第6話 ファッションヤンキー、ヤバいのに出会う
4話にて依頼の内容を少し変更しました。
********************************************************************************
グレイウルフとの戦闘で威嚇用に投げたゴブリンの棍棒を回収しようとしたらその近くに見覚えのないアイテムが転がっていました。
それがこのトレントの木材。何故グレイウルフ4匹との戦闘中にトレントの木材がドロップするのか、これが分からない。
他のプレイヤーのドロップアイテムだったのを気づかずにスルーしてしまったのかな。……ん、いや待って。確か私がこの棍棒投げたとき、何か聞こえた気がしたよね?もしかして、それトレントだったとかある?だとするなら、凄い偶然もあったもんだね。
……一応メニュー見てみようか。あ、あった。戦闘ログ!あーグレイウルフの間にちゃんとトレント倒しているわ。ということはこのトレントの木材は誰の者でもなく私の物ということが判明。心置きなく回収しましょうそうしましょう。
改めてトレントの木材ゲット!これでパックンさんに木刀を作ってもらえるぜひゃっほう!
さて、依頼も達成したし求めていたアイテムも手に入れたことだし森から脱出しよう。と、思ったけどもうちょっと探索してみよ。依頼クリアでパックンさんお求めの金額に達するけどその後金欠になっちゃうからね、売れそうなもの集めよう。
その後、私はそれはもう順調に森の奥へと歩みを進めていた。
ゴブリン?メリケンキック。
グレイウルフ?メリケンパンチ。
スライム?物理効きづらかったけど、何とか踏みつぶし切りました。
ララビット?あらやだ、一本角生えててかわいい。待って突っ込んで来ないで。流石に腹に刺さる前に横薙ぎキック!
流石森ですね、色んなモンスターが生息してるよ。視界も悪いし、たまに奇襲もされてます。初心者向けということもあり一撃死することはないけどそろそろ初心者向けポーション無くなりそう。あ、今全部使い切りました。
回復手段を使い果たしたし、そろそろ帰る?モンスターからドロップしたアイテムはそれなりに集まったし。……何がどう売れるかは分からないけど、最悪、端金にはなるでしょう!
私は踵を返し森から離れようとした。そこで突如、地が、木が、空気がズシンと揺れ、音を鳴らした。
なにこれ、嫌な予感がするんだけど?明らかに空気変わった気がするんだけど?いやまて、顔には出してはいけない!ヤンキーはちょっとやそっとじゃ動揺しない!
顔を引き締めなおし、辺りを見渡す。地面が揺れるような音は次第に大きくなり、それに枝が折れる音も追加され――やがて、その音を発生させた原因。それは姿を現した。
「ゴリラ……?」
それが明らかにゴリラと呼べる生物だった。その巨大さを除けばね!
"ワンズフォレストのBOSS コング・コング・コング と遭遇しました。"
目の前に表示されたメッセージに、私は驚愕で目を見開く。
ボス!?何で私ボスと遭遇してるの!?ここボス部屋とかじゃないよね。こいつボスの癖に、奥でどっしり構えているわけじゃなくて徘徊してるの!?名前に突っ込んでる余裕はありません。
ここまでの道中でモンスターを狩ったおかげで、レベルは3にあがったけど、これでボスに勝てるわけないよね!だがせめて、虚勢だけでも張らなければ……
「何ならてめぇ、俺に何か用でもあるんか!」
「ウホ、ウホ。」
「っ!?」
私の言葉に対する返答なのか、コング・コング・コングはその大きな腕を、まるでうるさい虫を相手するかのように私目掛け払ってきた。
強い衝撃が私を襲う。倒れこそしなかったが、私の体は大きく仰け反り、不動スキルがあるにも関わらず後退させられた。いや、これはむしろ不動スキルがなかったら私ぶっ飛ばされて、木にでもぶつかった追加ダメージで死んでいたのでは!?
コング・コング・コングも今の一撃で私が死ななかったことが驚きだったのだろう。大きく目を見開いている。ふふふ、安心しなさいな、ゴリラさん。私もう虫の息よ。あ、ちょっと何拳振りかぶってるの。ちょっと待って、せめて捨て台詞は遺させて!
「ケッ、どうやら今の俺じゃてめぇには勝てんわ!憶えときんさいよ、ゴリラ。俺は必ず戻ってあ、まって早」
コング・コング・コングさん、ボスモンスターならちょっと空気読んで……
"オウカがBOSSモンスター、コング・コング・コングにキルされました。"
"パーティの全滅を確認。最後に寄ったウーノの街の教会にて蘇生されます。"
"キルモンスターとのレベルの差を確認。デスペナルティは発生しません。"
・
・
・
「大丈夫ですか、渡界者さmヒィッ!」
「慣れんさいよ。」
まさか私、死に戻り度にこのシスターさんに悲鳴上げられなきゃいけないのだろうか。それは別の方向で心折れるから。
蘇生までのログでデスペナルティは発生しないとかあったけど、アイテムロスなんて……あぁ良かった。トレントの木材含めた戦利品は私のインベントリの中にちゃんとある。良かった。
コング・コング・コングにやられたことは悔しいが、へこたれたままではいけない。強くなればいいのだ!そしてそのためにはまずは木刀!すぐにでも冒険ギルド行って達成報告してG貰ってパックンさんの所に――あれ、メッセージ?
"ご飯だからゲームやめなさい。今日は赤魚の煮つけよ。"
あ、はい。
VRゲーム中に肩を叩くなり声を掛けることは本当の緊急時以外御法度とされている。(法律で禁止されているという訳ではないが。)その対応策としてスマートフォンなどの携帯機器でゲーム中の相手にメッセージを送ったり電話をすることができるのだ。科学の進歩ってすごいよね。
そんな訳でログアウトしましょうか。少し惜しいけど、木刀はその後ね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます