打倒、コング・コング・コング!

第10話 ファッションヤンキ-、欲望のままに森を行く

 パックンさんに木刀を作ってもらい、それを受け取った私は再びワンズフォレストに訪れていた。

 理由は至極簡単。木刀の慣らしと言うのもあるが、第一の目的は職業に就けるLv5になるための経験値稼ぎだ。

 聞くに職業は、今までのプレイ傾向から適しているであろう物が3つ選ばれその中からプレイヤーが選びその職に就けるとかなんとか。そしてその就ける職業の中には変なものもあるという!であればよ、あるんじゃないかな私好みなのが!

 可能性を考えたら居ても立っても居られないってことでこの場に来ちゃったのだ。私のレベルは今4。あと少し頑張るぞ!


「っしゃあ行くぞおらぁ!」


 自分を鼓舞するつもりで大声を上げ、私は木刀を肩に担ぎ、大股広げ森へ進むのであった。……あ、美影にAFW手に入れたこと報告しなきゃな。後で。私忙しくなるから。


「ギギィ!」

「グギャ!」


 お、木刀の試運転にお誂え向きにゴブリン君いるじゃん!おーい、チャンバラごっこしようぜ!

 実際にそんな掛け声を出すわけでなく、気づき易いように近くの樹を思いきり木刀で叩く。

 それによって発生した音は、ゴブリンの耳に問題なく届いたようでビクリと肩を震わせ此方に視線を向けた。


「ギギャッ!?」

「ギィ!」


 気付いてくれたところで戦闘開始だ。

 ゴブリン達は連携もくそもなく、同時に走り出し同時に飛び上がり、そして同時に棍棒を振るってきた。

 この身で受けてもいいのだが、今は目的が違う。私は、振り下ろされた棍棒目掛け木刀を大きく乱暴に横に払った。

 その結果、棍棒は容易くゴブリンの手から離れ、私が振るった方向へすっ飛んでいき、ゴブリンは宙に浮いたまま、飛んでいった棍棒をポカンと間の抜けた顔で追っていき――棍棒とは逆方向に振るった木刀に2匹とも吹き飛び、叫び声をあげることなく消滅した。


 うわ、ナニコレ……


「楽しい……っ!」


 これは顔を保っていられない……!

 これだよ!徒手空拳も良かったけど、私のやりたかったことはこれだよ!剣術とかじゃなくて乱暴に木刀を振って戦う乱暴なヤンキーの戦い!どーだ美影!私もAFW楽しんでるよ!

 よし、落ち着いた。顔整えた。レベルは上がってない!よし、次!


 ゴブリン?この木刀の錆となれ!錆はしないけど。

 グレイウルフ?噛みついてくるタイミングで顎下から木刀をどーん!牙を砕いてやりました。

 スライム?あ、ちょ、流石に君ほど小さく地面張ってると私の身長じゃちょっと難しいんで普通に踏みつぶします。ごめんね?



 ここまで結構なモンスター倒してきたけどレベル上がらないなぁ。あと少しだと思うんだけどなぁ。

 うん?何か聞こえる?


――おい、そっち行ったぞ!

――待って!武器落としたぁ!

――何でこんなに沸くのさ!


 声と共にどったんばったんと物音。それにちょくちょく狼の声が。これはグレイウルフの鳴き声かな?もしかして戦闘中だったりするのだろうか?

 聞くにピンチのようだけどどうしようか。向こうは私に気付いていないようだしスルーしてもいいのだけれど……目覚めが悪いか。

 よし、行こう。なるべく偶然を装ってっと。


 声のする方角へ進むと、いますいます。3人のプレイヤーらしき男とグレイウルフ複数匹。これは私も遭遇した集団のグレイウルフだね。動きに翻弄されちゃったのだろうか。

 さて、近づいたところでグレイウルフの内の一匹が私に気付き仲間に知らせるべく大きく吼える。よし、君には見せしめになってもらおう。


「ガウッ!?ウォオーオォン!?」


 すまんな、隙だらけだったので棍棒ぶちかまさせてもらいました。

 ただ、浅かったか。棍棒を喰らったグレイウルフはよろめきながらも立ち上がる。そしてようやく、3人が私に気付いた。


「え、誰!?」

「応援!?助かったぁ!」


 闖入者こと私に3人は安堵の表情を浮かべそれと対称的にグレイウルフは私を警戒するように低い体勢をとり唸り声をあげる。


「やかましいのぉ、犬っころが。こっちきんさいや。そこの雑魚等は相手出来て俺を相手出来んってことは無いじゃろ?」

「「「雑魚っ!?」」」


 あ、プレイヤーさんごめんね。でも今は無視して木刀で肩をポンポンと叩き、厭味ったらしく笑う。言葉は通じずとも私の動きや笑みで挑発されたことは理解できたのだろう。まずは近くにいた私に攻撃され瀕死のグレイウルフが向かってきたが、木刀振るうまでもなく蹴りで撃沈。

 ならばということで一斉に襲い掛かってきたが、あの時とは違い私もレベルが上がり木刀だってある。1回噛みつかれるだけで済んだ。回避行動とらないからね、多少はね。噛まれたからって動揺もしてないしね?


 こうして私は前回は少し苦戦したグレイウルフの群れを容易く対峙することに成功したのだ。

 そして――


"レベルが1上がりました。"

"レベル5達成を確認。これまでの行動パターンを確認――完了。以下の3つの職業より1つ職業を選択できます。"

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る