第67話 ファッションヤンキー、参加する
突如として始まったワールドクエストなるもの。私と竹輪天さんはお互いの目の前に表示されたウィンドウを凝視し、顔を見合わせる。
「竹輪天さん、こういうの遭遇したことは?」
「無い、な。となると君もか。」
うん、AFWを始めて幾日か経ったけどこんな大規模なクエストは初めて聞いた。そして私とプレイ時間帯が異なる竹輪天さんでも未体験ということはこれが最初なのだろう。
しかし、モンスターの大群ねぇ。今までで一番多かった戦いって……あぁ、護衛の時の盗賊か。あれモンスター扱いでいいのか、いささか疑問ではあるけど。でも今回はそんな規模ではないんだろうなぁ。シャドルとかこういうの好きそうというか輝きそう。
うん?さらにメッセージが来た。
"30分後に意思表示の選択肢が出ます。参加希望の方は、即特殊フィールドに転送されますので、それまでに各自準備をお願いいたします。なお、参加した場合冒険者ギルドより中級ポーション×5初級ポーション×10が支給されます。"
おぉ、参加するだけでポーションくれるのは有難いね。……もし使い切らずに取っておけばそれはそれで良さそうだね。
それにしても30分後か。私が準備するようなこと……うぅん、強いて言うならポーションとか投擲アイテム集めておくってのがいいのかもしれないけど……あんな風に焦って道具屋に駆け込むのは何かこう、違う感じがする。
やっぱりヤンキーなら今持ってる装備で堂々と待っていよう!そうだ、そうしよう!
「ところで竹輪天さんは参加するんか?」
「そうだな。まぁ、裁縫師でも何とかなるだろう。」
戦場をかける裁縫師、か。あんまり想像できないなぁ。
ここで竹輪天さんとは一旦解散した。私は良くても竹輪天さんには準備があるので、彼はさっさと行きつけという道具屋まで走って駆けて行った。
これで一気に暇になった。都合よく知り合いがそこらに歩いているわけでも無いし……しょうがない。ヤンキーっぽくベンチに腰掛けて地面に木刀突きさしてそれっぽく待っていよう。イメトレでもしながら。
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"30分経過いたしました。ワールドクエスト『ポートガス街道の軍勢』に参加しますか?YES/NO"
あれっ?もう時間経った?周りを見ると……おぉ、ポンポンと人が消えていってる。皆参加してるんだなぁ。勿論私も参加するわけだからYESを選択するよ。
"参加を確認いたしました。それではポートガス街道に転送いたします。ご武運をお祈りしております。"
ま、転送なんてされなくてもポートガス街道はすぐそこなんだけどね、何て言っちゃいけない。そもそも特殊フィールドって言ってたし、ポートガス街道はポートガス街道でも、微妙に違うのかもしれない。
さて、転送されたわけなんだけれども結構人いるなぁ。みんな揃って鎧だったりローブだったりファンタジー装備だねぇ。それに比べて私の学ランよ。なんだこれ、私だけ異世界転移してきましたってか。
「おー!オウカー!やっぱりいたー!」
「うぉっ、シャドルか。やっぱり参加しとったか。」
突然背後から何かが覆いかぶさってきたかと思えば、その声で正体がシャドルだと分かった。ってか本当に軽いなこの子。現実世界より軽くなってない?
「いやー、こーんなお祭りにオウカのキャラ的に参加しないわけないなーっと思ったんだよ!さっすが私。」
「おーおー、流石はシャドルちゃんじゃのぉ。……で、それ何。」
そう言って私が指さしたのはシャドル……ではなく彼女の背後のちょっと上。何か飛んでるんですけど?詳しく言うと卵に羽が生えて飛んでるんですけど?
「これ?この前のプレゼントボックスで出た卵!孵ったの!」
「いや、まだ完全に孵っとらんじゃろそれ。絶対にまだ途中経過じゃろうが。」
にしてもあの時の卵か。確かに見覚えのある多色の菱形模様。派手な演出してたからただの卵ではないと分かっていたけれど、まさか羽根だけ孵るとは……ぱっと見天使みたいな羽根してるなぁ。
「えー?そんなことないよ?だってもう魔法撃てるんだよ?この子。」
「撃つんか!?魔法を!?」
「うん!まだ注意を反らすくらいしかできないけどね!」
まるで褒められたことを喜ぶかのように、卵はシャドルの周りを忙しなく飛ぶ。ちょっと可愛いじゃないのさ。
しかし、羽根だけでも魔法が撃てるってこれ完全に孵ったらどうなるんだろう。
「あ、そうだ!オウカパーティ組も!」
「おぉ、パス。」
「分かってたけれど、ちょっとは躊躇してほしいという友達心!」
「それは本当にすまん。でもこういうのはソロでやりたいけぇ……」
別にシャドルが嫌いという訳ではない。でも、私は一匹狼なヤンキー目指しているから。……にしては結構人と関わっている気もするけど。
ちょまっ!やめろ卵!頭の上で跳ねるな!断ったからって攻撃すんなこいつ!
「あはは、オウカ好かれてるねー」
「好かれとらんぞこれ絶対!」
ダメージは入ってないけど当たってる感覚はあるんだからね!?痛くなくても殴られて嬉しい奴なんていないからね!いや、一定数はいるね!私は違うけどね!
……うん?何か聞こえたな?こう、叫び声というか鳴き声というか?
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