第31話 ファッションヤンキー、罪なし
ようやく書けるくらいには回復しましたが…文章大丈夫かこれ
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私の目の前に現れたノコと名乗った妖精は人のいい笑顔でお辞儀をすると、机を挟んで奥側のソファにちょこんと腰を掛けた。……あの、サイズあってなさ過ぎてスペース有り余ってるんだけど突っ込んじゃあダメ?
「あぁ、君も座ってくれ。別に今回は説教のために呼んだのではないのだからね。」
「そうなん?」
「そうなんだよ、ほらどうぞ。」
では遠慮なく座らせてもらおうかな。……むぅ、これはいい低反発ソファだ。家に欲しいね。
「さて、今回君を呼んだ理由だが、事実確認のためだ。"道具屋バルドレン"で暴力行為を受けたと通報が入ってね。通報者に話を聞くと君が加害者と聞いたのでね。」
バルドレン?道具屋は勿論記憶に新しいけど、バルドレンという単語は聞いた覚えがないんだけど、店名かな?
で、通報したのは間違いなくあの店主に突っかかっていた3人組の1人だろうね。懸念していたことが現実になってちょっとブルーになっちゃうな。でも通報されたのに説教じゃないの?
「彼らの言い分はこうだ。自分たちが道具屋で店主のバルドレンにポーションの在庫を聞いていたところいきなり君が現れて『俺が買うから出てけ』と言われ脅された――と。」
あ、バルドレンは店主の名前なのね、覚えておこう。
在庫を聞いていたとはまた、随分乱暴な在庫の聞き方があったもんだね。
私自身も乱暴な物言いをしたが、脅されたって言われるほどきつい言い方は……したかもしれないなこれ!そしてこれはRPだったからは言い訳にはならん奴だ!
「何やら苦悩しているみたいだけれど、バルドレン本人には事実確認済みで君に罪を問うつもりはないから。それに、君の撮った動画も確認したし。」
「本人確認?それに俺の動画を確認って見せてないんじゃけど!?」
こういう時のために撮影したけど私まだ提出した記憶微塵もないんだけれどどう言うこと!?プライバシーは!?
「あれ?利用規約とか読んでないのかい?AFWで撮影した映像・スクリーンショットの内容を僕らビルドは把握することが出来るんだよ。スムーズな問題解決とそもそも問題を起こさせないためにね。」
そうだったんだ……私、届いてすぐにゲームダウンロードして利用規約とかすっ飛ばしてたから全然覚えていなかったよ。
で?バルドレンもとい店主に事情聴取ってのは?ノコとかクギって世界に降り立つものなの?
「私は基本プレイヤー間の軽度のトラブルを解決する担当でね。事情聴取のために世界に降りることも少なくないのさ。……ふふ、実はビルドで一番忙しいのさ。」
疲れたような表情でどこか遠いところを見つめるノコはさながら生きている人間そのものだった。クギはあんなに元気なのに割り振られた仕事だけでAIと言えど、こうも活力が違うの?それともそういうキャラなの?
「私の事はいいんだ。オウカ、君の事なんだけどね、君のRPはやめるつもりはないのかい?」
「それは遠回しにヤンキーRPを辞めろってことなん?」
「いや、我らビルド並び運営陣はRPを歓迎しているからね、問題はないさ。ただ、問題を起こすつもりがなくてもそのRPには問題がどうしてもついてくるというのは理解してくれ。」
「おう。」
そりゃまぁそうだよね。ヤンキーなんてアウトロー的存在、いい印象持つ人間なんて少ないだろう。私だって現実のヤンキー怖いし。でもフィクション的なヤンキーにはちょっとした憧れがあるからRPをしているわけで……何か分からなくなってきたぞ。
あれだ、私は迷惑かけない程度にヤンキーをやりたいだけなのだ!
「結構。私から言いたいのはこれくらいかな。質問はあるかい?」
「俺を通報した奴らは何かしらのペナルティはあるん?店主脅したこととか」
「"私達から"は厳重注意だけだよ。」
「私達からは?」
ということは他の誰から何かペナルティをするということかな?
「さっきも言ったけど私の仕事はあくまでプレイヤー間のトラブル対応だ。プレイヤーと住人のトラブルの対応は管轄外でね。そっちのトラブルは現地の住人たちに任せることにしているのさ。」
「店主が通報したらノコじゃなくて衛兵?が対応するってことなん?」
「そうなるね。そして罪によっては所持金減らされたりアイテム没収……法の力で死罪になればキャラリセット……は無いけど滅茶苦茶な制限はかかるよ。くれぐれもそうならないように。」
そっか。まぁ私からあの3人に対して恨みらしいものもないしこれ以上は聞かなくてもいいか。それよりも私は薬草納品したいし。
いち早く次のエリアに行きたいからね私!
そんな私の気持ちを察してくれたのか、ノコはソファから飛び上がると話は終わりとばかりに手を叩いた。
「さ、時間をとらせてしまったね。お詫びとして気持ち程度の物だけどストレージにアイテムを送っておいたよ。使うなり売るなりしてくれ。では、会わないことを祈るよ。」
「おう、お疲れ。」
別れの挨拶を最後に部屋の中を光が包み、私はウーノの街へと戻ってきた。
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