第18話 ファッションヤンキー、着心地を確認する
「すまんかった、落ち着いたけぇ……!」
正直なところ、もう少し手放しで喜びたかったのだが、周囲の目もあるし後は現実世界で喜んでおこう!
軽く咳ばらいをし顔を引き締める。アカン、にやけちゃアカン!
「よし、戻ってきたな。……でデザインはともかく、着心地はどうだ?」
竹輪天さんのその言葉に、私は腕を軽く回し、大きく足踏み。さらに上体回し、シャドーボクシングに木刀を素振りする。
……うん。服に動きを阻害されるなんてことは無いね。至ってスムーズに動くので着心地もいい。
おっと、装備品のステータスとか見なきゃね。
漢の学ラン
テッシカイコと呼ばれる魔物が吐く鉄同様の強度を持つ糸から編み出された黒い学ラン。背中には黄金の桜の花びらが刺繍されており見る人によっては感動を覚えるだろう。漢の~と書いてあるが、女性も装備可能。使用者・装備が整うことで更なる力を発揮する。
HP+10 DEF+6 衝撃耐性
漢のボンタン
テッシカイコと呼ばれる魔物が吐く鉄同様の強度を持つ糸から編み出された黒いボンタン。激しい動きに対応しており多少無理をしても破損することはない。漢の~と書いてあるが、女性も装備可能。使用者・装備が整うことで更なる力を発揮する。
HP+6 DEF+8 DEX+2 恐怖耐性
深紅のシャツ
テッシカイコと呼ばれる魔物が吐く鉄同様の強度を持つ糸から編み出された炎のような赤色のシャツ。炎のようにと形容しているが、炎属性が付与されているわけではない。
HP+5 DEF+2
え、学ランとボンタンに恐怖耐性に衝撃耐性!?それに何この最後の一文。
私、このゲームやり始めて1日もいいところだけどこれだけは分かる。これ初心者が持ってるもんじゃねぇ。
そんな私の心境を知ってか知らずか、竹輪天さんは話しかけてくる。
「ふむ、見る限り動きを阻害している感じはないな。」
「いや、うん。確かに着心地は問題ないんじゃけどさぁ……」
「では依頼達成だな。ほら、発注メニューで依頼完了ボタンを――」
「待ちんさいや!これ絶対1500Gで収まる代物じゃないじゃろうが!」
依頼料と性能が合致してないんだが?竹輪天さんまったく気にしていないのこれ。
というかこの装備パックンさんに作ってもらった木刀並じゃないかな。3000G辺り払わなきゃいけない代物なのでは。
かと言って今の私の手持ちは1500とちょっとしかない。なぁんで耐性付いているのかな!これがなかったらニコニコ現金払いで事済んだのに!
私はインベントリを開き何とか釣り合うものがないか探し始めることにした。
竹輪天さんが「気にしなくてもいいのに」と言っているが、アンタが良くても私が嫌なんです!ヤンキー的にもアウト案件ですよこれ!
あった!防具……というか服制作を生業としている竹輪天さんに良い物が!
「これやるけぇ!それでトントンじゃろう!」
「うん?……大玉狸の毛皮か。なるほど、これで防寒着を作ってほしいと――」
「ンな訳あるかぁ!それと1500Gで依頼達成言っとるんよ!それは自分のために使ってくれや!」
押し付けるように大玉狸の毛皮を竹輪天さんに手渡し、すぐに発注メニューを開き、依頼完了ボタンを押す。
"依頼完了を確認いたしました。"
"オウカ様の所持金から1500Gが竹輪天様に支払われます。"
"これにより、漢の学ラン・漢のボンタン・深紅のシャツの所有権がオウカ様に移ります。"
なるほど。依頼が完了したことで漸く私の装備扱いになるのね。
……うん?学ランとボンタン、光ってません?依頼完了したってエフェクトじゃ無さそうだけど……?
"漢の学ラン 条件を達成いたしました。"
"スキル 存在強調が付与されます。"
ん?
"漢のボンタン 条件を達成しました。"
"スキル 踏ん張り所が付与されます。"
んん?
「オウカ、光ってないか?」
「何か知らんけど学ランとボンタンが条件を達成しましたーってスキルが現れたんじゃけど。」
「考えられる点があるとするなら、各装備の最後の一文だな。」
えっと、使用者・装備が整うことで更なる力を発揮されます……これだわ。
ただ着るだけじゃダメで、実際に私の物にならなかったから条件が達成されなかったのかな。それとも私にこの装備が似合ってるからーとかそんなことはないよね多分。
とりあえず付与されたっていうスキル見てみようか……
存在強調 パッシブスキル
このスキルを身に着けた者は目立ちやすくなり、気配に聡いモンスターは、あなたの存在に気づき易くなるだろう。
モンスターの遭遇率上昇・ヘイトが溜まりやすくなる。
潜伏などの所持している一部のスキルを無効にする。
踏ん張り所 パッシブスキル
このスキルを身に着けたものは地に沈むことを良しとせず、敵の前に岩の如く立ち塞がるだろう。
ノックバック・スタン効果に耐性が付く。
戦闘行動中、1度だけHPが7割以上でHPを全損する攻撃を受けた場合HP1残す。
いや、本当に大玉狸の毛皮渡しておいてよかったよ……改めて1500Gの性能じゃないよこれ。
私からスキルの説明を聞いた竹輪天さんは大きく頷いている。
「いわゆるセット効果みたいなものだろうな。そのセット効果がどうやって生まれるか……今度から作るときは意識してみるか……?
」
確かに、この装備思いっきりセットだよね。深紅のシャツはともかくとして学ランとボンタンどちらかが欠けたら変な感じになってしまうよね。
それにしてもこれでようやく、私のヤンキーファッションが揃った!今の私ならヤンキーっぽく粋がれる気がする!
「竹輪天、世話になったのぉ!これで俺も俺のAFWが始まった気がするわ!」
「それなら良かった。俺もオウカに似合うものを作れて満足だ。もし壊れてしまったら持ってきてくれ。直してやる。」
「そん時は頼むわ。じゃあの!」
本音を言うと壊すほどの扱いはしたくないのだが、こういう服は使われてこそ真価というか美を発揮する……!少しボロボロな方がそれっぽいのかもしれない。
竹輪天さんと別れ、生産ギルドを飛び出した私は憎きゴリラを討伐せんとワンズフォレストに向かうのであった!あ、金策のためにモンスターも狩らねば!
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