは面識が……あぁ、いえシギョク様で2人目ですかね。まだ御子のようで、龍の気配が微弱ですが」
「クルッ!」
「え?」
「うん?」
フェリーンの言葉にシャドルの頭に乗ったシギョクがそれはもう誇らしげに胸を張る。それに対してぽかんとする私と飼い主?であるシャドル。まーた凄い情報出てきたよ。
あぁ、シギョクを手で挟みこんで顔まで持ってきてフニフニしだした。まさか自分のパートナーであるヒヨコが竜とはさすがのシャドルも理解が追いついてないみたいだね……
「シギョク、ドラゴンだったのー?」
「クルァ」
せやでと言わんばかりの鳴き声。あぁこら、「何で言わなかったの」とフニフニを高速化させるんじゃない。そもそもシギョクは喋れないでしょうが。
シャドルがエンドレスフニフニに入ったのでこちらはこちらで話を進めさせて貰おう。
「火竜サラマーダは、知っとったけど話とかは聞いとらんか?」
「他の龍?その火竜様ともお会いしたことが?」
「おぉ、あと青龍トルネイアとも」
「渡界者の方々は最近この地に降りたと聞いてますが、そんなすぐに?」
「と言われてものぉ」
トルネイアは偶然出会ったけど、サラマーダに関しては紹介なんだけどね。
「うーん、やはり聞き覚えがありませんね。そもそも黄金龍様から他の龍の方の話を聞いたことが無いのですよ。」
「普段はどういう話をしとるん?」
「最近流行のスイーツとか」
「ん?」
「渡界者の方が広めている服とか」
「んん?」
「面白い書物の話とか」
「思ったより黄金龍様若いな?」
曰く、ずっとフェリーン達のいる里に籠っているためか娯楽に飢えているのだとか。「トレトゥスのスイーツも楽しみにされてるんですよ」と付け加えられた。いや、そんな情報もたらされても……
「でも、そうですね……今回オウカ様たちとお会いしたこと、いい話のタネになりそうです。その際に黄金龍様にお聞きしてみましょうか?」
「頼むわ。別に今すぐにでも知りたいって訳じゃないけぇ、急がんでええわ。」
本当にクエストって訳じゃなくてただの知的好奇心なだけだからね。これで聞きたいことは全部かな。まぁこういう場合、後になってから聞いておけばよかったーってなりかねないけどね。今思い出せないなら割かしどうでもいいことなんだろう。
「フェリーン様、そろそろ」
「あら残念です。もう少しオウカ様たちとお話をしておきたかったんですけれど」
おっと、もう門の目の前。護衛も終了だね。コーネストが声を掛けると、名残惜しそうに犀繰から降車するフェリーン。降りる際に犀繰に対して礼を言うあたりやはりいい子なんだなと。
コーネストから護衛に対しての報奨金を受け取る。
「オウカ殿、シャドル殿。改めて礼を言わせていただく。何かあれば言ってくれ。」
護衛達を代表してのコーネストの礼の言葉。他の護衛達もそれに合わせて頭を下げる。
少し他のプレイヤーからの目線が痛いが気にしない気にしない。それよりも今コーネストいったね?何かあれば言ってくれって言ったね?そうですか、なら頼ませてもらおうじゃないの。
「なら頼みがあるんじゃけど、ここの門番に口利きしてくれんか?」
さっきからプレイヤーに紛れて門番らしき人物が応援呼んでこっちを怪しげな目で見てくるんスよ!これからの展開読めてるんだよ!
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