第103話 ファッションヤンキー、新手と対峙する
うーん、背中に蜘蛛か……龍背負ってる私が何言ってるだってなるかもしれないけど。某旅団にでも憧れているのかな?やめときなよ、あの旅団全滅確定してるから。
さて、吹っ飛ばしておいてこの黒ずくめ君、消えないことからまだHPは残っているのだろう。動かないのは気絶でもしてるのかもしれないけど。まぁ、対する私も絶賛動けないわけで?これは早急に状態異常対策をしなきゃいけないね。黒ずくめ君の攻撃が大体0だったからいいものの、1でもずっと与えられたらちまちまやられて死んでいた可能性だってあるものね。
えーっと、ステータス画面で買っておいた麻痺ポーションを使用っと。よし、動いた。
「しっかしなんじゃあこいつ」
改めて気絶している黒ずくめ君を観察する。ぱっと見とてもいい装備をしている……ようには見えないね。でも武器は気になるよね。一撃で麻痺なんて流石に出来すぎだと思うし。人の装備だから奪うことは出来ないけど、木刀で遠くに飛ばすくらいはさせてもらおう。おりゃっと。さて、残された黒ずくめ君だけど――起きそうにないしこのままキルさせていただこう。利口なプレイヤーなら叩き起こして丁寧に尋問……もとい聞き込みなりするんだろうけどおあいにく様私はそんなのよりモンスターとか倒していたいのだ。という訳でおさらばだ黒ずくめ君、精々教会で悔い改めて?適当な祈りを込めながら不動嚙行を振り下ろ……あん?
「なんじゃあお前」
「困るんだ。彼にはまだ仕事があるんだ。死に戻りなんてされたら作業に滞りが生じる」
不動嚙行での一撃は横入りした大剣によって阻まれた。つられてその剣の持ち手の方に視線を向けると中々の偉丈夫がそこにはいた。こいつ、黒ずくめ君を庇ったということはお仲間かな?左肩の辺りに黒ずくめ君と同じような蜘蛛のマークがあるし。話しかけると仕事があるからキルは勘弁だと抜かしてきた。はぁ、さいですか。
「知らんのぉ、こちとら喧嘩売られたんじゃ。それを見逃せ言うんか?」
「そう言っている」
「じゃあ兄ちゃんから先に去ねや」
あたしゃプッツン来ましたよ。ヤンキーともあろうものが喧嘩売られておきながらとどめ刺さずに見逃せなんて言われちゃあ黙っておけねぇ。決めたよ、こいつも殴る。んでもってその後に黒ずくめ君をぶん殴る。そう心に決め振り下ろした不動嚙行をそのまま割り込んできた偉丈夫に向けて振り上げる。む、躱された。
「野蛮だな」
「初っ端から麻痺喰らわせる兄ちゃんの仲間に比べればまだまだじゃ。……犀繰、手ぇ出すなよ」
『ウス』
私の声に反応に犀繰は動き出し私の背後にバイク形態に位置取る。それを意外に思ったのか偉丈夫は「へぇ」と声を漏らす。
「なんだ、そのゴーレムにもやらせるのかと思ったよ」
「ハン、数並べて少数叩くなんて流儀にあわんだけじゃ!」
そう言い、偉丈夫に攻撃を何度もぶつけるが、その全てを大剣によって受け止められてしまう。
もう少し押せてもいいと思うんだけれど、偉丈夫は全く動じない。私と張れるくらいのATKがあるのね……まぁ大剣振ってる時点で分かる事か。でもあいつ自身は受け止めるだけで攻撃してこないんだよね。あっ、こいつぅもしかして私にビビって!?――だなんて言えたらいいけどきっと違う。何かは分からないけど、待っている。そんな感じだ。それが分からないのはちょっと怖いなぁ
「よぉ、兄ちゃんさっきから受けてばっかで何も出来んのんか?」
「さぁ、どうだろうな」
「ほぉん、どうやら見当違いだったんかのぉ。もうちょっとやるかと思ったんじゃけど」
「こちらも見当違いだったさ。――見た目通りヤンキーの馬鹿っぽさはRPか?気づいているんだろう?」
間違いなく今ディスられましたね。ヤンキーがみんな馬鹿だと思うなよ?インテリヤクザみたいにインテリヤンキーもいるかもしれないでしょ!?私ですか?INT未だに一桁ですけど何か?魔法使わないからいいんだよ別に!
ってかこいついい加減腹立ってくるなぁ。こちとらちょくちょく震脚とか威圧眼とか絡め手使っているんだけど簡単にいなしてくるんだよ?威圧眼が効かないってことはビビってすらいないってことだし……手玉に取られてる感があるな。
「ええ加減、喰らえや!」
「御免被る。君の一撃は致命傷になりかねない」
「そいつぁどうも!」
うっそだぁ、絶対嘘ついてるよこいつ。私だって私のATKにはそれなりの自信を持っているけれど同格以上の相手の体力を一撃で致命傷にするほどとは思ってない。だって私、攻撃食らっても倒れない不倒のヤンキーってことでATKよりHPとDEFの方を重点にしてるし。
ってかそろそろ決着付けてしまいたいんだけど!どうも嫌な予感がする。RP的に尻尾巻いて逃げるわけには行かないし!あの黒ずくめ君も起きそうだし!
「焦っているな?やはり君は勘は良いようだ。が、RPが足を引っ張っているようだな?」
「そういうメタ発言は嫌われると思わんか!?」
「あぁ、すまない。RPには理解はあるつもりだけどね、利用させてもらうよ」
「性格悪いのぉ!」
「よく言われる……なぁ?」
偉丈夫は私を見てそう――いや違う!私じゃなくて私の後ろを見ている!まさかもう――
背後を振り返ろうとしたときにはすでに遅かった。背に衝撃が走り私のステータス画面が赤く染まる。そしてその視界に映ったものは
「えぇ、全くよ。こっちの身にもなって欲しいものね?ねぇ、ヤンキーさん?」
「てめぇは……カップル嫉妬仮面女!」
「待って何その憶え方」
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