第96話 ファッションヤンキー、凄いのと出会う
"BOSS マザーファンキースパイダー を討伐いたしました。"
"大蜘蛛 マザーファンキースパイダー討伐 依頼達成しました。冒険ギルドにて達成報告を行ってください。"
"レベルが1上がりました"
"轢き上手を習得しました。"
"蜘蛛キラーを習得しました。"
ちょっと待って?勝った感動が習得したスキルによって上書きされちゃったよ?
レベルが上がったのはいいよ。子蜘蛛もいっぱい倒したし経験値もたくさんだったんでしょう。蜘蛛キラーはもう蜘蛛倒しまくったから手に入ったんでしょう。
轢き上手って何?聞き上手みたいな名前だけれど物騒さが半端ないよ?子蜘蛛轢きまくったからなの?その結果ある意味不名誉な名前のスキル手にしちゃったの?どーせ乗車時の突進ダメージが上昇するとかそんなの……あれ?ボス討伐後の10分間モンスター出現しない云々のメッセージは?
その異変に気付いたとき、少しの衝撃が私を襲ったと思ったら――満タンに近い体力が尽きていた。
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"パッシブスキル 踏ん張り所の効果が適用されました。なお、次の発動は30分後です"
「あぶねぇのぉ!」
踏ん張り所がなければ即死だった……なんて言っている場合ではない。タフさには自信があるはずの私が一瞬にして削られるなんてそうそうあったものじゃない。私の正面には何もいなかった。それに衝撃は横から肩パンされたように感じた。となると、横……へぁ?
1人で良かった。もし誰かと一緒に来ていたら今の私の表情を見られたら笑われていたことだろう。特にシャドル。そう自分でも自覚できるくらいに私は大口を開けていた。だって目の前に――青い龍おるもん。西洋の竜じゃなくて日本昔話に出る様な龍ね。
「ほう?矮小なる人間の癖に我が攻撃を受けて生きておるか」
「……何で龍がここにおるんなら」
「我を蜘蛛に捕らえさせておいてよく言うわ、人間!」
蜘蛛に捕らえさせておいて……?待って身に覚えがないんですけど?そもそも蜘蛛使役してないし。寧ろ倒しているんですが?それに捕らえられたって……こいつ、大蜘蛛にぐるぐる巻き+チューチューされていた仮称ウナギなの!?確かにサイズ的には同じだけど、龍だったのね?
んでもってお怒りだね?いや、大蜘蛛にされた所業を考えれば当然なのかもしれないけど、私関係ない!
「待てや、俺は大蜘蛛をけしかけとらんし、そもそもお前の事なんて――」
「問答無用!」
問答させてよ!?龍は大きな口を開けその中心に大量の水を発生させる。やっぱり青い龍だし水魔法使うんだねぇ。はー、魔法とか使ったことないけど水魔法ならピンキーちゃんが使ったのを見たことあるんだけどね?
あなたのそれその比じゃないよね?しかも技の発生速いよね?待って今から私ポーション飲むんだけど本当に待って踏ん張り所使えないんだから問答して――あひん。私は避けることも出来ず龍が放つ奔流に巻き込まれたのでした。ガバゴボゲボ……
「――む?その背の――はまさか――この者は」
私がデスポーンするまでの間、青い龍が何か言っているような気がしたけど……何言ってんだこいつ。
"オウカがユニークモンスター青龍トルネイアにキルされました。"
"パーティの全滅を確認。最後に寄ったドヴァータウンの教会にて蘇生されます。"
"キルモンスターとのレベルの差を確認。デスペナルティは発生しません。"
へぇ、あの龍トルネイアっていうのかー、へぇ、ユニークモンスターっているんだなー。……待って?私、大蜘蛛のドロップアイテム拾って無くない?このゲーム、ちゃんと自分で拾わなきゃダメなシステムじゃなかったっけ?あああああああああああああああああああああああ!!!!
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「はい、確認しました。マザーファンキースパイダーの討伐、おめでとうございます。こちら、報酬です。え?龍?ハハハ、あの洞窟に龍が現れるなんて報告聞いたことありませんよ。ウナギと見間違えたんじゃないですか?」
死に戻りした私はとりあえず冒険者ギルドに向かい依頼の完了報告を行った。ついでにトルネイアのことも報告したけど、冗談だと思われたのか、笑って返された。いやいや、龍をウナギと見間違えはしたけどウナギを龍と見間違えはしないからね?え?いるの?でっかいウナギが?マジ?
でもログを見る限りは龍なんだけど?と言っても住人には理解できないだろう。私は諦めて冒険者ギルドを後にすることにした。
「――あ、犀繰!」
ギルドを出たところで思い出した。私、犀繰出しっぱなしだった!洞窟に置きっぱなしになってないよね!?慌ててインベントリを確認すると……あぁ、良かった。ちゃんと犀繰インベントリに戻ってた。ロストしてたらしばらくは立ち直れないかもしれないしね、安心したぁ……
安心したところでログアウトしよう。そろそろ今日の分の宿題しないとね。ところで、トルネイアは最後に何て言ってたんだろう。
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