第156話 ファッションヤンキー、妹分の成長を見届ける
私とリアンはワンズフォレストをそれはもう駆け回った。ゴブリン1匹から始まった狩りは結構難儀した。というのも私はゲーム開始時にHP・ATK特化でスタートしたからモンスターの攻撃してきたところを耐え、そのまま攻撃という流れだったんだけど、まぁ同じことをリアンにさせるのは無理があったみたいで。
「アネキ!痛い、痛いっス!」
「ちょっ大丈夫なんか!?」
一撃貰っただけで結構辛いようだった。住人だもんなぁ……プレイヤーのように完全に痛覚無しな訳ないもんなぁ。でも聞いた話によると、ステータスを上昇させると住民でもそういう痛みに耐えられるようになってくるらしい。
まぁ、グレイウルフの噛みつき攻撃を腕に食らいながらも歯を食いしばって木刀で殴りまくっていたのは立派だった。倒した後痛みで転げまわったから初心者用ポーションかけてあげたけども。いやぁ、他者がヤンキー目指して戦っている姿見ると痛感させられるよ。私がスムーズにヤンキーになれたの威圧眼のお陰なんやなって。
ただ、リアンの狩りも辛い物だけではなかった。道中でリアンはスキルを習得することが出来たのだ。そのスキル名は"格闘術"と"不倒"と"不撓不屈"。前2つは私も持っているスキルだけれど、不撓不屈は取得していない聞いたこともないスキルだ。リアンが言うには
不撓不屈
パッシブスキル
敵性存在に立ち向かう限りDEFに補正がかかり、恐怖耐性と痛覚耐性(住人限定)を付与する。
また、1日に1回HPの50パーセント以上のダメージを与える攻撃を受けた場合、ダメージを半減する。
って効果らしい。あれだ、地味だけど結構役に立つタイプのスキルだ。ってか私が欲しいくらいなんだけど?特に後半の効果。うーん、私も習得できるのかな?でも内容に住人限定の痛覚耐性もあるしもしかしたら習得できない可能性も……まぁ踏ん張り所があるからと自分に言い聞かせておこう。
このスキルを習得した時、リアンはそれはそれは嬉しそうだった。今までスキル習得とか縁がなかったんだな……さ、どんどんレベル上げ行こうか。
「アネキ!ちょっと数多くないっスか!?」
「俺も通った道じゃあ!」
「マジっすか!?」
マジです。リアンの前に現れたるは、5匹のグレイウルフ。2匹ほど私の方をチラチラと見ているが、残る3匹はリアンを確実に獲物としてロックオンしている。ってかリアンビビり過ぎじゃないですかね?あなたもうレベル4ですよ?
「グルァ!!」
おっ、グレイウルフの1匹が一吠え上げると、全員がリアンに向かって駆け出した。私を警戒していた2匹も最初は躊躇していたようだが、私が介入しないと分かると途端に強気になって攻撃を仕掛けた。
「う、わああ!!」
流石に棒立ちで攻撃を喰らうほど、リアンも成長していないわけではない。悲鳴に近い叫び声は宜しくないが、飛び掛かってきたグレイウルフのうち、2匹は木刀で叩き落とすことに成功した。ということは、残りの3匹はフリーな訳で……それぞれがリアンの両足、そして左腕に噛みついた。
痛ましい光景だ。ただの住人であれば苦痛で顔を歪めるだろう。事実リアンは痛みにより辛そうな顔をして……あぁ、「あれっ?」って顔に変わった。
「あれ?そこまで痛くないっス?」
まぁ不撓不屈の効果とレベルアップでDEF上がってるからね。痛覚耐性もちゃんと機能してるんだろう。痛みの加減は分からないけど、リアンの様子からして本当に酷い痛みではないのだろう。
「これなら……っ!えと、アネキならこうするっスね!」
痛くないと分かるとリアンの行動は早かった。木刀を右手に持ち両足のグレイウルフを叩き口を離させると、左腕に噛みついたグレイウルフを力任せに叩きつけた。うんうん、私ならそうする。リアンも力がついてきたなぁ、あたしゃ嬉しいよ。
ただ、これだけでグレイウルフは倒せない。噛みつきを解除させられたグレイウルフは一旦距離を取り、忌々し気にリアンを睨み唸り声を上げる。だが、忌々しいと思っているのは君達だけじゃないんだなぁ。痛みがない、そう分かったリアンは木刀を肩に担ぎ右手を前に出し挑発するように手招きをする。
「来いっすゴラァ!」
ノリノリだなぁ。あんまり調子に乗って返り討ちにならないでよ?
・
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接戦でした。グレイウルフ単体なら苦戦はしなかったかもしれないが、奴らの強みはその数にある。連携されれば辛いものがある。しっかりと攻撃を受け止めその上でやり返せば問題は無いんだけどね。
リアンも最初は連携に焦っていたが、すぐに馴れ攻勢に転じ、勝利を収め――
「アネキ!レベルが上がって職業を選べるようになったって天の声が聞こえたっス!!ヤンキーもちゃんとあるっス!」
無事レベルアップに成功し、職業選択まで来たみたいだ。
にしても、住人の場合は天の声なんだね。
「そら良かった。ちなみに他の職業は何があったん?」
「剣士と拳闘士っスね!」
おや、私の時は確か拳闘士とシールダーだったはず。ステータスの違いなのかな?剣士が選ばれたのは木刀を使い始めたのが早い時期だったからなのが影響しているのか。
しかし、どんな選択肢が出たところでリアンが選ぶ職業は変わらないだろう。
「ヤンキーでお願いするっス!……やったぁ!アネキ!自分、ヤンキーになれたっスよ!」
天に向かって請うたリアンが泣き笑いを浮かべ、手を振りながら私に向かって駆け出す。よし、これでリアンをヤンキーにするクエストは完了だね!
"クラスアップクエスト 無頼の輩をクリアしました!"
"これによりクラスアップが解放されました。"
来た来た来た!これですよこれを待っていたんですよ!
"職業をヤンキーからクラスアップ――イ××ント×より介×が×生――"
へ?何この流れ、前見たことが……
"以下の3つの職業より1つ職業を選択できます。"
"番長・龍人・龍巫女"
「あ、番長でお願いしまーす」
考えるまでもねぇ。
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