第155話

"スキルチケットの使用を確認しました。 スキル 雷獣化を取得しました。"


森の賢者の手形

ワンズフォレストの主であるコング・コング・コングに認められた証。1日に1回ワンズフォレストにいる状態でこのアイテムを使用すると、どの場所にいてもコング・コング・コングに挑戦することが可能。譲渡は可能だが、コング・コング・コングが直接渡した者がいない場合、莫大なペナルティを課せられた状態で戦わなければいけない。


雷獣化

強く念じることで発動。ビーストはモデルとなった動物の特徴がさらに色濃くなり、それ以外の種族は獣感が増す。スキルを発動している間、MPを消費し続ける代わりに帯電状態と化し、近接攻撃時雷属性付与。また、ATKとDEXに補正が入る。なお、絶縁体を装備している場合は帯電状態は無効となる。(ATKとDEX補正は絶縁体を装備していても有効)


 本来だったら消滅したコング・コング・コングが色々落とすんだけど、今回は消滅しなかったのでドロップアイテムは無しで、もらえたのは手渡されたこの2つのアイテムだった。ぶっちゃけ、ドロップアイテムは余るほど持っているから困りはしない。

 とりま、雷獣化のスキルチケットは即使っておきました。悪いもんじゃないだろうし明らかに強そうだからね。ただ、獣感が増すとは……?使ってりゃ分かるんだろうけども。まぁ検証は後だ後。今はリアンだ。



「ほれ、リアン」

「は、ハイっす……!!」


 私たちの眼前には、ゴブリン。勿論すでに私を見て腰を抜かしている無防備状態だ。さて、少し前のリアンならゴブリンに負けないくらいビビり散らかしていたけど、今は足が震えながらも目はしっかりとゴブリンへと向き、私が贈呈した初心者用メリケンサックを握り締めている。

 それはいいんだけど、ブツブツ「アネキなら……アネキなら……」って言うのはちょっと怖い。私がなりきれみたいなこと言ったせいなんだけどさ。

 やがて決心がついたのか、メリケンサックを握った右手を振り上げ――


「オラァ!!」


 微妙に覇気のない掛け声と共に、振り下ろした。この瞬間、私の脳裏によぎったのはこんな至近距離でスカらせて反撃を喰らうビジョン。まさかそんなことはないだろうと思っていたが……


「ギギャァッ!」


 そんなことはなかった、よかった……ただ、一撃で倒すというのは無理だったみたいで、ゴブリンはダメージを受けながらも消滅せずに残っている。さぁここからリアンはどうするのか。殴った感触にビビって腰抜かすか、倒したと勘違いして油断して手痛い反撃を受けるか。


「オアラアアア!!!」

「ギッギギャッ……ギッ」


 あ、どちらでも無いわ。倒してないのに気づいてないのは気づいてないけど、それすら考える余地なく殴りまくってる。2発3発と耐えられたゴブリンだけど、流石にメリケンサックの連打は耐えきれないようでHPが切れ……切れ……てるよね?もう死んでるよね?白目剝いてるよね?


「ラアアアアアアアアアアアア!!」


 まだ殴ってるよあの子!もうやめてゴブリンのライフはゼロよ!……にしてもHP切れても殴り続ければ消滅しないんだね。まぁ、攻撃の途中にいきなり消えられても困ると言えば困るか。でもそろそろ止めようか。ゴブリン君を楽にしてあげなければ。リアンの頭を鷲掴み、声を掛ける。


「リアン!」

「ひあっス!?」


 何だその反応。しかし、声を掛けたおかげでリアンの拳は止まり、哀れなゴブリン君は消滅し、天に召された。南無。ゲームの世界だからそういう輪廻とかは無さそうだけども。哀れなゴブリンは置いといて、リアンだ。


「おう、どうじゃモンスターを倒した感覚は」

「怖かったっス」

「ほうか」


 何度でも蘇られるプレイヤーと違って住人は基本的に死ねばおしまいだもんね。それなのに脅威であるモンスターと立ち向かうのはそれだけで勇気がいる。それこそ、雑魚モンスターであるゴブリン相手だってそうだ。まー、現実世界で本気で殺そうとしてくる小さなネズミと相対すればおおよその人はビビってしまうだろう。私も絶対ビビる、賭けてもいい。

 怖かった、そう言って震え、握り締めていた手をぐっぱぐっぱと開閉するとリアンは苦笑いを浮かべ、私を見上げた。


「でも……何というか、達成感?があったっス」

「ほうか」

「後レベルも1上がった見たいっス」

「ほう……ん?ゴブリン1体倒しただけでか?」

「見たいっス」


 リアンが嘘をついている訳は無いし、本当なのだろう。でも私がレベル3になった時はもう少しモンスター狩っていた気がするんだけど、経験値テーブルが違うのかな?まぁその分すぐにレベル5になって職業選択できるだろう。

 となれば善は急げだ。もっとリアンにモンスターを狩らせなくちゃね。もう少し効率的に倒すにはやっぱり攻撃力を上げなきゃね。となると……ま、いいか。私は初代木刀を取り出しリアンに押し付ける。


「リアン、レベルアップ祝いじゃ。これやるけぇ、拳かこれ、臨機応変に使ってみい」

「え?これ……木刀スか?え?アネキのスか?」

「俺が最初に使っとった奴じゃ。俺には不動嚙行があるけぇのぉ」

「いいんスか?」

「そう言うとるじゃろうが」

「ありがとうございますっス!いつか……いつか御恩をお返しするっス!」

「ならまずはさっさと強ぉなれ」

「うっス!!」


 こうして本格的なリアンのレベル上げが始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る