第60話 ファッションヤンキー、求められる
コング・コング・コングをパックンさんに作ってもらった新武器、不動噛行にて叩きのめした翌日。私はログインしていないパックンさんに改めて不動噛行の使った感想をメッセージにて送信した。勿論、絶賛したよ?
さて、今私は再度ドヴァータウンの広場に来ているのだけど……
「これ、どうしようかのぉ。」
ため息をつく私の目の前には2つの楽器。コング・コング・コングを倒した際にドロップしたコング・コンガとコング・コンガ・サンダだ。あれ?待って、コングがゲシュタルト崩壊してきたんだけど。
今現在、私が持っているアイテムの中で、特に役割がないのがこのコンガ2つなのだ。最初は暇つぶしに叩くこともあるかなーなんて思って持ってたけど、そんな機会一度も訪れたことがない。その上、コンガ・サンダまで手に入ってしまえば完全にインベントリの肥やしになること必然だ。かと言ってあげる知り合いがいるかというと……うん、知り合いにそう言うの好きそうなのいないね!いやでもシャドルはワンチャンあるかな?あの子、ピアノとかリコーダーとかは苦手だけど太鼓とかクラリネットとかトライアングルとか好きだったよね。
そんなことを考えながら、サンダじゃない方のコンガをポンポンと叩いていると、突然メッセージが送られてきた。
差し出し人は……メゾフォルテ?誰それ私知らない。もしかしたらフレンドの誰かが名前を変えたのかな?そう思い、フレンドリストを確認する。パックンさんに竹輪天さん、シャドルにピンキーちゃんにリヒカルドっと。うん、誰も名前を変えてないよね?
改めて送られてきたメッセージを見る。
"送り主 メゾフォルテ 件名 コンガ "
"突然のメッセージ、申し訳ございません。そして、初めまして。私は職業 奏者のメゾフォルテと申します。今しがた、あなたがコング・コンガとコング・コンガ・サンダを並べているところを目撃して居ても立っても居られなくなり、このメッセージを送らせていただきました。"
あ、やっぱり知らない人だった。でも丁寧な文章から、今のところ悪い人ではなさそうだ。えーっと?職業、奏者……聞いたことないけどあれでしょ?楽器を演奏する人の事でしょ?その人がWコンガを欲しがるのか……いや、奏者って聞いたらピアノとかバイオリンとかおしゃれ系?な楽器の方を使うのかと思うんだけど……コンガなの?何で?続き読んでみよう。
"見たところ、あなたは楽器に携わる職業には見受けられませんでしたのでご存じないと思われますので、ご説明いたします。普通のプレイヤーには、フレーバーテキストしか見えないそうですが、奏者としてスキル『楽器鑑定』を持つの私にはそちらのコンガがとても優秀な武器に見えるのです。コング・コンガが打撃武器、コンガ・サンダが雷属性の魔法武器です。"
え、嘘!?すぐに私はWコンガをもう一度よく確認したが、やっぱり私に見えるのはネタにしか見えないフレーバーテキストだけだ。打撃武器、魔法武器何て言葉は一字一句として書かれていない。でもこのメッセージを送ったメゾフォルテなる人物には武器としてのステータスも見えた……らしいね。正直真偽は定かではないけども。
"実は楽器武器は攻撃手段を持つものが、少なく大多数は味方のサポートをするものとなっております。勿論、サポート特化としてパーティを組んでいる奏者の方もいますが、私といたしましては、ソロでも活動できるよう、十分な攻撃手段を持っておきたいのです。そこであなたの持つその2つのコンガをお譲りいただけないかと思いメッセージ送らせていただきました。どうか御一考をお願いいたします。お譲りいただけるのであれば私のできることでしたら何でもさせていただきます。"
ふむふむ、なるほどねぇ。うん、別にあげてもいいか!どうせ私が持っていても肥やしになる運命しかない。そんなことになってしまったらこのコンガを作ったコング・コング・コングが可哀そうだ。であれば、早速了承する旨のメッセージを……送信と。
さて、メゾフォルテさんはいつ来るのかなー……うん?あの木の陰から視線を感じる……?あ、燕尾服着た女性出てきた。しかも結構身長あるなぁ。私よりもちょっと低いくらい?170そこらかな?あれ?めっちゃ小さくなりながらこっち来た。まさか?
「えっと、アンタがメゾフォルテ?」
「ははは、はぃい……メゾフォルテですぅ……」
あらやだ、でかいけど色々と小さい人だわこの人。気とか声とか……ちょっと暗めな人?いや待て?これ私の姿にビビっている可能性が?
「メッセージ見たんじゃけど、このコンガが欲しいん?」
「その、出来ればで宜しいのですが……プレイの幅も広がりますので私といたしましてもぉ……」
「ええよ、上げるわ。ってメッセージにもそう送ったじゃろ?」
「よよよ、宜しいのですか?」
「持っとっても宝の持ち腐れじゃけぇのぉ。で?何でもするんじゃったのぉ。」
ちょっと意地の悪い笑みを浮かべた私にメゾフォルテさんは小さく悲鳴を漏らしながらも小さく「はぃい……」と呟いた。
いや、そんなに恐れないでも別に怖いことしないよ?顔は怖いかもしれないけどさ。
「いや何、ちょっとそのコンガで戦う様を見せてもらいたいんよ。本当に戦えるんかどうか。」
「はぇっ?そそっそれは構いませんが……レアアイテムとかは……?」
「いらんよ別に。……あ、じゃあお金でええよ。えっと?コング・コンガが3500Gでコンガ・サンダが10000Gでどうかのぉ?俺相場知らんけどそれぐらいでいいじゃろ?」
「ええっとぉ、30000Gほど用意あるんですけど……」
「いいって13500Gで。処分してくれる上にお金貰えれば十分じゃけぇさ。」
どこか納得しない様子だったメゾフォルテさんだったけれど、頑なにそれ以上いらないと言った私に、自身の気の弱さから何も言えなかったのかぺこぺこと頭を下げながらWコンガを受け取った。そして早速約束を果たしてもらうべく私とメゾフォルテさんは町の外へと向かった。
……あの、メゾフォルテさん?そんなに離れていかなくてもよくない?
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