第111話 ファッションヤンキー、喧嘩友達の元へ

 対戦系イベントが発表されてからフィールド上でプレイヤーと遭遇する回数が増えた気がする。皆考えることは同じでスキル習得とか新装備の素材とか探しているんだろう。シャドルなんかはフィアリー草原に行ってるって聞いてないのにメールが来た。私が一撃で瀕死になるところに行ってるのねあの子……

 そうだ。鍛えるって言うのならムラカゲが師範代のバディウス流剣術道場に行くってのも選択肢にはなるのかな。ま、私の場合ヤンキー故型にはまった剣術なんて習ってられないんだけどね。はみ出し者だけに。

 さて、私はと言うと――


「ウホオオオオオオオアアアアアアアア!!」

「だらああああああああああああああああ!!」


 ある意味お約束のコング・コング・コングと殴り合っています。不動噛行も初代木刀も使わず初期メリケンサックを装備してでの殴り合い。それもお互い回避行動をとらずにだ。

 最初は自己満足で私だけでも避けずに殴り合おうかなーってやってたらコングが途中で察してくれて殴り合ってくれるようになった。AI凄いなぁ……

 殴りながら思うけど私も強くなったものだね。装備のお陰ってのもあるけれどこれだけ殴られても体力には未だ余裕がある。あ、回復もしないでおこう。そもそも飲む暇ないけど。

 うーむ、しかしこれはアレだ……楽しいね。互いが互いを削り合い強きものを決める……これぞ男同士の戦いってやつだね、片方女だけど。


「ハッハハハ!楽しいなぁコングぁ!」

「ウホォ!」


 えぇっ?完全に人形に話しかけるようなテンションで言ったのにまさかの返答してきたよこいつ!しかも……へっいい顔してんじゃねぇか。でもコング君?君の拳いつの間にか電気纏ってるんだけど何さらっと本気出しちゃってんの!?あ、でもダメージは増えるけど麻痺状態にはならないのね。もしかしてコングのそれ痺れさせるとかさせないとか出来るの?便利ーじゃないよ!さっきまで私優勢だったのに分からなくなってきた!

 くそう、負けてられるか!


「オラオラオラオラオラ!」

「ウホウホウホウホウホ!」


 某ラッシュをマネしてオラオラ言ってるけどこういうのって気分だよね!声出しただけでダメージ上がるわけないもんね。さて、どうしよか。今まで殴り続けた手前いきなり震脚だの威圧眼だの使いのも気が引ける。コングに対して失礼だよね。じゃあどうすればいいのか、そう殴りながらも思案を巡らせていると……来た。


"ターンアタックのレベルが1上がりました"

"戦闘行動により弾拳を習得しました"


 やった!ターンアタックレベルアップした!これで攻撃力上昇につながるけど……弾拳の方は何?弾?もしかしてロケットパンチとか波動拳とかそういう類の技!?え、待って殴り合いの途中なんだからテキスト見るなんて出来ないよ!?とりあえず、終わってから見る生きていれば!と思い私の拳がコングの拳とぶつかり合ったところで変なことが起こった。


「ウホッ!?」

「はぇっ?」


 今までも拳同士がぶつかり合ったことはあったけどその時は威力を相殺し合ってもう片方の拳で殴るってやっていたんだけど、今回はそうはならなかった。一方的に私の拳がコングのそれを弾き返したのだ。あ、これが弾拳かーなるほどなぁ……

 拳が押し返されたことが予想だにしなかったのか、コングはふらつき攻撃の手を止めてしまう。勿論そんな分かりやすい隙を私が見逃すわけもなく――


「ウォラアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 好機とばかりにあらん限りの拳を叩き込んだ。コングも状況を立て直すべく殴ってくるが、勢いを失ったためか、攻撃力は減少していた。ふっ、そんなへなっちょこパンチ……私のターンアタックの餌になるだけさ!

 そして、最後にコングの顔面に全力の拳を叩き込んだところで、コングは力なく倒れ伏し、そして消滅した。……まぁ、うん、ギリギリHP残ったところで肩を貸して起こして「ふっ、楽しい喧嘩だったぜ」みたいな感じで泥臭い友情みたいなの芽生えないかなーって思ったけど、そんなことしたら経験値入らなくなっちゃうよね。そりゃ駄目だわってことでとどめ刺しました。慈悲は無いね。


"ワンズフォレストのBOSS コング・コング・コング を討伐いたしました。"

"ボスを討伐いたしましたので10分間、半径20メートル間にモンスターは発生いたしません。"


 ま、レベルは上がらないよね。縛りプレイしたから割かし苦戦したけど適正レベル結構超えてるからね……そりゃ大した経験値にはならないよね。でもターンアタックとか弾拳だけでも上々だ。おっと確認をせねば


弾拳

パッシブスキル

拳での攻撃時、稀にノックバック(小)状態を相手に与える。これは武器相手にも発動する。※武器に対して攻撃する際、特定のスキルを持っていない場合自傷ダメージを負うため注意


 思った通りのスキルでした。でもこれ使用回数とかじゃなくて確率発動なのね。欲しい時に来なくていらない時に発動する光景がありありと浮かぶようだよ……でもさ、さっきのコング戦でも思ったんだけどさ。

 私のスキル、地味過ぎない?私の見た目と反して。

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