第46話 ファッションヤンキー、初イベント

 さて、リスポーン地点の登録は完了!

 となれば私の次の行う行動と言えば、道場破りのリベンジを――流石に止めます。こうも完膚なきまでに叩きのめされると私の弱さが伝わってくると言うもの。悔しいと気持ちはあるけれど今は強くなるべきだ。もし引くほど強くなったのならその時また挑戦してみよう。

 では本来の目的の冒険ギルドにでも行ってみましょうか。ウーノの街にはなかった依頼とかあるかもしれないし。



 冒険ギルドに来て依頼を眺めているんだけれど何というか、何の変哲もない討伐やら採取の依頼ばかり。こう、代わり映えしないなと。

 とりあえず依頼を受けずに去るというのもアレなのでこのボートガス街道――ウーノの街とドヴァータウンを繋ぐ街道のことらしい――に沸くゴブリンチーフが率いるゴブリンの集団を2つ潰せというものがあったのでそれを受託。ついでに同じくポートガス街道に沸くシザースクラブのドロップするシザースバサミというアイテムを6つ納品する依頼を受託。これは道中に2つほどゲットしているからあと4つだね。

 お、受付のお姉さん私の顔見てビビらなかったね。少なくともウーノの街の受付の人よりかは慣れているんだね。でも表情がこわばっているのは……?



 やってきましたポートガス街道。と言っても門から出ただけなんですけれども。

 そう言えばメッセージ欄に1通メッセージが来てたね。シャドル達フレンドからじゃなくて運営からだったからスルーしていたんだけれど、改めて見るとイベント告知ってタイトルがあったね。これは見ねば。えーっと?


"件名 サービス開始イベント告知のお知らせ"

"この度はAnother fantastic world 通称AFWをお楽しみいただきありがとうございます。サービス開始から3日で多数のユーザー様からのアクセスを確認いたしました。つきましてはこのAFW最初のイベントを開催したいと思います。"


 へぇそんなにプレイしていたのね。いや私がかかわった人2桁も言ってないからあんまり実感ないんだよね。ソロプレイだしそこは致し方ない。

 で、イベント内容はっと。


"イベント内容といたしましては、簡単に言うと、宝探しゲームです。このメールが全ユーザーに届いてから24時間後に、AFWあらゆる場所にプレゼントボックスがばら撒かれます。それは道端だけではなく或いは住人の住居。或いはモンスターのドロップ。或いは空に、このメッセ―ジを書いている開発部の私ですら想像できない場所にまで配置されている可能性があります。皆さんにはそれを見つけ出してもらいます。"


 宝探しゲームかぁ。ユーザー同士のバトルロワイアルかなーなんて思っていたけれど予想は外れてしまったみたいだ。まぁ考えてみればバトルロワイアルなんて最前線のシャドルとか話に聞いたムラムラマッサンの独壇場になること間違いないもんね。少なくともシャドルと決闘した時、私に合わせてシャドルの力も下がっていたはずだから本来のそれとなると私なんて敵にすらならないだろう。そこらに歩いているモブレベルだよ。


"プレゼントボックスを獲得できるのはプレイヤー1人につき、3個まで。皆さんご期待の中身については……ご自身でご確認ください。しかし言えることは入手が困難な場所には相応の中身があります!……まぁその辺に転がっているプレゼントボックスにも或いはレアものが入っている可能性もありますが。逆に言えば難易度が高いプレゼントボックスでも、運が悪ければ薬草一枚なんてことも。ただし、開封前のプレゼントボックス及び開封後の一部のアイテムは譲渡禁止となりますので、ご注意ください。"


 これはあれか。寄生対策かな?中には強い人の後ろについていって困難な場所のプレゼントボックスをかすめ取ろうとする輩がいないとも限らないからそのための措置かな?

 えっとイベントの開催期間は3日間。スタートするのは……え?今日の11時?時計……もう10時59分なんだけど!?あ、ポートガス街道に出るまでの道中、何かプレイヤーたちが騒がしいなと思っていたけれどこれだったのね!?ってかここも騒がしい。


「お、おい!あれ!」

「はい!?何あれ!」


 周りの声に釣られて慌てて空を見上げるとあまりにも非現実的なものが……いやVRMMOに言うのも変な話かもしれないけどそれを差し引いても変な物――綺麗に装飾された巨大な箱が浮いていた。絶対あれ、イベント関連のものだよね……

 そして時計が11時を示すと、空に浮かんだ箱から光が漏れ、中から大小異なる光が無数に放たれた。今散り散りになった光がプレゼントボックスなのだろうか。目で追えるかなーなんて思ったけど普通に無理でした。

 

"サービス開始記念イベント開始!"


 そのようなウィンドウが表示され初めてのイベントが開催された。

 そして私の足元には……プレゼントボックスが。私はこれを……いや、流石に簡単すぎるし開けないよ。高確率で外れだよこれ。

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