第68話 ファッションヤンキー、軍団との初バトル

「来たぞおおおおおおおおおおお!!!」


 どこか喜色の混じったプレイヤーの誰かの声にその場にいた全員の目線がその方角へ向けられる。

 あれは……土埃?ん、んん?いや、よく見るとモンスターだ。それも1体や2体ではない……沢山だ!沢山のグレイウルフだのゴブリンだの、その他にも見たことの無いモンスターがこちらに向かって走ってきている。


「この数だと流石に迫力あるのぉ。」

「そだねーってことでお先に行ってくるよ!」


 そう言うとシャドルは空飛ぶ卵を引き連れさっさとモンスターの方へと駆けて行った。

 おっと、ぼうっとしている場合じゃないか。見るとシャドルだけじゃなくて他のプレイヤーも武器を振り上げ討伐へと向かっていった。私もこのビッグウェーブに乗らねば。よし、猪突発動。ガンガン進むぞ!

 ……にしてもかなりの混戦になりそうだけどプレイヤーの攻撃プレイヤーに当たらないのかな?私の場合震脚とかでプレイヤー転ばれても申し訳ないんだけど。あ、目の前でプレイヤーに流れ矢が。……頭に刺さったけどぴんぴんしてるね。しかも仲間と落ち武者になったとか言って笑い合ってるし、大丈夫そうなのね。


 おーおー、ようやく前線にたどり着いたと思ったら凄いねこりゃ。何がすごいって遠くからじゃ良く分からなかったけど、モンスター軍団、鎧だの剣だの装備しているのよ。何、本当に君ら軍団なの?その武具支給している奴らいるの?

 あ、モンスターの視線が私の方に……待って、いくら存在強調の効果でヘイトが溜まりやすくなってるからって多くない?

 えぇっと!?ゴブリン3体に人型の豚!?あぁ、オークね!4体!なんか鳥!ダチョウみたいね!ダッシュトリッチ?2体!

 い、いや、焦るなオウカ。焦るヤンキーほど無様なものはないぞ!ビビるなビビるな。立ち向かえ……!


「っしゃこいや!」


 威勢のいい声を上げて迫りくるモンスターを挑発する。あの、出来れば1体ずつ来てくれれば有難いんですけど……あ、はい無理ですよね。分かってました。


「ブゴォ!」


 オークの攻撃!巨大なハンマーでの横払い!ここは相手の攻撃力を推し量るために、敢えて受けるよ!どうせ踏ん張り所で即死にはならないからね!脇腹に結構な衝撃が走るが、私の体は微動だにしない。もっと言うとダメージも少ない。なるほど、あまり心配しなくてもよさそうだね!そしてそのままハンマーを掴んで持ち上げ……!待って今私のターンだから他のオーク殴ってこないで。あぁゴブリンもお止めください、短剣で刺してこないでください。ダッシュトリッチは背中蹴るな!突くな!


「うっとおしんじゃオラボゲェ!!!!」


 震脚ぅ!すっころぶ!あぁテメェ鳥お前らこけねぇのかよ!まぁいいやまずはゴブリン!不動噛行を振り下ろしまず1体倒す。すかさず2体目も脳天突き刺し。むっ、オーク共が起き上がったか。そしてダッシュトリッチは邪魔臭い!チクチクとあぁ!


「あ、あのぉ!お手伝いしましょうか!?」

「いらん!こいつらは俺の獲物じゃあ!」


 囲まれて攻撃されている私を心配しての事だろう、手助けの提案だったけど断らせてもらった。ふふふ、ヤンキーは自分の喧嘩に他人の力を借りないのだよ。……やっぱり助けてもらえばよかったかな。こいつ等思った以上に厄介なんだけど。特にダッシュトリッチ。素早い動きで私の背後に陣取って蹴ってくるんですよ。遅い私をいじめてますよ。

 くそう!とりあえず今は他を倒そう!オークA!威圧眼で怯ませてその隙にドーン!2体目も威圧眼……うぇっ効かない!?だったら猪突でショルダータックル!おぉ、吹っ飛んだ。しかもオークCも巻き込んでくれた。

 さてこれで残すはゴブリン1体、オーク1体、そしてダッシュトリッチ2体。あ、駄目だこのままだと体力危ういのでポーション一飲み。


「クェックェックェッ」


 ……初めてこいつの鳴き声聞いたけど、今絶対笑ったよねそうだよね?いーや、仮にただの鳴き声だとしても私には笑い声に聞こえた!

 許さねぇからなぁ?でも対抗手段がないのも事実。震脚は耐えられるし振り向いて攻撃しようにもその間に背中に回り込まれる。あ、ゴブリン死ねい。さて、どうしたものかな。……そうだ。気を反らせないかな?

 取り出したるは護衛中に手に入れた堅泥団子。それを軽くポーンと真上に投げてみる。そしてすかさず振り向く!よし!ダッシュトリッチ共は真上の堅泥団子に目を奪われてる。そのうちに不動噛行でその長い首を叩き斬る!


「鳥頭がオッラァ!!」

「「クェアアアアアアッ!?」」


 思った以上に簡単に狩れました。何でこんな苦労したんだ……

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