第123話 ファッションヤンキー、トルネイアと…
そりゃね、私だって強くなってますよ?新しい装備に新しいスキル。そもそもあの時と違ってレベルも上がっている訳で。だとしても……このトルネイアに勝てるビジョンは見えない。
かと言って黙ってやられるor逃げるというのもヤンキーとしてあってはならない。であれば?そう、戦うのみである。そりゃ前回こそ何もできずに水流の呑まれてやられてしまったけど、一撃位は与えて――!!
「待て。此方は戦うつもりなどない」
「……んぇ?」
声?この場には私と犀繰しかいない。けど犀繰はこんな女性のような声じゃない……ということは?
もしかしてと思い、トルネイアの顔をバッと見上げる。前回会った――というより助けた時、トルネイアは怒り狂っていた。私の必死の弁明も効かない程にね。でも今の奴の眼は、何て言えばいいのか、落ち着いている?
「今のはお前なんか?」
「その通り。我が名は青龍トルネイア、水を司る龍である」
名前は知ってる。キルされたときに、ログに表示されていたからね。水を司るってのは、まぁ何となく分かる。分かんないのが、何でいきなり現れたって事。戦うつもりは無いと言っていたけど……正直信用ならん。武器は構えて、いつでも戦えるようにしておこう。
「……信用できぬか。無理もない。寧ろその反応が正しいのだろうな」
「自分がやったことは覚えとるんか?」
「あぁ。あの蜘蛛にいいようにやられた所を救ってくれた君を攻撃してしまった。屈辱的だったとはいえ、それを無関係の者へぶつけてしまった。龍として恥じ入るべき行為……申し訳なかった」
そう言うと、トルネイアは湖から這い出るとまるで土下座をするかのように地面へと伏せた。
え、謝るの!?話し方とかで尊大な感じなのかと思っていたけど、汚れるのもお構いなしといった感じだ。
そんなことされると、攻撃するわけもいかないよね。
「分かった、謝罪を受け入れるけぇ、顔上げてくれや」
「感謝する――それで、だ。謝罪の意を込めて君に……すまない、名前を聞いてなかった」
あー、そうか。NPCがプレイヤー倒したところでそのログがNPCに流れるわけはないか。まぁ龍に名前を教えたところで詐欺られるわけでも無いだろうし、ここは素直に教える。
「そうか、ではオウカ。君にこの私の力の一部を授けたいと思う」
「トルネイアの力?ってことは水の力なんか?」
「そうだ……と言いたいところだが」
嫌な予感がするのは気のせいじゃないよね、これ。私を見下ろすトルネイアの眼がジト目と化しているんだけど。
「属性の力を扱うには相応のMP、そしてINTが必要なのだが……君には、その……」
「お気遣いどーも……」
龍には俗にいう鑑定スキルでも持っているのだろうか、私のINTとMPのなさをズバリ見抜いた。見抜かれてしまったか……私の馬鹿っぷりを。ってかトルネイアの口ぶりからしたら私ってオウカでプレイする限り魔法はやっぱり絶望的なんだね、まぁそれはしょうがない。
「そうなると次は装備は……む、君は女性か。……その服はあれか?そうでなくてはダメな奴か?」
「出来れば男っぽい、無骨なものがええのぉ」
「う、ううん……武具は……近接か。我の渡せる服装備はその、性別によって変わってな?女性だとその少し露出の多めのな?」
「スケベか?」
「いやいやいやいや、待ってくれ。我の力は先程も言った通り水だ。必然的に水を被る機会も増える。それには布が少ない方がいいのだ。決してスケベとかそう言うのは無い!」
なんて力説しているけど、このゲームに服が濡れて動きにくくなるなんてシステムあったっけ?もしくはそういう設定なのかな?納得できる部分はあるし、そう言うことにしておこう。でも、露出多め、女の子っぽい装備になるんだったら装備できないね。あれ、じゃあ武器装備は?
「杖か弓だ」
「無理じゃのぉ」
杖はともかく弓は格好いいと思うんだけどね……プレイスタイルには合わないよね。
「そうか。ならどうするか……何もしないというのも我の沽券に関わる。む、よく見るとオウカいい眼をしているな」
「眼ぇ?」
怖がられることこそあれ、いい眼をしているなんて言われたことは無いんだけれども。褒められて悪い気はしないけれども。
「ふむ、スキル"威圧眼"か。なるほどなるほど……よし、オウカが良ければこの威圧眼を昇華させることが出来るがどうだ?」
「"威圧眼"をか!?」
変な声出ちゃったけど龍ってそんなこと出来るの?一番初めに習得した威圧眼を強化してくれるのならばそれに越したことは無いね!
私がそれを了承すると、トルネイアも満足そうに頷き、何事かをむにゃむにゃと唱えた。すると――
「ぎゃああああああああああ!!」
目に飛び込んでくる強烈な閃光!不意の出来事に私は目を抑えその場で転げまわることに。ってか抑えてるはずなのに眩しいんだけどなにこれ!
「さ、犀繰!これどうなっとるん!?何が光っとるんじゃ!?」
『姉貴の眼そのものが光ってるぞ。今も指の隙間から光が漏れてる』
どゆこと!?
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