第106話 ファッションヤンキーと蜘蛛な少女
私オウカ!今絶賛蜘蛛に集られてるの!誇張無しにすっごく気持ち悪いの!これ苦手な人からしたら地獄絵図では?こんな調子だけれど実際状況はとてもよろしくない。何せ体を思うように動かせないからね。数匹集られるくらいだったらまだ動きづらいかなー程度だったんだけど十数体とかなると流石に鈍ってくる。そんでこんなことになっているのは私だけではなく……
『姉貴、動けない』
犀繰も数度は蜘蛛を振り払っていたが、やはり物量で押し切られ今では蜘蛛糸ぐるぐる巻きにされてしまっていた。なお、私の方は不動嚙行で斬られると知っているのか糸ではなく蜘蛛本体で阻害されてる。てか帰蝶の方も蜘蛛の影響受けてないじゃん!流石に出来過ぎでしょ!
「オラァ!これもテメェらの仕業か!キモイんじゃあ!」
「ごめんなさいね、気持ち悪いのは同意なんだけど効果的でしょう?あー待ってちょっと私も直視したくないわ。ほら、リーダーもそろそろ起きて?」
「……すまん、あまりに衝撃的な出来事に動けずにいた」
帰蝶が声を掛けると、倒れていたはずの土蜘蛛が服に着いた土を落としながら平然と起き上がり衝撃的な出来事って私がアイツの攻撃受け止めたこと?どんだけ自信のある技だったのか、正面から受け止めて御免だが、それが私の持ち味なのでね。気を落とさないで……じゃなくて
やっぱりこの蜘蛛共はこいつらの仕業か。うーん、毒はいっちゃったねぇ。麻痺もだわ。何で土蜘蛛たちはこんな大量の蜘蛛の中で敵対されてないの?なんて思っていると私の背後から足音?……それも蜘蛛じゃなくて人のものっぽい。ま、今の私振り向けないんですけどね?
「はろうはろう。皆さん集合時間に来ないから気になってきちゃいました」
女の子の声?どこかふんわりしたような雰囲気のする声だな。集合場所だと言っていることから背後の声の主は土蜘蛛たちの仲間のようだね。私の知り合いにこういう声は……いや、ピンキーちゃんが近いけどあの子、ハキハキと喋るからねぇ。きっと別人だ。
「悪かったなクレメオ。少々厄介な者に見つかってな」
「そのようですねぇ。うふふ、子供たちを先に向かわせて良かったです。あら、ジェノサイドキング君気絶してるんですねぇ、うけますー」
クレメオ?それが背後の女の子の名前か?これ口挟んじゃダメかなぁ?でも叫んだところで話してくれるとは思えないしなぁ。解毒ポーション飲みたいなぁまだ余裕あるから大丈夫だけどさぁ
なんてことを考えていたら不意に視界に見慣れぬ人物が現れた。おおう、これはまた西洋人形のような……む、耳が尖ってるからエルフか。幼エルフだ。ふぅん、黒のゴシックドレスに蜘蛛の巣のデザイン。まさしく土蜘蛛の仲間感満載のエルフだ。んでもっておそらくこの子がクレメオ。
そのクレメオはと言うと私の顔をまじまじと見つめたかと思うと
「うふふ、みぃつけました」
その見た目に似つかわしくない不気味な笑みを浮かべた。見つけたって何さ?
「なんじゃあ嬢ちゃん。俺とは初対面のはずじゃろうが」
「えぇ、えぇえぇ、忘れるはずも無いですよ?うふふ、リーダー様?この方ですよ?計画を邪魔してくれたのは」
計画を邪魔したって……私そんなことしたっけ?この洞窟でしたことなんて精々トルネイアをチューチュードレインしてたマザーファンキースパイダーを倒したくらいだけど。って明らかにそれだよね。蜘蛛だもんね、こいつら。このクレメオが連れてるのも蜘蛛だもんね。あーはいはい、そういうことね、完全に把握した。
「何じゃあ。やっぱり大蜘蛛の件お前らが絡んどったんか」
「大蜘蛛なんて名前じゃないですよ?フランソワちゃんです」
何言ってんのこの子。何その有無を言わせぬような笑みは。フランソワと呼べと?そう申すのか?だが断らせていただこう。
「いやフランソワとかどうでも」
「フランソワちゃん」
「あの」
「フランソワちゃんです」
「ヤンキー。話が進まないからフランソワと呼んでやれ」
「……フランソワちゃんに水龍を襲わせたのはお前らか」
根負けしました。だって土蜘蛛の言う通り本当に話進まなくなりそうだったんで……屈しました。私がちゃんと呼んだことで満足したのか、クレメオは話を続けてくれた。
「そうですよぉ、フランソワちゃんに水龍の力を与えて更なる存在に進化させようと計画を立てていたんですよぉ?それをぉ……ぶち壊してくれちゃいましてぇ」
「知らんのぉ。俺は依頼の大蜘蛛を倒しただけじゃ。ってか、その口ぶり大蜘……フランソワはテイムされたモンスターなんか」
「えぇえぇ、そうですよぉ。丹精込めて育てたんですよぉ?それなのにぃ……私たちが離れている間にぃ倒しちゃうなんて!マスターから長距離間離れたテイムモンスターは倒されたら卵に戻っちゃうんですよぉ!?」
いや、そんな瞳に涙貯められても……テイマーのことは知りませんから。ロストするよりはいいんじゃないでしょうか。そもそもそれならフランソワちゃんと離れるなと言えるわけでございましてね?自己責任ということで……
「ふふふ、でも嬉しいです。こんなに早く復讐の時が来るなんて。子供たちのお陰で動けませんよねぇ?ねぇリーダーさん?この方の処理は私に任せてもらっても?」
「あー、うん。好きにしろ。」
私の処理?ははは、私も舐められたものだねぇ。いくら私が身動き取れないからってテイマーの攻撃によって倒される私ではないのだよ!
「あなた、自信満々な顔してますけどぉ。毒状態なの忘れてません?」
「忘れとったのぉ」
「あぁ、こんなのにやられるなんて……待っててねフランソワちゃん。今仇を取るからね……!」
不味い不味い!この状況はよろしくない!とは言え動けない。頼みの犀繰も動けない。今も毒はどんどんと私のHPを蝕んでいる。クレメオの手には……何その黒魔術とかに使いそうなナイフ。いい趣味してますねぇ。じゃなくて……詰んだぁ
「いやー、いい情報見つけちゃったなぁ」
何もないところからそんな声が聞こえた。
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