第82話ファッションヤンキー、次にやりたいことを見つける

 ムラカゲを制し、金色に輝く鱗を手に入れた翌日。私はAFWにログインしたものの、ある重大な問題に差し掛かっていた。


「何しよ。」


 そう、やることが思いつかないのだ!こういう類のゲームって自由過ぎてやることが見つからないってあるよね。リベンジ果たしたムラカゲ以外に特に戦いたいって相手は……いないかなぁ。あ、ムラムラマッサン……はそもそも会ったことないしどこにいるかも知らないし、いいや。

 ってか連続でサイとか道場の師範とか強敵連戦で今私はお腹いっぱいなんだよね。だからちょっとそれ以外の事を……っとその前にムラカゲ戦で習得した"鉄拳"を見てみようかなーっと。ま、名前からして何となく分かるけどね。


鉄拳

パッシブスキル 拳での攻撃を強化する。また、硬度の高い物を殴ってもダメージを受けなくなる。


 あらやだ、やっぱりそのまんまじゃん!でも固い物を殴ってもダメージを受けないのはありがたいというか……ダメージ受けることあるのね。気にしたことなかったけど鉄とか殴ったら手が痛くなるのは当たり前だわ。それを無視できるのは有難い。はい、終わり。


 さてとさてと、スキルを見終わったことだし本題に入ろう。今私が一番気になっているのは、金色の鱗――ではなくゴーレムの金核だ。鱗も気になるっちゃあ気になるけど、いささかヒントがなさすぎるので、いずれ分かるときまで取っておこう。謎解きとか苦手だし。

 それよりもゴーレムだ。これさえあればゴーレムを動かすことが出来るってんだから面白そうじゃない?……で、どうやってゴーレムってできるの?

 私のイメージではゴーレムってレンガが人型に積み重なっているって感じなんだけど。もしくは、土人形とかそんな感じ。詳しそうな知り合いに聞いてみようか。えー、メルメルっと


"送り主 パックン 件名 知らない"

"あらレアドロップじゃない、おめでとう。でも知らないわよ私。そもそも私武器専門なんだけど?アンタ私を何でも知ってる人と思ってない?"


"送り主 シャドル 件名Re:ゴーレム "

"うわーっ!オウカもそれゲットしたんだー!いいなぁ一緒にドラゴギル倒したフレンドが手に入れてたんだよー。でも残念!その子も私もゴーレムの作り方知らない!情報屋さんなら知ってるんじゃない?"


"送り主 リヒカルド 件名Re:ゴーレム"

"ゴーレムですか。確か商人ネットワークで『ゴーレムは力作業をさせるのに便利だ』『いくらか燃料は必要だけど人件費とか必要ないから助かる』『でも核が入手困難』なんて噂は聞いたことありますね。ただ、製法となると聞いたことがないですね。ところでピンキーなんですがね、最近新しい魔法を覚えましてこれがまた発動するときが可愛くてですね、思わずスクショを撮ってしま(以下ピンキーのことについて10行)"


 うーん、フレンドの中でも特に詳しそうな3人に聞いてみたけど芳しくないなぁ。これはいよいよもってシャドルの書いてある通り情報屋に聞いた方がよろしいのでは。……とは言え情報屋は神出鬼没だし狙って会えるような存在じゃあ――


「あ、ヤンキーちゃんじゃん。やっほー」

「おー。……えぇ?」

「何だよヤンキーちゃん。そんな変なものを見る目で?」

「情報屋って神出鬼没なものでは?」

「いや、俺別に常に陰に潜んでるわけじゃないよ?」


 都合よく情報屋の方から現れてくれたけど、ここ普通に大通りなんだけど。大通りで顔隠して漆黒のローブって完全な不審者なんだが?私が言えた義理じゃないけど。

 とは言え、本当に来てくれたのは有難い。急いでいる様子でもないようなので早速ゴーレムについて聞いてみた。


「ふーん、ゴーレムの金核か。これまた珍しい物を手に入れたな。さて、ヤンキーちゃんが欲してる情報だけど……あるんだなぁこれが。」

「ほんまか!?なら教えてくれぇや!」

「なら5000Gだな。ほら、情報屋だからそこは、な?」


 人差し指と親指で丸を作りにやにやと笑う情報屋。それっぽいわー、こんな大通りのど真ん中じゃなかったら様になってたわー。今だと普通に怪しい人。ヤンキーに話しかけてるヤクの売人みたいだ。それだと私も危ないな。

 さて、5000Gということだけど、払えない金額じゃないので一括払いでPONとね。


「はいはい、毎度ありー。んじゃ、ゴーレムなんだけど作ってるプレイヤーいるんだよね。」

「え、おるん?」

「おるおる。強いって訳ではないけどな。趣味寄りのプレイヤーだ。一応特殊なスキルがいるって訳じゃないから、材料さえあればヤンキーちゃんも作れるけどそこんところどう?」

「絵なら簡単なキャラクター程度は描けるんじゃけど立体物は無理じゃのお。」

「描けるんだ……ド下手かと思ってた。」


 今更だけど割と失礼だなこいつ。


「それなら専門の奴に頼んだ方がいいかもな。っても相手はプレイヤーだ。連絡は取ってみるが断られたら紹介は出来ないぞ。」

「それはええけど、その場合5000Gは?」

「その場合は必要な材料教えるから。ま、俺の予想では大丈夫だと思うけどな。んじゃ、ちょっとメッセージで聞いてみるわ。ログインしてるみたいだし。」


 そう言うと、情報屋はウィンドウを開き、操作し始めた。思った以上にとんとん拍子で話が進んでいってるけど作ってもらえるとして、どんなゴーレムを……そうだ!

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