第125話 ファッションヤンキー、対戦相手に相談される

「っ!?お、お前止まれっ!」


 止まれと言われたので止まりました。そんな私が止まらされたのは、ドヴァータウンの門。おかしいなぁ……この前みたく、犀繰に乗ったまま通り過ぎようとしたわけでも無いんだけれども。ただ単に歩いて抜けようとしただけなんですが?まぁ異議申し立てて暴れたらそれこそ犯罪者になっちゃうから大人しくしていよう。

 私を止めた衛兵は私に近づくと、何か気付いたような顔をして、私の足元から頭まで見ると、険しい顔を綻ばせた。


「あぁ、なんだお前かぁ!」

「俺じゃけども」


 どうやら私と気づいてくれたみたいだ。ってかこの衛兵、犀繰に乗ってた時も止めた衛兵だよね。ばっちり顔を覚えて犯罪なんてしてないの知ってるはずなのに、何で止めたんだろ。そう聞いてみると


「いや、明らかに恐ろしい目つきをした者が門を潜ろうとするんだ。止めなきゃ衛兵じゃないだろう」

「そりゃそうじゃけども。俺の顔は知っとるじゃろうが」

「あぁ、お前ほどの顔は忘れようとも忘れることは出来んな。ただ、お前その目はどうした。一層凶悪になってないか?そのせいでお前と気づかずに止めた様なもんだからな」


 今さらっと失礼なこと言われた気がするけど。にしても目かぁ。トルネイアから授けられた暴龍眼、睨みつけるだけで恐慌状態に陥らせることもできるみたいだけど、睨まなくても警戒させるくらいには厳ついみたいだ。私が相手の立場でもそうするか。

 とりあえず目の件は、スキルが進化したら何かこうなったと言ったら納得してくれた。なんでも、このゲーム……AFWの世界ではスキルの影響で体に影響が出来ることが稀にだけどあるらしい。もしかしてプレイヤーの中にも同じような人がいるかもしれないね。

 さて、衛兵は私だということで納得してくれたみたいであっさり通してくれた。さて、ちょいとぶらぶらしたらイベント潜ろうかなーっと



 暴龍眼の影響、顕著過ぎません?ドヴァータウンに来てからそれなりに住人と交流してきたはずなんだけどね。一様にビビられましたよ。挙句の果てに通りすがったムラカゲに「化生が現れたかと思った」とか言われた。失礼だな、あのおっさん。

 まぁ、ヤンキーなんて恐れられてなんぼってもんだよね。――限度はあるけど。

 んじゃま、早速イベントに再び参加っと


"2人のマッチングプレイヤーの了承を確認いたしました。あなたの対戦相手……『ぱくあぷ』。戦闘フィールド……雲になりました。5秒後にフィールドに転送いたします"


 よし、これでOK。フィールドが気になるけどまぁ行ってみればわかるだろう。と、意気込んだところで何か声が聞こえる。


「ヤンキーちゃんどしたのその目!凄い気になるんだけど――」

「あ、すまん戦闘行ってくるわ」


 聞きたいオーラ前回の情報屋がやって来たけど、残念ながらタイミング悪くカウントダウンは始まってしまっている。解除することは出来ないので無情にも私はフィールドに転送されることとなる。まぁ、情報屋のことだから戦闘が終わるまで待機してるんだろうけど。



「うわっ、メルヘン……」


 フィールドに転送された私の第一の感想がそれだ。目の前に広がるのは白いふわふわとした地面。それとピンク色の空。あれだ、女の子が思い描く雲の上の世界って感じ。そして私と相対するはこの世界に見事にマッチしたふわふわした衣装の女性プレイヤー。杖を持っていることから魔法職かな?

 この空間、私居てはいけないのでは?メルヘンな世界にヤンキーって。


"それでは『ぱくあぷ』対『オウカ』の対戦を開始いたします。ready……"

"GO!"


「あの!」


 おや、戦闘が始まるや否やぱくあぷさんが話しかけてきた。ふむ、別にこのタイミングで攻撃しても構わないんだけど、それは少し卑怯ではあるからね。応じましょう。


「なんじゃあ」

「す、すいません!その目どうされたんですか!?アバターの設定でそういう風に出来るんですか?」


 目?あぁ暴龍眼の事?そういや、アバターって目の色は弄れるけどこういう蛇目って獣人選ばない限り無いんだっけ?獣人でも猫目くらいしかないみたいだけど。そんな中、ぱっと見ヒューマなのに明らかに人間とは違うその目がプレイヤーとして気になるんだろう。


「俺のこれはスキルの影響じゃあ。詳細は言えんけどのぉ」

「スキル、ですか……」

「目弄りたいんか?」

「ええっと、ほら私見た目魔法少女じゃないですか」


 そだね。ピンキーちゃんは幼いから小っちゃい子のコスプレ感があるけれど、目の前のぱくあぷさんは中学生くらいの身長でふわふわの金髪。アニメに出てくる本物の魔法少女感がある。……うん?何か矛盾しているような気も?


「衣装とかは結構こだわって、髪色も弄ったんですけど……目に星とか入れたいなって」

「なるほどのぉ」


 言われてみれば目の中にハートとか星とかあるよね。なるほど、ガチ勢はそこまで極めたいんだなぁ。ゲームだからこそできることだもんね。私もヤンキーしてるから良く分かるよ。

 ただ、スキルの習得までは力には慣れないなぁ……多分私のこれは教えたところでどうにかなるものじゃないと思うし。


「すいません、急に変なこと聞いて!」

「別にええよ。んじゃあやろうやぁ!」

「はい!"スターシャワー"!」


 スキル名か、はたまた魔法名か――ぱくあぷさんがそう唱え、杖を振るう。その杖から何か……は出なかった。首を傾げていると何か堅いものががこつんと頭に当たった。

 雲の上なのにあられかな?なんて上を見上げると、落ちて来ていたのは星だった。それもデフォルメされた小さな☆が!大量に!



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スキル紹介


龍圧眼

パッシブスキル

同等以下の相手を睨みつけると、対象者は龍に睨まれたかのような感覚に陥り、恐怖状態となる。プレイヤーもしくは特定のNPCが対象の場合、対象のレベル関係なく使用者に恐れを抱いた時硬直する。対象が劣龍種の場合、効果は上昇する。この目を持つ者は龍人種に一目置かれる。

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