第124話 ファッションヤンキー、その目に起こる変化

 悶えているところに聞こえた犀繰の耳を疑うような言葉――私の眼そのものが光っている。いや、分かりやすい一文ではあるんだけど、それ故に意味が分からない。どんな原理で光ってんの!?


「ぬわああああ!!トルネイアどういうことじゃああああ!!」

「すまん、我も何が何やらで驚きだ。普通にスキル授けただけだから少し発光するくらいなんだが……?」


 普通でも発光するんですか、そうですか!ってかこれいつまで続くの!?何か心なしか目に熱がこもってきたような気がするんですが。これ大丈夫なの、主にリアルの方で。

 くそう、くそう!眩しくて周りが見え――あぶなっ!水の気配を感じたから湖に落ちかけたな!?危険は無かったかもしれんけど犀繰はせめて教えよう!?


"トルネイアよりスキル劣龍眼を与えられました"

"威圧眼と劣龍眼が統合――イ××ント×より介×が×生――スキル暴龍眼へと昇華しました"

"これにより、アバターに変化が発生いたしました"


 あ、光の中でもウィンドウははっきりと見えるんですね、助かりました。じゃあないんだよ。何か色々ツッコミどころの多いなぁ……劣龍眼はいいんだよ。トルネイアがくれたものだからね。その後よ。威圧眼と統合?暴龍眼に昇華?意味が分からんちん。で、極めつけはアバターに変化……?

っと、ようやく光が収まってきたよ。おろ?気のせいか同じ風景のはずが妙に綺麗に見えるというか……?トルネイアさんあなたそんなに鱗キラキラしてましたっけ?それに何そんなにこっち見てるんですかね。


「驚いた。まさかそのような影響が出るとは思わなんだ」

「あン?何言っとるんなら」

『姉貴、目に変化が生じている』


 目に変化?そう言われても自分の目が見えるわけ――あぁ、湖の水面の反射で見りゃいいのね。

 ……はい、一旦水面から視線外しますね。目擦りますね、意味あるか分からないけど。はい、深呼吸してもう一回見ますよー。変わりっこないのは分かってたけどもね?


「何じゃあこの目ぇ!?」


 私のお目目の瞳孔が縦長になってる!?何か目の周りに鱗みたいな模様が浮き出てる!?ぱっと見蛇だこれ!どういうこっちゃねんこれ!慌てて原因の一端であるトルネイアに視線を向けると奴は露骨に顔を反らした。


「おいゴルァ!」

「すまん、弁明させてくれ。まず統合して昇華は狙ってやった。それは間違いない。ただ、我が想定していたのは"龍圧眼"となるはずだったのだが……?なんだ、暴龍眼とは!何で体にまで変化が起こっておる!さっぱりわからん!」


 後半はもはや逆切れではないだろうか。しかし、トルネイアの言うことが本当なら何か不確定要素があったということになる。ログに何かしらヒントがあるのかな?……あれ?暴龍眼へと昇華のログの一文に不自然な空欄がある。何か書いてあったと思うんだけど。

 うーん、トルネイアはぶつぶつと呟き始めて自分の世界に入ってしまったようだし暴龍眼の能力でも見てみようかな。


暴龍眼

パッシブスキル

睨み付けることで目を合わせた相手の動きを確率で止め、更に確率で恐慌状態へと陥らせる。この確率は対象によって上下する。プレイヤーもしくは特定のNPCが対象の場合、対象のレベル関係なく使用者に恐れを抱いた時硬直する。MPを消費することで目から光を発しそれを凝縮し光線とすることが可能。

――その目はまさに荒ぶる龍の如し。心の弱きものは彼の者の目を覗くことなかれ。金の威が心を吞み込まんとするだろう。


 物騒だなこの目!アクティブスキルじゃなくてパッシブスキルなのが、なお性質悪いな!しかも、威圧眼にはあった、同等以下にしか効果がないとか連続使用は確率が下がるってのが無くなっている。で、何?MPを消費したら目が発光?凝縮して光線?待って、スキルの管理もしているであろうビルド達は私をどういう風にしたいのかな?目から光線出るヤンキーなんて見たことないよ!それはもうギャグマンガの世界なんよ!極めつけはフレーバーテキスト。これ私、街にいていいのかな?でも、威圧眼でも睨まなきゃ発動はしなかったし暴発なんてことは……無いよね。流石にそこまでは……不安だなぁ

 でもまぁ、取れちゃったものは仕方ないし、ちょっと目からビーム試してみようかな。えーっとそこの岩でいいかな。MP消費して発光っと。


『姉貴、見た目間抜けだぞ』

「言わんといてくれ……」


 犀繰からの指摘に涙を吞みながら、今度は光を凝縮……目を細めりゃいいのかな?こうすりゃっとぉ!?


「つらぬいた」

『貫いたな』

「これもはやレーザーでは?」

「何だそのスキルは……っ!!!」


 トルネイアさん、そう仰られても……少なくとも私のせいではないことと、想定外ではあるけれど強化自体はされたのでまぁよしとしてもらおう。そういう私に、トルネイアは最後まで納得いかない様子だったけど最終的には「疲れたから帰って寝る」と言って別れを告げて湖の中へと潜っていった。ここが帰る家では無かったご様子。

 さて、私も街に戻ってもっかいイベントに挑戦しようっと。色々気になることはあってもやもやするけれど、暴れて忘れちゃおう!

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