第27話 ファッションヤンキー、己の強さを確認する
「中の下とはまた、随分リアルな評価じゃのぉ。」
あっけらかんと私を評したシャドルに対して私は思った以上にショックを受けていなかった。まぁこんなものだろう、くらいだ。
いや、前線のシャドルにここまで言わしめているんだから、寧ろプレイ2日目高い方ではないかな?
「私の所感でいいなら評価内容詳しく言えるけどいい?」
「えぇけど。」
了承すると、シャドルが手招きをする。あぁ、しゃがめということね。
しゃがんだ私にシャドルが耳打ちをし話始める。
「OK。じゃあまず、オウカは剣とか斧とか近距離武器特化と同じスタイル……タンク系には強いよ。私もやり合ってビックリしたけど堅くて吹っ飛ばないっていうのは結構それだけで強いんだよ。」
ふふん、私の持ち味の一つだからね。ヤンキーはそんじょそこらの攻撃では吹っ飛ばないものだよ。モブヤンキーだと簡単に吹っ飛んで壁に減り込むけど私の中のヤンキーはそんなことにはならない。
近距離特化攻撃はノックバックを引き起こすものが、少なくなくコンボに組み込まれやすいのだとか。
聞くと、最初のシャドルのフレイムボムの攻撃は吹っ飛ばした後、更に攻撃を加えて一気に決着をつけるつもりだったらしい。こいつ、PVP初心者に何しようとしてるんだよ。
「逆に弱いのが私のような魔法職や遠距離ね。これは……闘って分かったでしょ?」
「遠くの敵に対して攻撃手段が全然ないのぉ。」
「そう、棍棒投げつけるのは驚いたけど、脅威というほどじゃないんだよ。だって一直線だもん。あの動きが止められたよく分からないやつと併用でもしなきゃプレイヤーには牽制くらいしかできないよ。あの地震も近づかなきゃダメなんでしょ?」
動きを止められたよく分からないやつ……?あぁ、威圧眼のことね。確かに棍棒が当たったのってあれだけか。
やはりというべきか遠距離攻撃乏しさはあるよね。でも投げつける以外、ヤンキーっぽい攻撃方法思いつかないんだよ。う、うーん……鎖鎌とか?
「オウカのタフさは凄いけどあのままだと良い的だよ?無いの?こう、攻撃食らったらカウンター気味に目からビームが出るとか。」
「お前ヤンキーを何だと思っとるんなら。」
「ヤンキーだと思ってるよ?」
こいつのヤンキー像とは一体……?
「ま、私的PVPでの評価だとこんな感じだね。弱くはないけど強くはない。オウカ、タフさもあるけど攻撃相当高いんだから当てれば何とかなるよ?あの私の腹蹴った奴、体力一気に3分の2削られたんだから!」
「煩い耳元で騒がんでぇや。」
ということは、体力自体はいいところまで削り切っていたのか……最後の一撃さえ当たっていれば私が勝っていたのかな?もうたらればの話になっちゃうけど。
あ、忘れてた!あの軌道が曲がる奴聞いてない!
「のぉ、あのフレイムが曲がる奴は何なら?あれもスキルなん?」
「私の、と言うよりはこのタクトのスキルだよ!」
私の耳から口を離し、ソーサラータクトを天に掲げるシャドルの様はさながら自慢したがりの子供のようだ。微笑ましいなぁ。
と、丁度いいところでそのソーサラータクト製作者であるパックンさんもやってきた。何か結構な数の人引き連れてたけど解散させてた。何してんだあの人。
「2人ともお疲れ様。オウカはあれね、結構奮闘したじゃない。」
「俺的にはやりたいことさせてもらえんかったんじゃけどなぁ。」
「シャドルのやりたいこともさせなかったんだから上々じゃないの。」
シャドルのやりたいことってフレイムボムからのコンボ?無自覚だったけどね!
さて、シャドルの言うソーサラータクトの説明を聞かねば。
「このタクトにはね、"クイック・カーブ"ってスキルがあってね。このタクトを使って撃った魔法を一回だけ軌道を曲げることが出来るんだよ。ちなみにクールタイム10秒。」
「この子が倒したボスのドロップを素材に使ったらそんなスキルが出ちゃってね。事前にメッセージを送っていたのよ。」
「んもぅ、パックンちゃんは本当にいい仕事してくれる!大好き!」
「はいはい、私もちゃんとお金払ってくれるから大好きよー」
嬉々としてパックンさんに抱き着くシャドルに、それを軽くあしらうパックンさん。コング・コング・コングをパーティ組んで倒したらしいし、仲いいんだねぇ。
ん?何か周り騒がしくない?気のせい?見渡すと騒がしさが一気に消失した。再び2人に視線を戻すとまた騒がしくなった。なにゆえ。
「ねぇオウカ、オウカの弱点補う方法あるんだけど知りたい?」
「パーティ組むとか無しで?」
「あ、ごめん気のせいでした。」
確かにパーティ組めば弱点補えそうではあるけどそんな予定は無し。それは相手がシャドルでも変わらない。私はソロヤンキーを貫くのだ!
……まぁ緊急時は組むかもしれないけどね、ケースバイケースだよ。
「んじゃ、そろそろ解散する?オウカもゴリラ倒したのなら次のエリア行ってみなさいよ。」
「おぉ、そうじゃのぉ。シャドルにやられた怒りをモンスターにぶつけよぉかのぉ。」
メニューを操作し、"闘技場から退出しますか?"という画面が表示される。
「え゛、いやほらだってPVPだし容赦しちゃいけないでしょ!?」
「冗談じゃけぇ。次やるときは負けんけぇの。」
その言葉と同時にシャドルの頭に軽くチョップを入れる。シャドルは頭を抑え、笑っていた。
「次も負けないよ?」
「そうかい。」
了承ボタンを押し、転送が開始される。
2人に対して軽く手を振るうが、シャドルが軽く首を傾げたかと思うとハッとし、声を上げた。
「あああああああ!!フレンド登録するの忘れてる!」
「あ!」
しかし時すでに遅し。転送は完了し、私は闘技場に行く直前までいた地点まで戻ってきていた。
……"闘技場へ入場しますか?"
はい。
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