第63話 ファッションヤンキー、少女に髪留めをあげる
"只今を持って今回のイベントを終了いたします。AFWサービス開始して初めてのイベントでしたが、皆様いかがでしたでしょうか。イベント終了して本当に間もないですが、近日中にまた新たなイベントを計画しております。次のイベントは対戦系かも……?"
3日に及ぶプレゼントボックス探しのイベントが終了した。私が今回プレゼントボックスで入手したのは龍のワッペンに猪突のスキルチケット。そして私の手のひらの上にあるスライムの髪留めだ。
スライムの髪留め
青・赤・黄のスライムの意匠が施された髪留め。小さな女の子に大人気な一品で、世のお父さんお母さんは店にこの髪留めが並ぶと知ったら飛んでやってくるほど。また微小なりとも付けた者の能力も向上するので、そういった点でも人気が高い。そして当然偽物も存在する。これは本物なのでご安心。
DEF+1 DEX+1 スライム特攻(微小)
ただの髪留めではなかったか。こういう髪留めみたいなアクセサリー系の装備品、何個まで付けられるか分からないけど付けられるだけ付けられるなら強いよね。
しかし、如何せん私が付けるには可愛すぎる……AFWでもリアルでもな!ふぅむとなれば誰かにあげるという方向になるわけだけど。似合いそうな人と言えば……あぁ、あの人なら似合いそうだね!よし、そうと決まったら髪留めをスクショしてメッセージ送信っと。おっ、すぐに返信来た。
"送り主 パックン 件名 いらない"
"あんたが私をどう思ってるかよーく分かったわ。"
え、いや、ロリドワーフだしちょっと大人ぶる子供だと思っていましたけど……?もしかして大人?いやでもあんまりプライベートを詮索するのもなぁ……とりあえず次会った時謝っておこう。
となると、他に合いそうなのはピンキーちゃんくらいかな?シャドルも似合いそうだけど、ここは小さい女の子を優先した方がいいよね。ピンキーちゃんにメッセージ……ん?送れない?ログインしてないわけじゃないみたいだけど。リヒカルドに送ってピンキーちゃんにメッセージを送れないことも聞いてみようか。あ、こっちも返信早い。
"送り主 リヒカルド 件名 髪留め"
"オウカさん、数日ぶりです。髪留めの件ですが、是非ともお譲りください。ピンキーもスクショを見てとても気に入っています。それとピンキーにメッセージを送れない件ですが、一定の年齢のプレイヤーには返信メッセージを除きメッセージを送ることは出来ないんですよ。変な輩が変なメッセージを送りつけることなんてこういうゲームではざらですからね。"
なるほど、そういう理由なら仕方ないね。それに髪留めも受け取ってくれるみたいだし。よし、髪留めをメッセージに同梱させてリヒカルド宛に送信っと。……折角スライムラッシュを苦労して潜り抜けて手に入れたのにあんまり後悔する気持ちがないのは何故だろう。まぁピンキーちゃんが喜んでくれるならいいか。パックンさんには怒られたけど。
「ん?またリヒカルドから返信来た。」
"送り主 リヒカルド 件名 ありがとうございます。"
"髪留めありがとうございます。ほんのお礼の気持ちですので、お受け取り下さい。[髪留め付けたピンキーのスクショ]"
"リヒカルドさんより初級ポーション×5 プロテクトポーション×2 が届きました。"
おほー、これは有難い。それにピンキーちゃんもニッコニコして髪留めを付けているようでこっちも嬉しくなっちゃうよ。
よし、それじゃそろそろドヴァータウンまで戻りますか。
・
・
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無事、ドヴァータウンに戻ることが出来ました。そして私、今変な奴に絡まれてます。
「オイッ!お前僕の話を聞いているのか!」
「聞いとらん。」
「聞け!」
ドヴァータウンに入ったところでいきなり呼び止められたと思ったらプレイヤーであろう男が私の前に仁王立ちしたかと思えば、怒声を飛ばしてきた。
えーっと?この男、律儀に最初から説明してくれたことによると?男の知り合いの知り合いが、ウーノの街の道具屋でポーションを買おうとしたところ、厳つい格好した私が後からいきなりやってきて知り合いを無理やり追い出した上、ポーションを買い占めた、と。ふむふむ……
「あぁ、あれか!」
「あれか!じゃあない!お前、そんな格好して色んな人を脅して!迷惑行為をしているんだろう!」
「しとらんけど。」
というか、この男の知り合いの知り合いの言い分、ノコに事情聴取受けた時の通報者の言葉ほぼそのまんまじゃん。あー何か私たちを中心にギャラリーが出て来始めてきたな。まさにこちとら見世物じゃねーぞ状態。
「口では何とでも言える!」
「バットで打ち返したるわその言葉。それに俺のこの格好はただのRPじゃけぇ。」
「ロールプレイでそんな事する奴がいるか!」
「目の前におるんじゃけど……?そもそもその知り合いの知り合いは何でぇお前じゃなくて運営に報告せんのんなら。」
「運営にそのような事実はないと返信が来たそうだ!どうせお前が何かしたんだろう!」
「一プレイヤーが出来るわけないじゃろ。」
やっばい、この正義の人やっばい。完全に私が悪者と認識している。私このゲームで迷惑行為一切した覚え……私の顔見て勝手に怖がられるのは私悪くないよね?さて、どうやってこの地獄から解放されようかなぁ。こういう手合って結構粘着してくるらしいし。かと言ってこいつのために暫くログインしないってのもなぁ。
うん?男の背後、あれに見えるは……リヒカルド?何かジェスチャーしてる。何々?僕が?電話?上?パタパタ……羽根?OK?よく分からんけど頷いておこう。一応フレンドなんだし、悪いようにはしないだろう。でもどこに電話するつもりなんだろう?
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